「何度言っても伝わらない」「指示を出しても、思ったとおりに動いてくれない」
そう感じて、この記事を開いた管理職の方もいるのではないでしょうか。もし、言うことを聞かない部下に困っている、あるいは年上の部下や中途入社の部下との関わり方に迷っているなら、最後まで読んでいただく価値があると思います。
この記事では、指示が通らないときに何が起きているのかを、部下を問題視するのではなく構造として整理しました。線引きは、法令の原文と公的な統計だけを根拠にしています。
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言うことを聞かない部下がいるとき、まず疑うのは指示の出し方
「言うことを聞かない」と感じたときにまず疑うべきは、部下の姿勢ではなく指示の出し方です。
「聞かない」のか「聞けない」のか、を分ける
「聞かない」と「聞けない」は、外から見るとよく似ています。指示の意味が分からない、優先順位が読めない、といった「聞けない」状態を「聞かない」と決めつけると、関わり方の入り口を間違えます。
指示が結論だけで、前提が共有されていない
指示が「これをやって」だけで終わっていると、部下の側には目的や背景が残りません。何のためにやるのかが分からないまま作業だけを渡されると、優先順位の判断も自分でできなくなります。
納得していないことは、行動に変わらない
指示を理解することと、納得することは別です。理解していても納得していなければ、行動は鈍くなったり後回しになったりします。
⚠️ この記事は、部下を黙らせる方法の記事ではない
この記事は、部下を従わせるテクニック集ではありません。指示が通らない場面で何が起きているかを見立て、上司の側で変えられることを整理するための記事です。部下が動くフィードバックの伝え方とNG例も、伝え方を見直す入り口になります。
言うことを聞かない部下への指導は、どこからパワハラになるのか
指導がどこからパワーハラスメントになるのかは、厚生労働省の告示に定義が示されています。
パワハラは3つの要素をすべて満たすもの
令和2年厚生労働省告示第5号は、職場におけるパワーハラスメントを次のように定義しています。「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」をいいます(厚生労働省 令和2年厚生労働省告示第5号)。
適正な業務指示・指導は該当しないと、指針が明記している
同じ告示には、次の一文もあります。「なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」。
「再三注意しても改善されない部下に、一定程度強く注意すること」は該当しない例
告示は該当しない例も挙げています。「遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること」は、その一つです。
ただし人格を否定する言動は、問題行動があっても該当し得る
厚生労働省委託事業「あかるい職場応援団」は、この点を補足しています。「なお、労働者に問題行動があった場合であっても、人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動がなされれば、当然、職場におけるパワーハラスメントに当たり得ます」。
6つの類型は限定列挙ではない
告示は代表的な言動として、身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害の6つを挙げています。そのうえで「次の例は限定列挙ではないことに十分留意し」と明記しています。
判断は「経緯や状況を総合的に考慮」して決まる
判断は、労働者の問題行動の有無や内容・程度を含め、その言動が行われた経緯や状況などを総合的に考慮して行われます。問題行動がある場合は、その内容・程度と指導の態様との相対的な関係性が重要な要素です。
パワハラの相談件数は過去最多、ではない
よく言われる「パワハラ相談は過去最多」は、事実と異なります。
令和6年度の「いじめ・嫌がらせ」は54,987件・前年度比8.5%減
厚生労働省「令和6年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、民事上の個別労働紛争の相談内容のうち「いじめ・嫌がらせ」は54,987件でした(厚生労働省「令和6年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」)。前年度比で8.5%減っています。
ピークは令和3年度の86,034件
「いじめ・嫌がらせ」の件数がもっとも多かったのは令和3年度の86,034件です。ただし令和4年度に集計方法が変わったため、令和3年度以前の数字と単純に比べることはできません。
「13年連続最多」は「相談内容の中で最も多い項目」という意味
この統計にはよく「13年連続最多」という表現が添えられます。これは「相談内容の中で件数が最も多い項目である」という意味であって、過去最高の件数という意味ではありません。
そもそもこの数字はパワハラの件数ではない
