アティチュードは、心理学では対象への肯定的・否定的な評価を指します。コーチングでは、行動の方向性や選び方、外から見える言動を指す説明もあるため、誰の何を扱う言葉かを確かめることが大切です。
この記事では、アティチュード・ハビット・ビリーフの違いを、説明用の架空人物であるミナさんの会議場面で確かめます。対象、自分の評価、実際の選択、その場の条件、別の選択肢の5欄に分け、自分の評価と観察できる言動を混同せずに振り返りましょう。

アティチュードの意味は使われる場面で確かめる

アティチュードとアティテュードは、英語の attitude を日本語で表すときの表記です。
表記だけで別の概念だと決めるより、説明の中で何を指しているかを確認することが役に立ちます。
APAの心理学辞典では、attitude は人や集団、論点、概念などの対象に対する、比較的持続する肯定的または否定的な評価として説明されています。
この意味では「新しい提案を好意的に捉える」「この仕事には否定的な見方を持っている」といった、対象への評価に焦点があります。APA Dictionary of Psychology
ここでいう評価は、対象についての見方です。
「その案が好きだ」という評価と、「その案で成果が出る」という事実の予測は、同じではありません。
好きでも根拠は不足していることがあり、好ましく思わなくても有効性を示す資料はあるかもしれません。
一方、コーチングの説明には、行動が向かう方向や選び方をアティチュードと呼ぶものがあります。
この用法を読むときは「何を好むか」だけでなく、「ある状況で何を選びやすいか」に注目します。
心理学辞典の説明と関連する部分があっても、そのまま同じ定義として扱う必要はありません。
外から見える振る舞いを指す場合もあります。
CCJの管理職向けコラムでは、独自のSTARの説明の中で Attitude を「言動」として使っています。
この資料では、本人の内面だけを考えるのではなく、発言や行動のどこを扱っているのかを読み取ることが必要です。CCJの管理職向けコラム
さらに、コーチのアティチュードという表現であれば、相談する本人への向き合い方や対話の姿勢を指している可能性があります。
相談者の選び方を説明しているのか、支援する側の姿勢を説明しているのかでも、主語が変わります。
| 説明で注目しているもの | 読むときに確かめること |
|---|---|
| 対象への評価 | 何に対して肯定的または否定的なのか |
| 行動の方向性や選び方 | どの状況で何を選びやすいと説明しているか |
| 観察できる言動 | どの発言や行動を取り上げているか |
| コーチの対話の姿勢 | 誰が誰にどのように向き合う話なのか |
講座や本を読むときは、まず「この説明の主語と対象は何か」を押さえましょう。
用語が同じだからといって、別の資料の説明をすべて重ねると、何を変える話なのかが曖昧になります。
アティチュードを一律に「無意識の行動」と言い換えず、その資料が示す意味に沿って読むことが出発点です。
アティチュードとハビットとビリーフを分けて考える

