GROWモデルとは|セルフコーチングで使う4つの問いと一人で回すときの限界

セルフコーチングとは何かを表す、ノートに向かう手元

セルフコーチングの多くは、GROWモデルという4段階の型を土台にしています。

ところが、この型がどこから来たのか、誰が作ったのかは、実はあまり知られていません。

この記事では、GROWモデルの出どころを一次情報から確かめたうえで、一人で回すときの使い方、「なぜ」より「何」で問いを置く工夫、そして一人で回すことの限界までをまとめました。手順そのものと場面別の質問30は、セルフコーチングのやり方|一人で回す5ステップと質問30に譲り、この記事では型と限界に絞って書いています。

執筆者:鶴田洋(つるた ひろし)/ギャラップ認定クリフトンストレングスコーチ(2025年取得)


目次
毎日ひとつの問いに答えるだけで、自分が大切にしていることが見えてきます。
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GROWモデルとは Goal・Reality・Options・Willの4段階

GROWモデルとは、目標・現状・選択肢・意志の4段階を順に扱う、コーチングの代表的な枠組みです。

Goal・Reality・Options・Willの4つの段階

GROWモデルは、次の4つの頭文字です。

段階 問いの向き
Goal(目標) どうなっていたら最高か
Reality(現状) いま実際どうなっているか
Options(選択肢) やれることは何か
Will(意志) 今日何をやるか

この4段階を順番に通ることが、セルフコーチングのやり方の骨格になります。

GROWモデルは、複数人による共同開発

GROWモデルを誰が開発したのかについては、当事者どうしでも説明が異なります。

Alan Fine氏の会社InsideOut Developmentの公式ページは、GROWモデルはAlan Fine氏、Sir John Whitmore氏、Graham Alexander氏の3名がイギリスで共同開発し、3名が共同で知的財産権を持つと明記しています(InsideOut Development)。一方、John Whitmore氏の会社Performance Consultantsの公式サイトは、創業者のWhitmore氏が「仲間と共に」開発したとだけ書いており、このページではAlexander氏やFine氏の名前を挙げていません(Performance Consultants)。

どちらの説明が正しいかを、この記事では決めません。確かなのは、1人の単独発明ではなく、複数人が関わって形になったモデルだということです。

広まったきっかけは1冊の本

GROWモデルが広く知られるようになったきっかけは、John Whitmore氏の著書『Coaching for Performance』でした。

この点は、先ほどの2社の説明でも一致しています。モデルそのものは複数人で作られ、世に広めたのは1冊の本だった、という順番です。

「誰が最初に名づけたか」は、公式の記録で確認できない

GROWという頭文字を最初に考えたのが誰かについては、同じ逸話を語るブログをいくつか見かけます。

ただし、本人の一次証言や公式記録には、今回たどり着けませんでした。確認できていない逸話として扱い、この記事では発案者を書きません。

GROWモデルを、セルフコーチングで動かす

GROWモデルをセルフコーチングで使うときは、4つの段階を、この順番で自分への問いに置きかえます。

Goal→Reality→Options→Willの順に、自分へ問いを置く

最初に「どうなっていたら最高か」(Goal)を言葉にし、次に「いま実際どうなっているか」(Reality)を飾らずに書きます。3番目に「やれることは何か」(Options)を質より数で出し、最後に「今日何をやるか」(Will)を1つだけ決めます。

詰まったときにどう書くか、場面別の具体的な問いを知りたい方は、セルフコーチングのやり方|一人で回す5ステップと質問30に、この4段階を紙1枚でやりきる手順と、場面別の質問30をまとめています。

順番を飛ばさない(先に選択肢を出すと、現状に戻れなくなる)

4つの問いは、順番を飛ばさないことが大切です。

現状を見る前に選択肢から入ると、いまの自分とかけ離れた案が出やすくなります。遠すぎる案は、結局「今日やること」まで落とし込めません。

セルフコーチングの問いは「なぜ」より「何」で置く

セルフコーチングでは、「なぜ」より「何」で問いを置くと、一人でも前に進みやすくなります。

「なぜできなかったのか」は、言い訳を集めてしまう

「なぜできなかったのか」という問いは、原因を探しに行くようで、実際には言い訳を集めてしまいがちです。

自分を責める方向にも、自分をかばう方向にも寄りやすい問いだからです。どちらに転んでも、次の一歩には近づきません。

問いは、注意の向きを変えるスイッチ

問いは、情報を集める道具というより、注意の向きを変えるスイッチだと考えると使い方が変わります。

「なぜ」で過去の原因を探すかわりに、「何」で次に見る場所を指定します。仕事のモヤモヤを言葉にする3ステップでも、この向きの変え方を扱っています。

二択で自分を詰めない

「自分で気づいて直らないのか、それとも指摘されて初めて気づくのか」のような問いは、答えを二択に狭めてしまいます。

かわりに「その”言われている”というのは、どんな場面が多いか」のように、探しに行ける形にすると、答えが出やすくなります。問いを連続で投げ続けず、出てきた答えを一度受けとめてから次に進むことも大切です。