令和4年4月に改正労働施策総合推進法が全面施行されたことに伴い、同法上のパワーハラスメントの相談は別集計となり、「いじめ・嫌がらせ」には計上されなくなりました。つまり54,987件は、パワハラだけの件数ではありません。
数字を正確に見ることが、怖がりすぎない土台になる
「パワハラの相談が過去最多」という誤った情報は、管理職を必要以上に萎縮させます。数字を正確に見ることが、怖がりすぎずに指導する土台になります。
反抗的な部下に見えるとき、部下の側からは何が見えているか
反抗的に見える態度の裏側には、コミュニケーション不足という背景があることが分かっています。
パワハラを経験した人の職場の特徴、1位は「上司と部下のコミュニケーションが少ない」30.6%
厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度・PwCコンサルティング実施)によると、パワハラ経験者が挙げた職場の特徴の1位は「上司と部下のコミュニケーションが少ない・ない」30.6%でした(厚生労働省委託「職場のハラスメントに関する実態調査」結果概要版)。非経験者では11.2%にとどまります。
過去3年間にパワハラを受けた労働者は19.3%
同調査の労働者調査(n=8,000)では、過去3年間にパワハラを受けたと答えた人は19.3%でした(厚生労働省委託「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書)。
対策に積極的な職場では15.2%、そうでない職場では35.1%
勤務先の取り組みとの関係も調べられています。「積極的に取り組んでいる」と答えた人のパワハラ経験率は15.2%、「あまり取り組んでいない」と答えた人では35.1%でした。
これは相関であって、因果ではない
この差は相関関係であって、対策をすれば被害が半分以下になるという因果関係を示すものではありません。
「反抗」に見えるものが、防御であることがある
コミュニケーションが少ない職場ほどパワハラを経験しやすいという結果は、反抗的に見える態度の裏側を考える手がかりになります。
部下とのコミュニケーションで、上司と部下がすれ違っている点
上司と部下の見立ては、思っている以上にずれています。
部下側で実施率が高いのは、消極的な行動のほう
パーソル総合研究所の「フォロワーシップに関する定量調査」(2025年11月実施・n=3,200・非役職者2,500人/役職者700人)では、部下側は消極的な行動の実施率が高くなっています(パーソル総合研究所「フォロワーシップに関する定量調査」)。「できるだけ労力をかけずに仕事を終わらせたい」53.8%に対し、「指示がなくても必要な行動を自ら見つけて実行」は32.1%です。同社は、こうした調査のほかに組織サーベイや管理職向けの研修サービスも提供しています。
「判断が難しい場面では最終的な責任は上司にある」51.6%
同じ調査では「判断が難しい場面では最終的な責任は上司・上層部にある」と考える部下が51.6%でした。
上司の71.7%は「信頼できる優秀な部下がいる」と答えている
一方で上司側の役職者に聞くと、71.7%が「信頼できる優秀な部下がいる」と答えており、平均で2.88人を挙げています。
この2つは別々に聞いた結果であって、同じペアの突き合わせではない
部下側の回答と上司側の回答は、同じ上司・部下のペアを突き合わせたものではなく、別々に集計された結果を並べたものです。「部下は消極的なのに上司は信頼している」と単純に対比できるわけではありません。
上司との面談で本音を話せている割合が2割未満、が51.2%
パーソル総合研究所の「職場の対話に関する定量調査」(2024年1月実施・n=6,000・正規雇用就業者20〜64歳)では、上司との面談で「本音を話せている割合が2割未満」と答えた人が51.2%にのぼりました(パーソル総合研究所「職場の対話に関する定量調査」)。上司と部下の信頼関係の築き方も、この差を埋める入り口になります。
部下に仕事を任せるとき、任せると放り出すの境目
「任せる」と「放り出す」の境目は、決めてよい範囲が渡っているかどうかです。
任せることは、決めてよい範囲を渡すこと
仕事を渡すことと、任せることは違います。どこまで自分で決めてよいかを合わせて渡すことが、任せるということです。
「できるから大丈夫」は、確認をやめる合図になっている
一度うまくいくと、上司は確認を減らしがちです。「できるから大丈夫」という判断が、実は途中経過を見なくなる合図になっていることがあります。
権限を渡さずに責任だけ渡さない
産業能率大学 総合研究所の「第6回 上場企業の課長に関する実態調査」(2021年9月実施・n=828・従業員100人以上)では、部下を持つ課長の99.5%がプレイヤー業務を兼務していました(産業能率大学 総合研究所「第6回 上場企業の課長に関する実態調査」)。産業能率大学は経営者・管理職向けの教育機関です。
課長の99.5%がプレイヤーを兼務している
課長業務に占めるプレイヤー業務の割合は、平均で50.1%でした。自分の仕事の半分をこなしながら、部下に任せる判断もしていることになります。
