
部下が休職した。あるいは、最近様子がおかしいと気づいている。
「自分のせいかもしれない」と思いながら、この記事にたどり着いた方もいると思います。
部下のメンタル不調を前に責任の範囲や対応に迷う上司へ、会社と個人の法的責任を決めつけず、公表資料の数字、職場で確認すること、専門家への相談先を整理します。統計と株式会社Rinの対応の整理例は分けて説明します。

すぐに相談したい方へ(窓口案内は2026年10月16日確認)働く人のこころの耳電話相談(0120-565-455)、まもろうよ こころは、部下本人も上司自身も使えます。上司・人事担当者の方は、産業保健総合支援センターでは、職場の産業保健に関する相談先を確認できます。対象や受付条件は各窓口で確認してください。
部下をうつ病にした責任は、上司個人が負うものなのか

労働契約法第5条が定める安全への配慮の主体は「使用者」です。ただし、この条文だけで上司個人に法的責任がないとは判断できません。
労働契約法第5条の安全への配慮は使用者に求められる
労働契約法第5条は、次のように定めています。
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
会社が使用者である場合、会社にはこの条文に基づく配慮が求められます。一方、民法第709条は不法行為による損害賠償責任を定めています。具体的な行為や経緯による個人の責任の有無は、この記事で一律に決められません。
条文は「必要な配慮をするものとする」までしか書いていない
条文が定めているのは「必要な配慮をするものとする」という部分までです。具体的に何をすれば配慮したことになるのかは、条文そのものには書かれていません。
この部分は、個別の事案の裁判例の積み重ねによって具体化されていきます。だからこそ「これをやれば安全」という一律の答えは、条文の中には存在しません。
だから「自分の責任だ」と1人で決めない
上司が1人で「全部自分の責任だ」「自分には責任がない」と結論を出さず、人事や法務、必要に応じて弁護士へ、実際の言動や業務上の経緯を伝えて確認します。職場でできる支援と、法的な判断は分けて進めます。
法律上の位置づけと、現場でできることは別の話として、この先の見出しで分けて扱います。
ここから先は法律相談ではない
先に断っておきます。この記事は法律相談ではありません。
慰謝料や訴訟の見通し、解雇の可否といった個別の判断は、この記事では扱いません。具体的な事案は、弁護士や労働局に相談してください。
ここから先で書くのは、公表されている統計と条文、そして上司として今日からできることです。
部下のメンタル不調は、どれくらいの職場で起きているのか

まず、規模の感覚を持ってから読み進めてください。
10人以上の民営事業所の12.8%で、休業か退職が起きている
厚生労働省の令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)によると、常用労働者10人以上の民営事業所のうち、メンタル不調で連続1か月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所は12.8%でした。
12.8%は休業者または退職者がいた事業所の割合です。対象期間は令和5年11月1日から令和6年10月31日です。休業者がいた事業所10.2%と退職者がいた事業所6.2%は重なり得るため、足して12.8%と比較しません。
労働者ベースで見ると、休業0.5%・退職0.2%
同じ調査を、労働者1人ひとりの割合で見ると数字は変わります。連続1か月以上休業した労働者は0.5%、退職した労働者は0.2%でした。
事業所の有無を数える割合と労働者の割合は、分母が違います。0.5%・0.2%はこの調査の集計値であり、目の前の人の発症確率や今後の予測ではありません。
規模が大きい職場ほど「該当者がいる」割合は上がる
事業所規模別に見ると、1,000人以上の事業所では91.6%が該当している一方、10〜29人の事業所では5.7%にとどまります。
この表だけで、規模による個人の不調の起きやすさや原因は判断できません。「該当者がいた事業所」の割合には事業所の人数も関係するため、労働者ベースの数値と区別して読みます。
あなたの職場だけで起きていることではない
この調査は、メンタルヘルス不調による休業や退職が自分の職場だけの課題ではないことを考える材料になります。割合が高いか低いかで、本人への支援の必要性を決めないようにします。
部下をうつ病にする上司、と検索してしまう前に見てほしい数字