アティチュードとハビットの違いを知りたいときは、「選ぶ方向」と「繰り返す行動」を分けると理解しやすくなります。
ただし、これはすべての分野に共通する唯一の区分ではありません。
青山コーチングの公開記事では、ハビットを繰り返す行動、アティテュードを行動の方向性や選び方として区別しています。
本稿では、このコーチングでの説明を、具体的な場面を読むための見方として使います。青山コーチングの用語説明
たとえば、新しい提案を聞いたときに「まず可能性を確かめる方向を選ぶ」ことと、「会議後に資料を開いて確認する行動を繰り返す」ことは分けて説明できます。
前者がこの用法のアティチュード、後者がハビットに関わる話です。
確認する方向を選んでも、その場で資料を読めるとは限りません。
APAの habit の説明には、よく学ばれた行動や、状況と結びついた比較的自動的な行動という観点があります。
予定表に日課として入れただけで、必ず自動的な習慣になったとはいえません。APAによる habit の説明
ビリーフは、真実または妥当だと受け入れている前提に関わる概念です。
APAの belief の説明も、この受け入れ方に焦点を当てています。
ビリーフをすべて誤りとみなしたり、持っているだけで問題だと考えたりする必要はありません。APAによる belief の説明
「新しい案には検証が必要だ」は、判断の前提として説明できます。
「新しい案は歓迎したい」は、対象に対する評価として説明できます。
似た内容の言葉でも、何を述べているかによって整理の仕方は変わります。
| 用語 | この場面で注目すること | 説明用の架空の例 |
|---|---|---|
| アティチュード | 対象への評価や選ぶ方向 | 新しい案に慎重だが可能性は確かめたい |
| ビリーフ | 真実や妥当だと考える前提 | 採用するには担当者と検証方法の確認が必要だ |
| ハビット | 状況の中で繰り返している行動 | 提案を受けた後に確認用のメモを残している |
| セルフトーク | 自分に向けている言葉 | まず何が分かっていないか聞いてみよう |
セルフトークは、自分に向けた言葉として切り分けられます。
言葉を手がかりに評価や前提を振り返ることはできますが、発した言葉だけでアティチュード全体が分かるわけではありません。
「やってみよう」と言いながら、必要な情報がなくて動けない場合もあります。
エフィカシーも別の論点です。
APAの self-efficacy の説明では、特定の状況で行う能力や望む結果に対する本人の見方が扱われています。
各コーチング体系のエフィカシーと常に同じ定義だとは決めず、ここでは「自分にできるという見通し」と「その対象をどう評価するか」を分けます。APAによる self-efficacy の説明
新しい案を好ましく思っていても、実行できる自信は持てないことがあります。
反対に、実行できると思っていても、その案を選びたいとは限りません。
好きかどうか、妥当だと思うか、できると思うかを1つにすると、必要な支援を見失いやすくなります。
知識とスキルと取り組む姿勢も、同じように分けて考えましょう。
手順を知らない、知っているがまだできない、できるが今回は選ばない、では確かめる内容が違います。
説明や練習が必要な状態を、本人の姿勢の問題だけに置き換えることはできません。
これらは互いに関わり得ますが、「ビリーフを変えれば、必ずアティチュードが変わり、習慣と成果も変わる」という一直線の関係ではありません。
用語を分ける目的は、原因を1つに決めることではなく、今どこを見ているかをはっきりさせることです。
自分のアティチュードを具体的な選択から振り返る