上司が忙しいこと自体が、指示を雑にしている
部下育成のやり方とNGな関わり方でも触れているとおり、上司自身の余裕のなさは、指示の粗さに直結します。
年上の部下との関わりで、最初に外すべき前提
年上の部下との関わりで最初に外すべきは、「年上だから経験がある」という前提そのものです。
65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%
厚生労働省「令和7年 高年齢者雇用状況等報告」(2025年6月1日現在・n=237,739社・常時雇用21人以上の企業)によると、65歳までの雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%でした(厚生労働省「令和7年 高年齢者雇用状況等報告」)。内訳は継続雇用制度65.1%、定年の引上げ31.0%、定年制の廃止3.9%です。
70歳までの就業確保措置は34.8%
一方、70歳までの就業確保措置を実施済みの企業は34.8%でした。前年から2.9ポイント増え、実数で82,748社です。
⚠️ 一方は義務、もう一方は努力義務
この2つの数字を並べるときは、性質の違いに注意が必要です。65歳までの雇用確保措置は義務、70歳までの就業確保措置は努力義務です。
就業者のおよそ7人に1人が65歳以上
総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(2025年9月14日公表・原資料は労働力調査2024年)によると、就業者総数に占める65歳以上の割合は13.7%、「およそ7人に1人」でした(総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」)。
🔴 ただしこの数字は「年上の部下が増えている」の直接の証明ではない
この統計は65歳以上だけを扱ったものです。管理職が直面する年上の部下の多くは50代後半から60代前半で、この数字はあくまで傍証として扱うべきものです。
年上の部下が「元上司」であることの重さ
年上の部下は、以前は上司だった人であることも少なくありません。
役職定年制がある企業は16.7%
人事院「民間企業の勤務条件制度等調査」(令和5年調査・対象は常勤従業員50人以上の企業)によると、役職定年制がある企業は16.7%でした(人事院「民間企業の勤務条件制度等調査」)。このページには集計対象企業数の記載がないため、割合を過度に強調せず参考値として扱います。
役職定年の年齢は、部長級も課長級も「55歳」が最多
役職定年の年齢は、部長級では55歳が33.5%で最多、課長級でも55歳が40.3%で最多でした。
定年後再雇用での年収減少は平均32.5%
パーソル総合研究所「企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査」(2020年9月実施・n=800・100人以上企業の経営・人事担当者)では、定年後再雇用での年収減少は平均32.5%でした(パーソル総合研究所「企業のシニア人材マネジメントに関する実態調査」)。2020年時点の調査であり、同社はシニア人材向けの研修サービスも提供しています。
🔴 65歳以上の雇用者の76.9%が非正規
総務省統計局の同資料によると、役員を除く65歳以上の雇用者563万人のうち、正規は130万人(23.1%)、非正規は433万人(76.9%)でした。「年上の部下」の多くは、嘱託や再雇用という立場で働いています。
立場が変わった人に、立場の話をしない
役職定年や再雇用は、本人が選んだというより制度によって決まった変化です。以前の役職や年収の話は持ち出さず、いまの役割で関わることが大切です。
指針は「優越的な関係」を、役職だけで決めていない
「優越的な関係」は、役職の上下だけで決まるものではありません。
同僚や部下による言動もパワハラになり得る
令和2年厚生労働省告示第5号は、「優越的な関係を背景とした」言動の例として、同僚や部下による言動も挙げています。「同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの」も、その一つです。
業務上必要な知識や経験を持っていることも「優越的な関係」になる
「同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの」も同じ例です。
属性の例に「経験年数や年齢」が挙げられている
「あかるい職場応援団」の解説では、優越的な関係を判断する属性の例として「経験年数や年齢」が挙げられています。
年上の部下との関係は、上下が一方向ではない
役職では部下でも、経験や知識では上司より詳しいことがあり、上下は一方向に固定されたものではありません。
上司は、部下の育て方を教わらないまま上司になっている
多くの上司は、部下の育て方そのものを教わらないまま管理職になっています。
管理職層に計画的OJTを実施した事業所は24.8%