検索する前に、労災の実際の数字を見てください。
精神障害の労災は、請求4,958件・支給決定1,082件
厚生労働省の令和7年度「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害の労災請求件数は4,958件、同年度の支給決定件数は1,082件でした。両者が同じ請求の集団を追った数とは限りません。
決定件数全体3,839件に対する認定率は28.2%です。請求件数はその年度の請求、決定件数は前年度以前の請求も含むその年度の決定です。認定率を出す分母は請求4,958件ではなく決定3,839件です。
出来事別で支給決定が最も多いのはパワーハラスメント222件
支給決定を出来事別に見ると、最も多いのは「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」で、決定403件のうち支給決定222件でした。
「上司とのトラブル」は決定1,061件で最多なのに、支給決定は36件
一方、「上司とのトラブルがあった」という出来事は、決定件数そのものは1,061件と全出来事の中で最も多いのに、支給決定は36件にとどまっています。
この表では「パワーハラスメント」と「上司とのトラブル」は別の出来事として集計されています。区分の件数だけで、個別の認定理由や被害の程度を判断することはできません。
この差が意味するのは「大したことがない」ではない
この差を「上司とのトラブルは大したことがないから認定されにくい」と読むのは誤りです。
令和5年9月の認定基準の改正の案内と、出来事別の表の注をあわせて確認してください。「上司とのトラブル」の支給決定が少ない理由を、対立が不明確だったからだとこの集計だけで説明することはできません。
支給・不支給の件数と苦痛の有無は別に考える
「上司とのトラブル」の決定1,061件と支給決定36件はいずれも公表表に載っています。不支給の理由や個々の苦痛の有無・程度は、この件数からは分かりません。
統計上の区分や認定件数と、本人の話を聴いて必要な支援を検討することを分けます。
部下をうつ病にした責任を考える前に、パワハラの定義を正確に知る

責任を考える前に、まず定義を正確に知ってください。
3つの要素をすべて満たすものだけがパワハラ
労働施策総合推進法第30条の2と厚生労働省の指針では、職場におけるパワーハラスメントを次の3つの要素で整理しています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること
- 労働者の就業環境が害されるものであること
この3つをすべて満たすものだけが、パワーハラスメントに該当します。
6つの類型は「代表的な言動」であって限定列挙ではない
厚生労働省の指針は、代表的な言動として6つの類型を示しています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害です。
指針は、この6類型について「限定列挙ではない」と明記しています。6つに当てはまらなければパワハラではない、という読み方はできません。
業務上必要かつ相当な範囲の指示・指導は該当しない
同じ指針は、次のことも明記しています。
客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。
就業環境が害されるかの判断では「平均的な労働者の感じ方」を基準とすることが指針に示されています。ただし、相談者の受け止めや心身の状況にも配慮し、言動の経緯や苦痛などを総合的に確認します。上司が一方的に該当・非該当を決めないようにします。
だから「厳しく言った=パワハラ」ではないし、「言っていない=安全」でもない
厳しく指導したことがそのままパワハラになるわけではありません。同時に、何も強く言っていないから安全だとも言い切れません。
大切なのは、指示や指導が業務上必要かつ相当な範囲に収まっているかどうかです。
部下のメンタル不調のサインは、勤怠と言葉の変化に出る

サインは、大きく分けて勤怠と仕事ぶり、様子の3つの側面に出ます。
| 側面 | 現れ方 |
|---|---|
| 勤怠 | 遅刻・早退・欠勤が増える |
| 仕事ぶり | できていたことに時間がかかるようになる |
| 様子 | 口数と表情が変わる |
遅刻・早退・欠勤の増え方
急な変化だけでなく、本人のそれまでの様子との違いを確認します。例えば「月に1回だった遅刻が週に1回になる」は架空の例です。頻度だけで原因や病名を決めません。
できていたことに時間がかかるようになる
これまで問題なくこなしていた作業に時間がかかる、ミスが増える、提出物の期限が遅れる。能力ではなく、それまでできていたことができなくなる変化に注目してください。
口数と表情の変化
会話の量が減る、雑談に反応しなくなる、表情が硬くなる。逆に、いつもより饒舌になる、笑い方が不自然になる、というケースもあります。
ここに書いたのはサインであって、診断ではない
この見出しに書いたのは、あくまで「気づくきっかけ」です。サインが複数あるからといって、それが特定の病名の診断基準になるわけではありません。
診断ができるのは医師だけです。上司の役割は、変化に気づき、必要な窓口につなぐところまでです。
部下がメンタル不調で泣く場面に立ち会ったら、どうするか

