コーチングで「抽象度を上げる」と言われたら、今の具体案をいったん離れ、どの範囲を広げて考えるのかを確かめます。
分類を広げること、目的を考えること、関係する人の範囲を見ることを分け、最後に具体案と確認する条件へ戻すのが、この記事で提案する進め方です。
この記事では、地域で学習会を開きたい架空のユウさんを例に、分類を広げること、目的を考えること、利益を受ける人の範囲を考えることを分けて説明します。
読みながら、自分のゴールの方向、選べる具体案、次に確かめたいことを1枚のメモにまとめられます。

コーチングでいう抽象度の意味を確かめる

抽象度は、ある言葉や考えがどれくらい多くの具体例を含むかを考えるときに使われる言葉です。
特定の日時や場所まで示した活動より、その活動を含む広い分類の方が、含められる具体例は増えます。
一方、コーチングでは、今の手段から離れて目的を考えたり、より広い視点からゴールを捉えたりする意味でも使われます。
同じ「抽象度を上げる」という表現でも、何を広げているのかを確かめると理解しやすくなります。
苫米地式を含むコーチングの説明で使われる語ですが、すべてのコーチングに共通する科学的な規格として扱うことはできません。
ここでは概念を整理するための言葉として使い、特定の認知科学の理論や心理学全般で効果が実証された方法とは区別します。
言葉を難しくすることとは別です
「学習機会の創出」と書けば、「土曜日に読書の学習会を開く」より抽象的に見えます。
ただ、難しい表現に置き換えただけで、自分が考えられる範囲まで広がったとは限りません。
抽象的な言葉を使ったあとに「具体的にはどんなことが含まれますか」と尋ねて、複数の例を挙げられるかを確かめます。
逆に、具体的な案だけを話しているときは「これはどんな活動の1つですか」と問い直せます。
たとえば「地域で学びの場をつくりたい」なら、学習会、読書について話す集まり、互いに得意なことを教える会などを候補にできます。
どれを選ぶかは、この時点では決めなくてかまいません。
古川通大さんのBenelog公開記事では、分類を広げることや視点を上げることによって抽象度を説明し、上位の概念は見方によって複数あり得るとしています。
この説明を参考にすると、唯一の正しい上位語を探すより、どの観点で考えると自分の問いが進むかを確かめる使い方ができます。
これは同記事の用法を参考にした整理です。
Benelogの抽象度に関する記事
具体と抽象を行き来する例を作る

ここからは、架空の人物ユウさんが「地域で月に1度、土曜日の午前に読書の学習会を開きたい」と考えている例を使います。
実際の相談事例や成果の紹介ではありません。
ユウさんの言葉を、まず活動の分類という観点で広げてみます。
この段階では、活動の目的や参加者の人数は一緒に並べません。
分類を広げると別の具体例を含められます
| 考える範囲 | 言葉の例 | 含められる具体例 |
|---|---|---|
| 1つの活動 | 地域で月に1度開く土曜日午前の読書学習会 | ユウさんが最初に考えた会 |
| より広い活動の分類 | 学習会 | 読書の学習会や文章を書く学習会など |
| さらに広く捉えた分類 | 学びの場 | 学習会や得意なことを教え合う場など |
日時、題材、進め方といった細部をいったん省くと、別の活動も含めやすくなります。
そのぶん、どの活動をいつ開くのかは、この言葉だけでは分からなくなります。
抽象化は、説明に必要な細部を一時的に減らすことでもあります。
広く考えるときには役立ちますが、会場を予約する場面では日時や人数を戻す必要があります。
また、ユウさんの活動を「地域交流の機会」と捉えることもできます。
これは学びに注目した分類とは観点が違うため、必ずその上や下に置けるわけではありません。
目的を尋ねるときは別の欄を使います
次に「学習会を開いて、どんな状態をつくりたいですか」と尋ねます。
架空のユウさんは、「1人では学びを続けにくい人が、身近な人と話せるようにしたい」と答えたことにします。
「学びを続ける人が話せる状態」は、学習会の上位分類ではなく、ユウさんが望む状態です。
分類を広げた言葉と目的の言葉を分けて書くと、会を開くこと自体がゴールなのか、会を通して実現したいことがあるのかを考えられます。
| 整理する問い | ユウさんの記入例 |
|---|---|
| 何の一例ですか | 読書学習会は学びの場の1つです |
| どんな状態を望みますか | 学びを続けたい人が身近な人と話せる状態です |
| 誰にとっての状態ですか | 今は1人で学んでいる地域の人を想定しています |
3つの欄を埋めても、目的に最適な活動が決まるわけではありません。
目的が見えたことで、学習会以外の案も比べられるようになります。
ゴールの抽象度を上げる問いを選ぶ