厚生労働省「令和6年度 能力開発基本調査」(調査時点2024年10月1日・事業所調査・調査対象数7,218事業所・有効回答率54.1%)によると、管理職層に計画的OJTを実施した事業所は24.8%でした(厚生労働省「令和6年度 能力開発基本調査」)。
新入社員54.7%の半分以下
新入社員に計画的OJTを実施した事業所は54.7%、中堅社員は37.5%です。管理職層への実施率は、新入社員の半分以下にとどまります。
OFF-JTでも管理職層は51.0%
研修など職場を離れて行うOFF-JTでも、管理職層は51.0%です。新入社員59.8%、中堅社員57.1%と比べると、やはり低い水準です。
⚠️ これは「事業所の割合」であって個人の受講率ではない
この数字の分母は「事業所」であって「管理職個人」ではありません。「管理職の24.8%しか研修を受けていない」という書き方は誤りで、正しくは「管理職層に計画的OJTを実施した事業所が24.8%」です。
人材育成に問題があると答えた事業所は79.9%、1位は「指導する人材が不足している」59.5%
能力開発・人材育成に「何らかの問題がある」と答えた事業所は79.9%でした。その内訳(複数回答)の1位は「指導する人材が不足している」59.5%です。管理職の仕事と求められるスキルにあるとおり、教える側も手探りで役割を担っているのが実態です。
言うことを聞かない部下を放置すると、静かに離職に向かう
言うことを聞かない状態を放置すると、部下は反発ではなく離職という形で答えを出すことがあります。
前職を辞めた理由「職場の人間関係が好ましくなかった」男9.0%・女11.7%
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」によると、転職入職者が前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げた割合は、男性9.0%・女性11.7%でした(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)。
🔴 これは退職理由の1位ではない
「退職理由の1位は人間関係」という言い方をよく見かけますが、この調査では違います。「その他の個人的理由」を除くと、男性の1位は「定年・契約期間の満了」14.1%、女性の1位は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%で、人間関係は女性でも2位にとどまります。
男性で最も高いのは40〜44歳の16.0%
年齢別に見ると、人間関係を理由に挙げた割合がもっとも高いのは男性40〜44歳の16.0%でした。
🔴 母集団は再就職できた人だけ
この調査の対象は「転職入職者」、つまり再就職できた人だけです。辞めて無職になった人や引退した人は含まれていません。
数字が小さいことは、問題が小さいことを意味しない
9.0%や11.7%という数字だけを見ると小さく感じますが、これは「理由を言えた人」の集計であり、言わずに辞めた人の分は含まれていません。
心理的安全性は、言いたいことを言い合える職場のことではない
心理的安全性は、思ったことを何でも言い合える職場、という意味ではありません。
提唱者エイミー・エドモンソンの定義
心理的安全性を提唱したのは、ハーバード大学のエイミー・エドモンソンです。その定義は「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」というものです(Google re:Work「『効果的なチームとは何か』を知る」)。
Googleの調査で最も重要だったのは心理的安全性
Googleのピープルアナリティクスチームが180チーム(エンジニアリング系115・営業65)を35種類以上の統計モデルで分析し、「圧倒的に重要」とされたのが心理的安全性です。
🔴 「2倍」は業績が2倍という意味ではない
心理的安全性の高いチームは、Googleからの離職率が低く、収益性が高いという結果も出ています。ただし「2倍」というのは「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が2倍という意味であり、業績が2倍になるという意味ではありません。
🔴 これはGoogle1社・180チームの社内調査
この調査はGoogle1社の中で行われた社内調査です。re:Work自身も、効果的なチームの特徴は組織によって違うと明記しており、そのまま他社に当てはめられるものではありません。
反対意見が出ることは、機能している合図
心理的安全性が高いチームは、意見が一致しやすいチームではありません。反対意見や違和感が出ること自体が、その場が機能している合図です。
言うことを聞かない部下との関わりを、明日から変える3つのこと
明日から変えられることは、大きく3つに整理できます。
変えること1 指示に「なぜ」と「決めてよい範囲」を足す
指示を出すときに、目的と、どこまで自分で決めてよいかを一言添えます。
変えること2 相談されたら、まず評価を返さない
部下から相談を受けたとき、最初から助言や評価を返すのは避けます。早すぎる助言は、もっとも多い失敗として知られています。部下との面談で使える質問例50選も、問いの言葉を選ぶ参考になります。