実際にその場面に立ち会ったとき、何をすればいいか整理します。
まず話せる状態と安全を確認する
部下が泣きながら話しているときは、今話せるか、休憩したいかを確認します。話せる場合は遮らずに聴きますが、最後まで話すことを強いず、中断の希望や体調を優先します。切迫した危険がある場合は、通常の面談より安全確保と緊急の支援を優先します。
場所を変える場合は本人の希望を聞く
オープンな席や通路で話が始まったら、静かな場所へ移るか、いったん休むかを本人に尋ねます。場所を変えれば必ず安心できるとは限らないため、同席者の希望も確認します。
助言を急ぐ前に本人の希望を確かめる
正論や励まし、解決策を先に伝える前に、本人が何を話したいか、どのような支援を希望するかを確認します。ここでは対応を考えるための注意点として挙げています。
相手の気持ちを推測で決めず、聞き取った内容に違いがないかを短く確認します。助言や窓口の紹介へ進む場合も、本人の意向を確かめます。
記録は目的と共有範囲を決めて残す
記録が必要な場合は、日時、本人が伝えた内容、確認した業務上の事実、次の対応を分けます。利用目的、閲覧できる人、共有範囲、保管方法を社内ルールと本人への説明に沿って確認し、推測の病名や不要な私生活情報を書き広げないようにします。
こうした個別の場面の対応に迷ったときは、1on1で部下が話さないときの対処法も参考にしてください。
泣いたことを評価に持ち込まない
泣いたことだけで能力を評価しないようにします。一方、本人の体調や安全のために業務配分の調整が必要な場合は、本人の意向や産業保健スタッフの助言、人事の手続きを踏まえて検討します。
「上司が怖い」という部下の言葉と病名の判断を分ける

「上司が怖い」と感じている可能性を考えても、実際の気持ちや病名を上司が推測で決めることはできません。
部下からどう見えるかを考えても決めつけない
この記事は上司側の視点ですが、自分の言動が相手にどう受け取られたかを確認する必要もあります。本人が直接話しにくい場合に備え、人事や別の相談経路を用意します。
強いストレスを感じる事柄がある労働者は68.3%
厚生労働省の個人調査によると、仕事や職業生活に関して強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者は68.3%でした。
そのうち26.1%が対人関係を挙げている
ストレスの内容を複数回答(3つ以内)で見ると、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」を挙げた人は26.1%でした。仕事の量43.2%、仕事の失敗・責任の発生等36.2%、仕事の質26.4%とは別の項目です。対人関係を上位3項目の1つと取り違えないようにします。
この26.1%の分母は「強いストレスがある労働者」であって、全労働者ではありません。
適応障害かどうかを、上司が判断してはいけない
「適応障害かもしれない」と感じても、それを判断し、口にするのは上司の役割ではありません。判断できるのは医師だけです。
本人が選べる相談経路を用意する
部下が上司に直接話しにくい場合も考え、上司以外へ相談できる経路を案内します。誰に話すかを本人が選べることと、必要な職場の対応を人事等へつなぐことを分けて確認します。
部下の相談を考えるときは「相談できる」と「相談した」の分母を分ける

94.6%と74.7%は分母が違うため、単純に差を引いて相談しなかった割合を出すことはできません。
相談できる相手の1位は家族・友人68.6%、2位は上司65.7%
厚生労働省の調査によると、ストレスを相談できる人が「いる」と答えた労働者は94.6%でした。相談できる人がいる労働者を100とした相談相手(複数回答)では、家族・友人68.6%、上司65.7%、同僚62.8%でした。
男性は「上司」が最多
相談できる相手を男女別に見ると、男性では「上司」が70.6%でした。62.5%は、実際に相談した男性の相談相手としての上司の割合であり、別の集団の値です。
「相談できる」と「相談した」は異なる集団の割合
全労働者のうち相談できる人がいる割合が94.6%、その「相談できる人がいる労働者」のうち実際に相談したことがある割合が74.7%でした。さらに、実際に相談した人を100とした相手の割合(複数回答)が、家族・友人62.1%、上司58.9%です。
この集計だけでは、相談しなかった理由や、上司に話せなかった人数は分かりません。相談経路を用意することと、本人が利用することを同じ状態とみなさないようにします。
上司は、相談先の候補には入っている
上司は、部下にとって相談先の候補にはっきり入っています。ただし、候補に入っていることと、実際に話せることは別です。
部下との面談そのものの進め方に不安があるときは、部下との面談で使える質問例50選も参考にしてください。
メンタル弱い部下がめんどくさい、と感じてしまったとき