ここからは、用語の違いを確かめるために、説明用の架空の人物であるミナさんの場面を使います。
Rinの相談事例や実績ではありません。
ミナさんは、会議で仕事の進め方を変える新しい案を聞きました。
提案者の説明が終わると、資料の内容を確かめる前に「今回は保留にしましょう」と返しました。
周囲から見えるのは、新しい案を聞いたことと、保留と答えたことです。
この返答だけで「ミナさんは変化が嫌いだ」と決めることはできません。
慎重に判断したかったのか、今の仕事で手いっぱいだったのか、判断に必要な情報が足りなかったのかは、返答だけでは分からないからです。
観察できる言動と、その理由についての推測を分ける必要があります。
次の表は、ミナさん本人がその場面を振り返ったと仮定した、Rinによる説明用の記入例です。
性格を判定する表ではなく、同じ出来事の中でどの用語が何を扱うかを確かめるために使います。
| 分けて見る項目 | ミナさんの記入例 | 読み取れる範囲 |
|---|---|---|
| 対象 | 会議で出た仕事の進め方を変える案 | 新しいこと全般への評価ではなくこの案が対象 |
| 自分の評価や意味 | 改善につながるかもしれないが負担が増えそうだと感じた | 期待と懸念が併存している |
| 実際の選択 | 資料を確認する前に保留と返答した | その場で選んだ方向と外に表れた言動 |
| その場の条件 | 担当者と必要な作業が分からず会議の残り時間も少なかった | 判断に使える情報と時間が限られていた |
| 別の選択肢 | 担当者と作業範囲を質問してから保留か採用かを決める | 採用するかどうかとは別に確認する選択がある |
対象を限定すると、「新しいことへの態度」という大きな話を、今回の提案への評価に戻せます。
別の新しい案なら、ミナさんはすぐに内容を確かめるかもしれません。
1つの場面を、その人のすべての選び方の証拠にはしないようにします。
評価には、肯定と否定が同時に含まれることもあります。
ミナさんは改善の可能性を感じながら、追加の負担を懸念しています。
慎重な評価を消して前向きな言葉に置き換えるより、「何には期待し、何には懸念があるのか」を分けたほうが、今回の見方を説明できます。
また、「負担が増えそうだ」という評価や予測と、「負担が実際に増えることが確認された」という証拠は別です。
この架空の場面では、必要な作業がまだ分かっていません。
懸念を軽視する必要はありませんが、確かめていない内容を確定した事実として扱わないことも大切です。
次に、ミナさんが「担当者と作業範囲が分からない案は採用しない」と考えていたなら、それはビリーフとして整理できる前提です。
その前提が妥当かを考えることと、「案に期待するか」という評価を考えることは区別できます。
前提を残したまま、確認する方向へ選び方を変える余地もあります。
「その場の負担を増やさない方向を選んだ」は、行動の方向性を指す用法のアティチュードとして説明できます。
「保留にしましょうと返答した」は、観察できる言動です。
どちらも同じ場面を扱いますが、内面の評価そのものを直接見たわけではありません。
この段階でハビットと呼べるかは、別に確かめる必要があります。
今回だけの保留なのか、似た提案を受けるたびに資料を見ずに保留しているのかは、まだ分かりません。
繰り返している具体的な行動が確認できて初めて、習慣の話として整理する材料が得られます。
自分の場面を振り返るときも、最初から「消極的な自分」のような名前を付けず、対象と実際の選択から書いてみましょう。
本人の理由は本人の言葉として残し、外から見える行動と区別します。
本人にも理由を説明できないときは、その時点では分からないと残してかまいません。
説明できないことを、過去の記憶や隠れた原因が分かったという証拠にはしないようにします。
そうすると、評価の話をしているのか、前提の話なのか、繰り返す行動の話なのかを確認できます。
ゴールに向けて選び方と習慣を見直す

用語を読み分けた後は、今回の選び方が、自分の向かいたい方向に合っているかを考えられます。
ただし、アティチュードを変えること自体を、目的にする必要はありません。
守りたい責任があり、今の選択が適しているなら、それを続ける判断もできます。
青山コーチングの公開記事には、相談者がゴールを日々考える実践を、著者が紹介する例もあります。
それは公開記事での実践の紹介であり、同じように行えば誰でもゴール達成が加速するという効果の証明ではありません。青山コーチングの公開記事
ミナさんの架空の例では、「改善の可能性は検討したい」という本人の望みと、「既存の仕事を止めずに進める」という仕事上の責任が両方あります。
このとき、すぐに採用するか、すぐに退けるかの二択にしなくてもかまいません。
次の会話で、提案の一部について担当者と作業範囲を質問し、その後に採否を考える選択があります。
ここで試すのは、何でも前向きに受け入れることではありません。
「分からない案はすぐ保留する方向」から、「必要な条件を1つ確かめてから判断する方向」へ、今回の選び方を少し動かすことです。
確認した結果、実行が難しいと分かれば、保留や不採用の判断も残ります。
Rinからの提案は、この場面に必要な範囲に絞って試すことです。
質問できる時間や相手の協力があるか、返答を受けて検討する余力があるかも確かめます。
本人の意欲があっても、仕事の配分や判断権限によっては、一人で進められないことがあります。
振り返るときは、「前向きになれたか」という気分だけでなく、何を選び、何が分かったかを見ます。
ミナさんなら、質問したこと、答えが得られた内容、まだ不明な点、その結果の採否を区別して残せます。
その記録は、評価が変わったのか、情報が増えて判断できたのかを読み分ける材料になります。
ハビットを考えるのは、その確認行動を繰り返したい場合です。
「提案を受けたら、判断に必要な不明点をメモする」のように、具体的な行動として表します。
「柔軟な人になる」という抽象的な目標だけでは、何を繰り返すのかが分かりません。
ただし、毎日行うことや一定の回数を達成することが、すべての場面に適しているわけではありません。
提案が来る頻度や仕事の状況に合わせ、続けられるかを実際に確かめます。
休むことや慎重に待つことが必要な場面まで、習慣づくりの失敗とみなさないようにしましょう。
まだ向かいたい方向を言葉にできない場合は、用語の理解とは別にゴールを考える時間を取ることもできます。
テーマの選び方は、目標にするテーマを選ぶ記事で整理しています。
本稿では、選んだ方向と実際に繰り返す行動を区別するところまでに焦点を置きます。
職場でアティチュードを話すときに気をつけること