抽象語だけの問いを、単独で置かない

「本質は何か」「どう感じるか」のような抽象語だけの問いは、単独で置くと止まりやすくなります。

直前に浮かんだ具体的な場面や、人、出来事を、問いの中に必ず入れると答えやすくなります。抽象語は、具体とセットで初めて働きます。

答えが出ない問いは、一段下ろす

答えが出ないときに、同じ問いを言い換えて出し直しても、たいてい止まったままです。

一段下げて、直近の具体的な場面を聞き直すほうが、答えにたどり着きやすくなります。沈黙が続くこと自体は、失敗ではありません。

セルフコーチングの効果は、どこまで確かめられているか

セルフコーチングそのものの効果を大規模に測った研究は、今回見つかりませんでした。ここでは、コーチがつく形のコーチングについて分かっていることを、海外の研究にもとづいて紹介します。

職場のコーチングのメタ分析では、正の効果が確認されている

海外の研究では、職場でのコーチングの効果をまとめたメタ分析があります。

Theeboom、Beersma、van Vianenによる2014年の研究では、コーピングから目標志向の自己統制まで、調べた5つの成果すべてで正の効果が確認されました。効果量はg=0.43からg=0.74の範囲でした(Theeboom et al., 2014.html))。

別のメタ分析でも、組織の成果に正の効果

別のメタ分析では、17件の研究を統合し、組織のアウトカム全体でδ=0.36の正の効果が確認されました。

内訳は、スキル系がδ=0.28、情緒系がδ=0.51、個人の業績がδ=1.24でした(Jones et al., 2016)。

どちらも海外の研究で、「セルフ」ではなくコーチがつく場合

ここまでの2つの研究は、いずれもコーチがつく形のコーチングを対象にしたもので、セルフコーチングそのものを測ったものではありません。

どちらも海外で行われた研究です。セルフコーチングの効果として、そのまま当てはめることはできません。

書くこと自体の効果を調べた古い実験

書くこと自体の効果に近い研究として、1986年に米国の大学生46名を対象にした実験があります。

外傷体験について4日間、1回15分ずつ書いた学生のうち、出来事の事実と感情の両方を書いた群だけは、実験前後で保健センターへの受診回数が変わりませんでした。統制群は受診回数が増えていました。ただし、この差は統計的には有意傾向どまり(p=.055)で、40年近く前の小規模な実験です(Pennebaker & Beall, 1986)。

セルフコーチングで決める一歩は、小さすぎるくらいでよい

セルフコーチングで決める一歩は、拍子抜けするくらい小さくて構いません。

今日から明日・10分以内で終わる粒度にする

一歩の大きさは、今日から明日、10分以内で終わる粒度が目安です。

「企画書を作る」ではなく「タイトルだけ書く」のように、作業のいちばん手前だけを切り出します。大きい一歩ほど、決めた日のうちに手をつけられず終わります。

できた・できないを、自分で判定できる形にする

もう1つの基準は、できたかできなかったかを、自分で迷わず判定できる形にすることです。

「もっと頑張る」のような一歩は、できたかどうかが誰にも分かりません。「タイトルだけ書く」なら、書いたか書いていないかがはっきりします。

決めるのは自分。選択肢は2つまで

一歩を決めるのは、あくまで自分です。

候補が3つ以上あると、選ぶこと自体が新しい負担になります。出した選択肢の中から、多くても2つまでに絞ってから選ぶと決めやすくなります。

具体的で少し難しい目標のほうが成果につながる

海外の研究では、具体的で少し難しい目標のほうが、「ベストを尽くせ」というあいまいな指示よりも高い成果につながることが分かっています。

効果量はd=.42からd=.80でした(Locke & Latham, 2002)。この数値は2002年の論文自体が新しく測定したものではなく、1990年の先行研究のメタ分析にもとづいています。

気持ちが重い日は「今日は何もしない」を一歩にしてよい

気持ちが重い日は、前に進む一歩を無理に決める必要はありません。

「今日はゆっくり休む」「今日は何もしない」も、立派な一歩の1つです。できなかった日があっても、意志や性格のせいにせず、壁を一緒に見て次の一歩を半分の大きさに分け直せば十分です。