その感情を、まず否定しないでください。
その感情だけで自分の状態を決めつけない
「めんどくさい」と感じたことだけで、自分の性格や健康状態を決める必要はありません。負担を感じる場面や自分で担っている業務を整理し、対応を1人で続ける必要があるかを人事や上司に相談します。
4つのケアには、管理監督者自身のセルフケアも含まれている
厚生労働省の指針が示す「4つのケア」には、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアがあります。
このセルフケアは、部下だけでなく管理監督者自身も対象に含まれています。上司も、ケアの対象です。
「部下とのトラブル」を出来事とする労災の支給決定も存在する
先ほど紹介した労災の出来事別の集計には、「部下とのトラブル」を出来事とする支給決定も6件、含まれています。件数はごく少数ですが、上司側も労災の対象になり得るという事実そのものは押さえておいてください。
負担が大きいときは自分の対応も振り返る
余裕がないと感じるときは、すぐに答えようとせず、自分の対応や業務の分担を振り返ります。自分自身の状態を整えることも、部下と向き合うための準備の一部です。
在宅勤務やリモート下で部下の様子が見えにくいと感じているなら、見えない部下のマネジメントのコツも参考にしてください。
ADHDの部下への対応で疲れたときに、やってはいけないこと

ここでも、上司がやることの範囲は変わりません。
診断は医師にしかできない。上司は診断しない
ADHDかどうかを判断できるのは医師だけです。「あの人はADHDだと思う」と上司が決めつけることは、してはいけません。
「特性」という言葉で本人を説明しない
「特性だから」という言葉で、その人の言動をまるごと説明しないでください。1人の人を、一般化された言葉に置き換えると、その人自身が見えなくなります。
見るのは人ではなく、うまくいっていない業務の場面
見るべきは、人の性質ではなく「どの業務のどの場面がうまくいっていないか」です。場面を具体的に切り分けると、対応も具体的になります。
産業医・産業保健総合支援センターにつなぐ
自分の判断だけで抱え込まず、産業医や産業保健総合支援センターにつないでください。産業保健総合支援センターの案内で、事業者や人事労務担当者向けの相談内容、利用対象、受付方法を確認します。
ADHDの部下にやめてほしいと思ったときこそ、1人で決めない
「やめてほしい」という感情が出るほど疲れているときこそ、1人で結論を出さないでください。その感情を抱えたまま判断すると、あとから見返したときに違う選択肢が見えてくることがあります。
部下をうつ病にした責任を問われる前に、会社が用意している仕組みを使う

自社の相談窓口や産業保健の体制、休職・復職のルールを確認します。体制が分からない場合は、人事や労務の担当者へ確認します。
ストレスチェックは50人以上の事業場で義務
労働安全衛生法第66条の10により、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、ストレスチェックの実施が義務です。
50人未満も義務化へ。施行日と準備を確認する
2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、労働者数50人未満の事業場でも義務化することが決まっています。厚生労働省が2026年2月25日に公表した案内では「公布後3年以内に政令で定める日」とされています。自社に適用される時期や準備は、改正法・政省令の最新案内と担当部署への確認を通じて判断してください。
高ストレス者の申出を理由に不利益な扱いをしてはいけない
ストレスチェックで高ストレスと判定され、面接指導を申し出た労働者に対して、その申出を理由に不利益な扱いをすることは禁止されています。
集団分析は個人情報の保護を確認して使う
ストレスチェックの結果を集団で分析する場合も、人数や組合せから個人が分からないか、同意や結果の取扱いが適切かを実施担当者へ確認します。集団の結果で個人の病名や本音を推測しないようにします。
メンタルヘルス対策に取り組む事業所は63.2%
厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は63.2%でした。すでに多くの職場で、何らかの取り組みが行われています。
自社の取り組みを見直すきっかけとして、AIコーチを職場の対話支援に使う際の確認点も参考にしてください。
部下のメンタル不調に対するラインケアと4つのケアの連携