ゴールの抽象度を上げたいときは、今の言葉から少し離れられる問いを選びます。
「もっと大きな目標にしなければ」と考えるより、何を広げたいのかに合わせて質問を変えてみます。
形の先にある望む状態を尋ねます
「その取り組みができたら、どんな状態になっていてほしいですか」は、手段から目的へ移るための問いです。
ユウさんなら「学習会を開催した」という事実の先に、参加者が話せたか、また学ぶきっかけを持てたかなどの関心が見えてきます。
ただし、この回答もユウさんの想定です。
参加する人が同じ状態を望んでいるかは、本人に確かめる必要があります。
「なぜ開きたいのですか」と尋ねてもかまいませんが、決まった回数を繰り返す義務はありません。
答えにくそうなら「開けたら何がうれしいですか」「今の案で大切にしたい点は何ですか」と言い換えます。
他人に問いかける場合も、理由を追及して正しい答えを引き出す用途にはしません。
答えを増やし、本人が考えられる範囲を広げるための問いとして扱います。
別のやり方でも残したい価値を尋ねます
「学習会という形を変えても、残したいものは何ですか」と考えてみます。
ユウさんが「身近な人と学びについて話せること」を残したいなら、短い対話会や少人数のオンラインの集まりも候補になります。
ここで出た価値が、本人の唯一の本質だと決めつける必要はありません。
話せることに加えて、読み進めるきっかけや地域とのつながりも大切かもしれません。
複数の回答があれば、そのまま残します。
1つにまとめるのは、案を比較するために必要になったときで十分です。
利益を受ける人の範囲を尋ねます
「自分以外に、どんな人が影響を受けますか」は、関係する人を見る問いです。
参加者だけでなく、準備を手伝う人、同じ会場を使う人、ユウさんの家族なども含めて考えられます。
利益を受ける人を増やすことだけが答えではありません。
準備の負担を誰が引き受けるか、参加しにくい条件がないかも確認します。
次の表も架空の例です。
目的を考える問いと、影響を受ける人を見る問いを分けています。
| 場面 | 今の具体案 | 望む状態を考える問い | 関係する人を見る問い |
|---|---|---|---|
| 家庭 | 夕食の時間をそろえる | その時間でどんな関わりを持ちたいですか | 家族それぞれの予定にどんな条件がありますか |
| 仕事 | 会議を短くする | 短くした時間を何に使いたいですか | 必要な話を伝えにくくなる人はいませんか |
| 営業 | 提案の数を増やす | 相手のどんな判断を助けたいですか | 顧客と担当者の負担はどう変わりますか |
| 社会貢献 | 地域の催しを開く | 地域にどんな機会を残したいですか | 参加する人と支える人の条件は何ですか |
| 学習 | 毎日教材を読む | 読んだ内容をどこで使いたいですか | 一緒に学ぶ相手はいますか |
問いを広げても、予算や権限まで広がるわけではありません。
今の条件で検討できる案と、別の合意や資源が必要な案を分けておきます。
高い抽象度のゴールを大きさだけで比べない