セルフコーチングの問いを、意味の単位で管理する

セルフコーチングが続かなくなる理由の多くは、才能でも意志でもなく、問いの出し方にあります。

毎回ゼロから考える負担と、同じ問いに飽きる負担

毎回ゼロから問いを考えていると、問いを考えること自体が負担になり、続ける前に疲れてしまいます。

かといって同じ問いばかり使っていると、今度は「また同じことを聞かれた」と感じて飽きてしまいます。問いを考える負担と、問いに飽きる負担は、両方とも続かなくなる原因になります。

問いは、文面ではなく意味の単位で管理する

問いは、文面を変えても、意味が同じだと「また同じことを聞かれた」と感じやすくなります。

自分と話すノートの問いは、文面ではなく意味(intent)の単位で重複を判定する設計になっています。用意されている問いは384問、意味の単位は15種類です。

意味ごとに、空ける日数を変える

同じ意味の問いを再登場させるまでに空ける日数は、意味の重さによって変えています。

空ける日数 意味の単位
3日 良いこと・成長・できたこと
4日 感謝・自分にやさしく・感情・助けられた
5日 価値観・人との関係・体・勇気・運
7日 手放す・捉え直す

落ち込んでいる日に、前へ進ませる圧の強い問いを出してしまうことも、続かなくなる原因の1つです。良いこと、成長、感謝のような肯定的な注意を向ける問いは間隔を短く戻し、手放すことや捉え直すことに関する問いは間隔を長くとっています。問いの重さに合わせて間隔を変えるだけで、続けやすさは変わります。

習慣になるまでの日数には、大きな幅がある

海外の研究では、ある行動が意識しなくてもできるようになるまでの日数を調べたものがあります。

英国の研究で、12週間毎日記録した参加者のうち、モデルの当てはまりが良かった39名では、中央値66日、範囲は18日から254日と、人によって大きな幅がありました(Lally et al., 2010)。「習慣化には66日かかる」という言い方をよく見かけますが、これは平均ではなく中央値です。しかも参加者全員ではなく、モデルの当てはまりが良かった39名だけの数字です。実際には18日で身についた人もいれば、254日かかった人もいました。

セルフコーチングのアプリを選ぶときに見るところ

セルフコーチングのアプリを選ぶときは、機能の多さより、次の4点を見ると失敗しにくくなります。

問いが用意されているか(自分で考えなくてよいか)

まず見たいのは、問いがあらかじめ用意されているかどうかです。

問いを考える負担がなくなるだけで、続けるハードルは下がります。

同じ問いが続かない仕組みがあるか

次に見たいのは、同じ問いが続かない仕組みがあるかどうかです。

意味の単位で管理する仕組みがあると、「また同じことを聞かれた」という感覚を避けられます。

書いたものが、次の問いに反映されるか

書いたものが、次に出す問いに反映される仕組みかどうかも、確認したい点です。

書きっぱなしにならず、前回の内容を踏まえた問いが返ってくると、対話をしている感覚が続きます。

記録が自分だけのものとして扱われているか

最後に、書いた記録が本人以外に見られない設計になっているかどうかも見ておきたい点です。

上司や管理者が個人の記録を見られない仕組みになっているサービスもあります。自分と話すノートのアプリは、こうした4点を踏まえて作っています。

セルフコーチングを、価値観とつなげる

セルフコーチングを深めていくと、行動の奥にある価値観にたどり着きます。

迷いは、大事なものが2つぶつかっているときに起きる

迷いや苦しさは、たいてい大事なものが1つ足りないときではなく、大事なものが2つぶつかっているときに起きます。

どちらか片方が間違っているわけではないので、正しさを探しても答えは出ません。

向かい合う価値観は押し合う

成長・学び、挑戦・達成、貢献・役立ち、人とのつながり、安定・安心、誠実・信頼、楽しさ・心地よさ、自由・柔軟性という8つの軸のうち、成長・学びと安定・安心、挑戦・達成と貢献・役立ち、楽しさ・心地よさと人とのつながり、自由・柔軟性と誠実・信頼は、向かい合って押し合う関係にあります。

自分軸とは何かとブレない軸のつくり方でも、この押し合う関係について扱っています。

「両方大事だけど、いま片方を選ぼうとして苦しい」

板挟みを感じているときは、「両方大事だけど、いま片方を選ぼうとして苦しいのかもしれない」と捉え直すだけで、気づきになることがあります。

理論名や専門用語を持ち出さなくても、日常語のままで十分に働きます。

どちらが正しいという話にはしない

向かい合う価値観のどちらが正しいかを決める必要はありません。

いま自分がどちらを大事にしたいかを、そのときどきで選び直せば十分です。

セルフコーチングの限界を、先に知っておく

セルフコーチングには、自分一人では超えられない限界があります。

自分では見えない角度は、自分では取りに行けない

自分の外側からしか見えない角度は、自分では取りに行けません。

問いを工夫しても、視点そのものを増やすことはできないためです。一人で問いを出し続けると、考えやすい話題ばかりを選んでしまい、同じところを回りやすくなります。問いを出す係も自分だと、都合の悪い問いを避けてしまうためです。