変えること3 問いを一度に1つだけにする
問いかけは、情報を集める道具ではなく、部下の注意の向きを変えるスイッチとして使います。一度に1つだけにし、二択で詰めないようにします。
🔴 部下の言葉を一般論に置き換えない
部下が「この指示のこの部分が分かりにくい」と言っているなら、それを「コミュニケーションの問題」のような一般論に置き換えないことです。
🔴 言っていない気持ちを断定しない
「それは不満だったんですね」と決めつけるのではなく、「もしかすると、納得しきれていない部分もありましたか」というように、本人が違うと言える余地を残します。
部下が上司に見せない場所を、職場の中に用意する
上司との面談で本音を話せている割合が2割未満、と答えた人が51.2%というデータ(前述)が示すとおり、職場の中だけで本音を引き出すのは簡単ではありません。株式会社Rinの法人向けAIコーチは、部下も上司も、それぞれが自分のことを書ける場所として設計されています。上司自身も、部下にも自分の上司にも見せずに書くことができ、書いた記録は本人だけのもので、上司や管理者が見ることはできません。
価値観の軸が違うだけのことを、態度の問題にしない
「言うことを聞かない」に見える態度の裏には、価値観の違いが隠れていることがあります。
大切にしているものが違うと、同じ指示が違って届く
法人向けAIコーチが扱う価値観の軸は、成長・学び/挑戦・達成/貢献・役立ち/人とのつながり/安定・安心/誠実・信頼/楽しさ・心地よさ/自由・柔軟性の8つです。同じ指示でも、どの軸を強く持っているかによって届き方が変わります。
8つの軸は対になって押し合っている
8つの軸のうち、成長⇔安定、自由⇔誠実、楽しさ⇔つながり、挑戦⇔貢献は、対になって押し合う関係にあります。組の合計は100、8軸全体の合計は常に400のまま動きません。
「やる気がない」ではなく「前に出している軸が違う」
安定を強く持つ部下に、挑戦を前提にした指示だけを出せば、動きは鈍く見えます。それは「やる気がない」のではなく「前に出している軸が違う」だけということがあります。
見えると、関わり方が変わる
部下がどの軸を大切にしているかが見えると、同じ指示でも伝え方を変えられます。無料ツール「価値観チェック」(二択12問・約2分)で、自分の軸を確かめることもできます。
言うことを聞かない部下に関するよくある質問
Q. 何度言っても直りません。強く言ってもよいですか?
告示は「遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること」を、パワーハラスメントに該当しない例として挙げています。ただし人格を否定するような言動は、問題行動があっても該当し得ます。
Q. 年上の部下に敬語で指示するのは、なめられませんか?
敬語で指示を出すことと、指示が軽く受け取られることは別の話です。指針が示す「優越的な関係」は役職の上下だけで決まらず、年上であること自体が関係の性質に影響する要素とされています。
Q. 反抗的な態度をとる部下を、異動させるべきですか?
異動の判断は個別の人事の話であり、この記事では踏み込みません。その前に、反抗に見える態度が防御反応になっていないか確かめる余地はあります。
Q. 部下に任せたいのですが、失敗が怖くて任せられません
課長の99.5%がプレイヤー業務を兼務しているという調査結果のとおり、上司自身が余裕を持てない状態では任せる判断も難しくなります。決めてよい範囲を明確にし、確認の頻度から少しずつ調整する方法があります。
Q. 自分の指導がパワハラかどうか、誰に相談すればよいですか?
個別の事案の可否は、この記事では判断できません。厚生労働省委託事業「あかるい職場応援団」や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談できます(あかるい職場応援団)。慰謝料や懲戒処分など具体的な判断が必要な場合は、弁護士や労働局への相談をおすすめします。
言うことを聞かない部下は、関わり方を変える合図(まとめ)
言うことを聞かない部下がいるとき、多くの場合は指示の出し方や関係の側に理由があります。パワハラの3要素と6類型、年上の部下との関わり方、任せ方の境目——ここまで見てきた数字と指針は、部下を問題視するためではなく、上司の側で変えられることを見つけるためのものです。
指示に「なぜ」を添えること。相談されたら、まず受けとめること。そして、部下も上司も、それぞれの本音を置ける場所を持つこと。
法人向けAIコーチは、部下を管理するための道具ではなく、部下も上司も、それぞれが自分のことを書ける場所です。法人向けAIコーチは、1名あたり月額1,500円(税込)、1名から、初回30日間は無料で始められます。
この記事は、鶴田洋(つるた ひろし/ギャラップ認定クリフトンストレングスコーチ)が、公表されている一次資料に基づいて執筆しました。


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