上司が担う範囲を、はっきりさせておきます。
4つのケアの中身
厚生労働省の指針が示す4つのケアは、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアです。
ラインによるケアの範囲=職場環境の把握と改善・相談対応・復職支援
上司が部下を支える中心は「ラインによるケア」です。職場環境等の把握と改善、相談対応、職場復帰における支援などが含まれます。上司自身のセルフケアも行い、事業場内外の専門家と連携します。
治療は範囲に入っていない
治療は、ラインによるケアの範囲には入っていません。治療は、医療の専門家の役割です。
専門家につないだあとも職場の配慮を連携する
上司は変化に気づき、話を聴き、職場の環境を整えます。医学的な判断や治療は専門家に相談し、その助言と本人の意向を踏まえて、必要な勤務上の配慮を人事等と継続して確認します。
法人向けの導入を検討する場合は、AIコーチの法人導入の手順とポイントも参考にしてください。
部下が休職したあと、職場復帰までの5つのステップ

休職後の流れを、あらかじめ知っておいてください。
5つのステップの全体像
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」は、次の5つのステップを示しています。
1. 病気休業開始及び休業中のケア
2. 主治医による職場復帰可能の判断
3. 職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
4. 最終的な職場復帰の決定
5. 職場復帰後のフォローアップ
職場復帰支援プログラムと職場復帰支援プランの違い
「職場復帰支援プログラム」は、事業場全体の共通ルールを指します。「職場復帰支援プラン」は、1人ひとりに合わせた個別の支援内容を指します。この2つは、指す範囲が違う言葉です。
主治医の判断と職場で必要な業務の確認を分ける
手引きは休業中のケアから扱っています。また、主治医による復帰可能の判断が、そのまま職場で必要な業務遂行能力の回復の判断と一致するとは限りません。本人の意向、主治医の意見、産業医等の確認を踏まえて復職の可否や支援プランを検討します。
戻ってきたあとのフォローアップまでが1セット
職場復帰は、戻ってきた時点で終わりではありません。第5ステップのフォローアップまでを含めて、1セットの支援です。
部下のメンタル不調に関するよくある質問

Q. 部下が「上司が怖い」と人事に言っていたと聞きました。どうすればよいですか?
まず、自分から部下本人に「そう言っていたらしいけど」と問い詰めないでください。人事や産業保健スタッフを通じて、事実確認と対応の方法を相談することから始めてください。
Q. 部下に「病院に行ったほうがいい」と言ってもよいですか?
診断名を上司が口にすることは避けてください。その代わりに、産業医やこころの耳などの相談先を、本人の希望を聞きながら一緒に確認することはできます。
Q. 休職中の部下に連絡してもよいですか?
連絡の頻度や内容は、本人・主治医・産業保健スタッフと事前にすり合わせておくべき事柄です。一律の正解はなく、この記事の範囲では判断できません。人事や産業保健スタッフに確認してから進めてください。
Q. 自分の評価が下がるのではないかと不安です
部下の不調だけから、上司の評価が下がる・下がらないとは判断できません。自社の評価制度や実際の対応経緯を人事に確認し、評価への不安と、今必要な本人への支援を分けて相談します。
Q. 私自身がつらくなってきました。どこに相談できますか?
上司自身がつらいと感じたときは、産業保健総合支援センターの案内から、事業者や人事労務担当者向けの相談内容や受付方法を確認できます。働く人本人としての相談は、働く人の悩みホットライン(03-5772-2183)や、こころの耳電話相談(0120-565-455)でも受け付けています。
部下のメンタル不調を、1人で抱えないために(まとめ)

労働契約法上の使用者の配慮と、具体的な行為についての個人の責任は別に確認します。上司が1人で免責や責任の範囲を決めず、人事・法務や必要な専門家につないでください。
上司はラインによるケアを中心に、変化の確認、傾聴、相談先への接続、職場環境の調整を担います。診断・治療は医療の専門家に委ね、自分自身のセルフケアも含めて、社内外と連携します。
もう一度、相談窓口を置いておきます(2026年10月16日確認。受付変更は各公式案内を確認)– こころの耳電話相談 0120-565-455(平日17:00〜22:00、受付21:50まで/土日10:00〜16:00、受付15:50まで。祝日・振替休日・年末年始を除く)- まもろうよ こころ– 産業保健総合支援センター(事業者・人事労務担当者向け。利用条件は窓口で確認)- 働く人の悩みホットライン 03-5772-2183(月〜土15:00〜20:00、祝日・年末年始を除く。相談料無料、通話・通信料は相談者負担)
1人で全部を抱え込む必要はありません。
この記事は、鶴田洋(つるた ひろし/ギャラップ認定クリフトンストレングスコーチ)が、公表されている一次資料に基づいて執筆しました。



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