「年収を今より高くする」「学習会の参加者を増やす」といった数字の変化だけで、ゴールの抽象度が高くなったとは限りません。
数字の大小と、言葉が含む範囲、望む状態、関係する人の範囲は、それぞれ別の観点です。
ユウさんが参加者の目標を増やしても、活動の分類は同じ学習会のままかもしれません。
一方、「地域で学びを続けたい人が話せる機会をつくる」と書き直せば、人数を決める前に別の活動を検討できます。
青山龍さんの公開記事では、抽象度の高いゴールを利益を受ける人の範囲と結びつけて説明しています。
また、仕事、家族、健康、社会貢献、趣味、学びなどをバランスホイールという考え方で見渡しています。
ここでは著者によるコーチング観として紹介し、分類の階層や科学的な効果の証明と同一視しません。
青山龍さんの抽象度に関する記事
現状の外側のゴールという考え方を確かめます
同じ青山龍さんの記事では、今の延長では達成方法が分からないゴールを「現状の外側」として扱っています。
これは著者のコーチングでの基準であり、分類の範囲を広げることや、実現可能性を証明することとは分けて理解します。
ユウさんなら、まだ経験のない学びの場を考えていても、会場や参加者などの実行条件は未確認として残せます。
今できないことを願ってみることと、必要な条件を調べずに実行を約束することは別の判断です。
個人的な願いもそのまま書いてかまいません
「自分が読書を楽しみたい」「安心して家族との時間を持ちたい」といった願いを、社会への影響が小さいという理由で低く評価する必要はありません。
自分の関心を出発点にしながら、他者への影響を考えることもできます。
ユウさんの例でも、本人が学習会を楽しみにしていることと、参加者に役立つかを確かめることは両立します。
どちらかを立派に見せるために消すと、続けたい理由や必要な条件が見えにくくなります。
関係する領域への影響を見渡します
学習会を開くための準備が増えれば、仕事、家族との時間、休む時間にも関係します。
広い範囲を考えた結果、自分が引き受けられる活動を小さくする判断もあり得ます。
バランスホイールという語を使う場合も、すべての分野で新しい目標を増やすためだけのものにしません。
今のゴールがほかの領域とどう関係するかを見るきっかけにできます。
「全員を幸せにする」と書くと、誰のどんな状態を目指すのかが分からなくなりがちです。
利益を受ける人の範囲を考えるときも、自分の役割や関われる範囲を残し、実現できない責任を1人で背負わないようにします。
抽象度を下げて確かめる行動を決める

広い言葉で方向を考えたら、次は具体的な相手、場面、条件へ戻ります。
抽象度を下げることは、最初に思いついた案を無条件に実行することではありません。
ユウさんは最初、読書学習会という手段をすでに決めていました。
望む状態を書き直したことで、対話会やオンラインの集まりも残して比較できるようになりました。
方向と実行案を別の欄に置きます
以下は、ユウさんの具体と抽象の往復メモの記入例です。
別の案でどうなるかという見通しは仮定であり、実際に起きた出来事ではありません。
| メモの欄 | ユウさんの記入例 |
|---|---|
| 最初の具体案 | 地域で月に1度、土曜日午前に読書学習会を開く |
| 活動を広く捉えた言葉 | 地域の学びの場をつくる |
| 望む状態 | 1人で学んでいる人が身近な人と学びについて話せる |
| 主に想定する相手 | 学びについて話す相手がほしい地域の人 |
| 比べたい具体案 | 読書学習会、短い対話会、少人数のオンラインの集まり |
| 残したい条件 | 主催者の準備を無理なく続けられること、参加者が話す時間を持てること |
| まだ分からないこと | 話したい人がいるか、希望する題材や時間帯、使える会場の条件 |
| 次に確かめること | 想定する相手に、話す機会への関心と参加しやすい条件を尋ねる |
このメモでは、方向を「地域の学びの場」としつつ、実行案を1つに固定していません。
目的や条件を残したまま具体案を変えられることが、往復する意味です。
1つの案を小さく確認します
いくつも案を残したままだと動きにくい場合は、確かめる対象を1つ選びます。
ユウさんなら、まず短い対話会に関心があるかを想定する相手に尋ねる案があります。
| 比較する点 | 短い対話会を確かめる場合の記入例 |
|---|---|
| 確かめたい仮定 | 学びについて話す機会を求める人がいる |
| 相手に聞くこと | 話したい内容と参加しやすい時間帯 |
| 自分が調べること | 会場の利用条件と準備に使える時間 |
| 今回まだ決めないこと | 定期開催するかどうかと年間の計画 |
| 次の判断 | 関心と条件が合うかを見て試す案を選ぶ |
「参加したいですか」だけでなく、どういう条件なら参加しやすいかを聞くと、具体案を見直す材料になります。
返事が得られなかった場合も、需要がないとすぐに決めず、相手や聞き方が合っていたかを確認します。
選んだ案の実行計画をゴール、現状、選択肢、行動の順に整理したい場合は、GROWモデルの使い方も参考になります。
ここでは、計画に進む前に方向と手段を分け、確かめる仮定を明らかにするところまでを扱います。
抽象度を上げる練習で迷ったとき

