上司と部下の信頼関係の築き方|1on1でできること

この記事の監修・執筆:鶴田 洋(株式会社Rin 代表)
ギャラップ認定クリフトンストレングスコーチ(2025年取得・Gallup公式プロフィール)。東証プライム企業で管理職・マネジメントを経験し、営業実績で全店1位を複数回達成。これまでに500回以上のコーチングセッションを実施しています。

「部下が本音を話してくれない」「1on1をしても表面的な報告で終わってしまう」——そんな悩みを抱えるマネージャーは多いのではないでしょうか。上司と部下の信頼関係は、一朝一夕には築けません。

しかし、正しいアプローチを知れば、1on1という30分の対話が関係性を大きく変えるきっかけになります。この記事では、信頼関係を育てる関わり方と、1on1での具体的な実践方法を解説します。

目次
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なぜ上司と部下の信頼関係が重要なのか

信頼関係のない職場では、部下は「失敗を怒られる」「評価が下がる」という恐れから、問題を隠したり、本音を言わなくなります。その結果、上司は現場の実態を把握できず、適切なサポートもできなくなります。これが積み重なると、離職や生産性の低下につながります。

実際、Gallup社の調査では、従業員エンゲージメントのばらつきの少なくとも70%はマネージャー(上司)に起因すると推定されています(Gallup「Dismal Employee Engagement Is a Sign of Global Mismanagement」)。上司と部下の関係の質が、チームの状態に直結する理由がここにあります。

一方、信頼関係が構築されている職場では、部下が安心して相談でき、挑戦的な仕事にも前向きに取り組めるようになります。マネージャーにとっても、情報が集まりやすくなり、チームの課題に早期対応できます。

Googleがチームの効果性を分析した調査(プロジェクト・アリストテレス)でも、心理的安全性(対人関係のリスクを取っても安全だと感じられる状態)がチームの生産性を左右する最も重要な要素であることが示されています(Google re:Work「Understand team effectiveness」)。心理的安全性の基礎は心理的安全性とは何かでも詳しく解説しています。

信頼関係を築く3つの関わり方

1. 「聴く」姿勢を徹底する

上司と部下の信頼関係において、もっとも重要なのは「話す」より「聴く」ことです。部下が話しているとき、スマホを置き、アドバイスより先に相手の言葉をそのまま受け取る姿勢を意識しましょう。

  • 相づちや繰り返しで「ちゃんと聴いている」を示す
  • 解決策を急がず、まず感情を受け取る
  • 「なぜそう思った?」と背景を掘り下げる

2. 一貫性のある言動を積み重ねる

信頼は「約束を守る」という小さな行動の積み重ねで生まれます。「確認しておくね」と言ったことを翌日忘れてしまう上司を、部下は信頼しません。逆に、些細な約束でも必ず守る上司は、徐々に「この人は信頼できる」という評価を得ます。

3. 失敗を責めず、成長の機会として扱う

部下がミスをしたとき、真っ先に責め立てる上司の元では、誰も失敗を報告しなくなります。「なぜそうなったか」を一緒に振り返り、次にどうするかを考える関係性が、安心感と信頼感を生み出します。

任せる範囲と相談する条件を明らかにする

任せると伝えた仕事では、本人が決められる範囲、途中で相談する条件、上司が判断する点を分けます。以下は説明用の架空例です。実際の権限や社内ルールに合わせて調整してください。

区分 合意する内容の例
本人が決める 期限内で作業の順番を選ぶ
途中で相談する 他部署の予定に影響する変更が出たとき
上司が判断する 担当の追加や優先順位の変更

条件が変わった場合は、以前の合意を更新します。部下が質問したときは、必要な条件を上司側で説明していたかも確認できます。

1on1で信頼関係を育てる実践法

1on1を行う前に、今回は仕事の確認、評価、育成の相談のどれを扱うかを短く説明できます。話の量だけで信頼の程度を判断せず、本人が話す範囲を選べるようにします。

話した内容をどこまで共有するかも、分かる範囲で伝えます。上司の権限で守れない秘密保持は約束せず、調整のために共有が必要な場合は目的と範囲を本人と確認してください。

アジェンダは部下に決めさせる

1on1の議題を上司が全部決めてしまうと、部下は「報告会」と感じ、本音を出しにくくなります。「今日は何について話したい?」と部下に委ねることで、主体性と安心感が生まれます。

話す議題に迷うときは、上司から部下への1on1質問例を手元に置き、部下自身に選んでもらう方法もあります。

近況・仕事・キャリアの3層で深める

次の3つは、面談で扱う話題を選ぶための候補です。すべてを毎回聞く前提にはせず、本人の希望と今回の目的に合うものを選びます。

  1. 近況・コンディション——体調や気分、最近どうか
  2. 仕事の進捗・課題——困っていること、サポートが必要なこと
  3. キャリア・成長——やりたいこと、得意を活かせているか

近況やキャリアまで毎回話すことを義務にはせず、本人の希望と仕事の目的に合わせて扱う内容を選びます。合意事項を残す書式が必要な場合は、1on1シートのテンプレートも参考にできます。

フィードバックは「観察→影響→期待」の順で伝える

1on1でのフィードバックは、評価よりも成長を促す言葉が信頼につながります。「〇〇という行動を見た(観察)→チームにこんな影響があった(影響)→次回はこうしてほしい(期待)」という流れで伝えると、部下は責められている感覚を持たずに受け取れます。

近い考え方に、人材育成機関CCL(Center for Creative Leadership)が提唱する「SBI(状況→行動→影響)」というフィードバックモデルがあります(CCL「The Feedback Model That Actually Works」)。事実ベースで具体的に伝えるほど、部下は受け取りやすくなります。フィードバック全般のコツは部下へのフィードバックのコツでもまとめています。

面談後は上司側の約束も確認する

面談の終わりに、本人がすることと上司がすることを分けます。説明用の架空例なら、「本人は必要な資料を整理する。上司は関係部署へ条件を確認する。次の打ち合わせで状況を見る」と残せます。

次の面談では、上司側の約束も確かめます。未対応ならその事実と次の動きを返し、部下から聞かれるまで曖昧にしないようにします。本人の行動が止まった場合は、条件の変化や情報の不足も確認できます。

上司だけで解決できない課題は、適切な担当者や相談先へつなぎます。部下の私的な発言を広げず、必要な情報と共有の目的を選んでください。

AIを活用した1on1支援という新しい選択肢

上司自身の振り返りには、自分が行った説明や、守った約束を記録する方法があります。「目的を伝えたか」「相談する条件を示したか」「確認の結果を返したか」など、自分の行動に絞れます。

自分と話すノートには、ノート、価値観のマップ、AIコーチとの対話があります。部下や顧客の個人情報、発言全文、社内資料は入力せず、自分が次に変えたい関わり方を一般的な言葉で整理する用途に使えます。AIの返答で部下の本音や性格を判断するものではありません。

次の面談で守る約束を1つ書くところから、自分と話すノートを無料で始めることができます。

まとめ:小さな関わりの積み重ねが信頼をつくる

上司と部下の信頼関係は、特別な取り組みより、毎日の「聴く」「約束を守る」「失敗を責めない」という小さな関わりから生まれます。1on1はその積み重ねを加速させる場です。月に数回の1on1を、単なる報告会でなく対話の場にすることで、チームの土台となる信頼が育ちます。

1on1で上司と部下の関係を立て直したい場合は、人材育成・組織活性化研修をご覧ください。お互いの強みと価値観を先に言葉にしておくと、1on1で扱える話の幅が変わります。1名からでも実施でき、オンラインにも対応します。

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