自分に都合のいい答えに落ち着きやすい

問いを出す係も答える係も自分だと、都合のいい答えに落ち着きやすくなります。

これは意志が弱いからではなく、一人で回す方法の構造上の限界です。

気持ちが大きく沈んでいるときは、やらない

気持ちが大きく沈んでいるときは、自分に問いを立てる時間よりも、人につながる時間を優先してください。

自傷や自殺、虐待や暴力被害のおそれがあるときは、通常の対話を止めて、公的な窓口につながることを最優先にする考え方があります。セルフコーチングは医療機関や専門家の代わりにはなりません。

専門家や身近な人につながる道を、閉じない

セルフコーチングを続けることと、専門家や身近な人につながることは、対立しません。

一人で抱え込まず、必要なときに人へつながる道を、自分でふさがないようにしてください。

セルフコーチングとコーチをつけることの使い分け

セルフコーチングとコーチをつけることは、どちらかを選ぶ話ではなく、使い分ける話です。

一人で回せること、回せないこと

日々の小さな選択や、目の前の目標は、セルフコーチングで一人でも回せます。

コーチングを受けたい人の選び方と料金相場にあるように、大きな決断や、自分では見えない角度が必要な場面は、コーチをつけたほうが進みやすくなります。

問いを出す係だけ手放す、という中間の選び方

一人で回すか、コーチをつけるかの間には、問いを出す係だけを手放すという選び方もあります。

個人向けAIコーチの使い方では、自分では偏りやすい問いの組み立てを手放しつつ、記録は自分のものとして残す形を紹介しています。

世界のコーチの数は10万人を超えた

海外の調査では、2022年時点で世界のコーチ実践者数が初めて10万人を超え109,200人に達したと報告されています。

2019年比では54%の増加でした。同じ調査では、コーチング市場の推定年間収益も2019年比60%増の45億6,400万米ドルと報告されています(2023 ICF Global Coaching Study)。

この数字は世界全体で、日本の内訳は公表されていない

この調査に、日本単独の人数や市場規模の内訳は記載がありません。

世界全体の数字として読んでください。

併用してよい(どちらかを選ぶ話ではない)

セルフコーチングとコーチをつけることは、併用して構いません。

日々はセルフコーチングで回し、大きな節目だけコーチに相談する、という組み合わせ方もできます。

GROWモデルとセルフコーチングに関するよくある質問

Q. GROWモデルを使うのに、資格は必要ですか?

必要ありません。

GROWモデルはコーチングの現場で使われる枠組みですが、Goal・Reality・Options・Willの4段階を自分に問いかけるだけなら、資格の有無は関係ありません。

Q. 紙とアプリ、どちらでGROWモデルを使うのがよいですか?

どちらでも構いません。

大事なのは、問いを考える負担が減り、同じ問いが続かない仕組みがあるかどうかです。紙でも、4段階の問いを先に書き出しておけば同じ効果が得られます。

Q. GROWモデルとセルフコーチングは、同じものですか?

同じではありません。

GROWモデルは4段階の「型」で、セルフコーチングはその型を含めて自分に問いを立てる「行為」全体を指します。GROWモデル以外の問いを使うセルフコーチングもあります。

Q. セルフコーチングとコーチングは、どちらを選べばよいですか?

選ぶというより、使い分けるものです。

日々の整理や実行はセルフコーチングで十分に回せます。自分では気づけない前提を扱う大きな決断のときだけ、コーチをつける、という組み合わせ方が現実的です。

GROWモデルは、今日ひとつの問いから試せる(まとめ)

GROWモデルは、由来こそ当事者どうしで説明が分かれるものの、Goal・Reality・Options・Willという4段階の型そのものは、一人でも回せるように作られています。

「なぜ」より「何」で問いを置くという工夫を添えれば、一人で回すときの詰まりも減らせます。

手順を1つずつ丁寧になぞりたい方は、基本の5ステップと場面別の質問30をまとめたセルフコーチングのやり方|一人で回す5ステップと質問30・続かないときの対処もあわせてご覧ください。

自分と話すノートには384問の問いが用意されていて、同じ意味の問いが続かないよう、意味の単位ごとに間隔を空けて出す設計になっています。書いた記録は、本人だけのものです。

誰にも言えなかったことも、いつでも話せる。

今日、ひとつの問いから始めてみてください。

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