自分のゴールで考えにくいときは、日常の短い文章で具体と抽象を往復してみます。
高い抽象度の言葉を出すことだけを成果にせず、具体例に戻して説明できるかまで確かめます。
具体例を並べて共通する点を探します
「読んだ本を話す」「得意なことを教える」「分からないことを一緒に調べる」を書き、共通している点を1文にしてみます。
「人と学ぶ活動」など、複数の例を含む言葉が候補になります。
次に、その言葉に合う別の例を1つ足します。
例が足せなければ、言葉の意味が曖昧なのか、もとの例の共通点が少ないのかを見直せます。
これは練習用の整理です。
1つの分類で、活動のすべての特徴を説明する必要はありません。
別の観点でも分類します
同じ学習会を、活動の内容なら「学びの場」、人との関わりなら「地域交流」、運営の形なら「参加者が話す集まり」と捉えてみます。
それぞれの言葉で、見える特徴と見えにくくなる特徴を考えます。
「地域交流」と書くと交流の目的を考えやすくなる一方、学ぶ題材の違いが見えにくくなるかもしれません。
使う場面に合わせて、必要な観点を選びます。
文章の具体化と一般化を試します
「学びやすくする」という文を、「誰が、どこで、何に困っていて、どんな状態なら学びやすいか」に分けて書きます。
具体化した内容を読んで、最初の広い言葉が本当に合っているかを確かめます。
価値観を表す「安心」「成長」「自由」「つながり」なども、そのまま意味が共有されるとは限りません。
「ここでいう安心は何ができる状態か」「自分にとって成長したと分かる場面は何か」と、行動や場面を添えます。
伝えたいことと具体例から結論を整えます
具体化と抽象化の言い換えを解説した公開記事には、伝えたい内容に、その理由や具体例、そこから言えることを組み合わせる練習もあります。
ここでは独自の例に置き換えて試し、必ず誤解なく伝わる方法とは考えません。
具体化と抽象化の言い換えを解説した記事
ユウさんの「読書学習会を開きたい」という案なら、次に「読んだ本の感想を身近な人と話す場にしたくて、土曜日の午前の会を考えています」と、理由と具体案を説明できます。
最後に「自分がつくりたいのは、学んだことを話せる機会です」と、その例から望んでいることをまとめます。
この例は本人の願いを説明したもので、参加者の需要を確認した根拠ではありません。
「地域の人に必要な会だ」と広げて結論づける前に、相手の意見や条件を確かめる必要があります。
相手が具体的な案だけを聞きたい場合は、その話から説明してかまいません。
同じ話のどの範囲を扱っているかを確かめ、分からない点の質問を受けたら、その場面の言葉へ戻りましょう。
広い言葉で当事者の条件を消さないようにします
予定が合わず意見が分かれているとき、「みんなの成長のため」とまとめても、困っている条件がなくなるわけではありません。
仕事の都合、移動の負担、話したくない題材など、誰の条件が抜けたかを具体的に見ます。
抽象度の高低で人の知性や価値を判断する必要もありません。
広い方向を考える人と細部を確かめる人が、同じ計画をそれぞれ支える場面もあります。
こうした練習をしただけで、脳が自動的にゴールを達成したり、知能や収入が上がったりするとは言えません。
まずは、自分が説明できる言葉と、相手に確かめられる問いが増えたかを見てみます。
自分のゴールを説明できる言葉に整える

最後に、自分のゴールを3つの短い文に整えます。
分類、目的、関係する人をすべて1文に詰め込まず、実行案と確かめたいことも分けて書きます。
1. 自分が向かいたい方向
「私は、〇〇な人が△△できる状態に関わりたい」と書いてみます。
自分の楽しみや身近な願いから始める場合は、それに合う言葉でかまいません。
2. 今考えている具体案
「そのための案として、□□を考えています。
ほかに◇◇も候補です」と書きます。
1つの手段しか思いつかない場合は、無理に増やさず、別案を考えられる余地だけ残します。
3. 次に確かめたいこと
「まだ分からないのは〇〇です。
次は△△に□□を確かめます」と書きます。
情報不足を残すことで、広い方向が具体的な確認へつながります。
ユウさんなら「学びを続けたい地域の人が、身近な人と話せる機会をつくりたい。
短い対話会と読書学習会を考えている。
まず、想定する相手が話す機会を求めているかと、参加しやすい条件を確かめる」というメモになります。
確かめた内容が想定と違ったら、具体案を変えるか、望む状態そのものを見直します。
自分のゴールを言葉にし、実際の行動を振り返りながら整えたい方へ、株式会社RinではSHIFT6の無料相談をご案内しています。
SHIFT6は、月1回のプロコーチとの対話と日々のAIコーチを組み合わせ、6か月間、目標と行動を振り返る支援です。
相談の際も、今の方向、考えている具体案、まだ分からないことを分けたメモが、話し始める材料になります。
メモは自分の考えや行動に絞り、他者の個人情報・秘密や社内資料は入力しないでください。



コメント