職場で「アティチュードが大切だ」と話すときは、誰の何についての話かを明示しましょう。
コーチが相談者に向き合う姿勢と、働く本人が提案をどう評価して選ぶかは、別の主語を持つ話です。
同じ言葉でも、支援する側への問いなのか、本人への問いなのかを分けます。
コーチ側の姿勢として考えるなら、相手の可能性や考えを対話の中で確かめることが1つの論点になります。
最初から望ましい答えを決めて、そこに相手を誘導すると、本人が何を望み、何を懸念しているのかを聞き取りにくくなります。
「変わるべきだ」という結論の前に、その人の言葉を聞く必要があります。
上司がミナさんの返答を扱う場合も、「態度が悪い」「やる気がない」とラベルを付けるより、具体的な行動を共有したほうが話を始めやすくなります。
この架空の例なら、「資料を確認する前に保留と答えた」という観察と、「何が判断しにくかったか」という確認を分けられます。
内面を見抜いたかのように決めつける必要はありません。
また、本人にだけ選び方の変更を求める前に、仕事の条件を確かめましょう。
どこまでが役割なのか、どの基準で判断するのか、必要な情報は渡されているか、検討の時間や協力者はいるかを具体的にします。
期待が曖昧なままでは、本人も何を選べばよいのか分かりません。
ミナさんが確認方法を知らないなら、知識を伝える支援が必要かもしれません。
方法は知っていても初めてで難しいなら、一緒に確認する練習が役立つ場合があります。
担当する余力がないなら、仕事の配分を見直す話になるでしょう。
これらをすべて「姿勢を変えれば解決する」とまとめると、実際に足りない条件を扱えなくなります。
本人が選べる部分と、組織や周囲の調整が必要な部分を分けて話すことが大切です。
安全や仕事上の責任に関わる懸念も、前向きさが足りないという理由で退けないようにします。
アティチュードを話題にすることは、相手の評価や行動を一方的に変える権限を得ることではありません。
必要な仕事の基準を伝えながら、本人の望みや理由を聞き、選べる範囲を確かめます。
対話しただけで必ず態度や成果が変わると約束することもできません。
用語の整理は、性格の診断や心の奥を見抜く方法ではありません。
心身の不調で生活や仕事に支障が出ている場合は、姿勢の問題として抱え込まず、医療機関などの相談先を検討してください。
その相談と、ゴールに向けた選択を考えるコーチングの相談は、目的を分けて考えます。
アティチュードについての疑問と相談先

アティチュードとハビットは同じですか?
同じものとして扱うより、資料が何を指しているかを確かめましょう。
本稿で紹介したコーチングの用法では、アティチュードは選ぶ方向、ハビットは繰り返す行動として区別しています。
1度の保留という選択だけでは、保留が習慣になっているかまでは分かりません。
言葉を変えればアティチュードも変わりますか?
自分への言葉を変えることは、今の評価や前提を考え直すきっかけにはなり得ます。
ただし、言葉の変更だけで選び方や習慣が必ず変わるとはいえません。
ミナさんなら、「確かめよう」と言うことに加えて、質問に必要な時間や情報があるかも関わります。
ポジティブでないアティチュードは悪いものですか?
否定的な評価や慎重な選択に、理由があることもあります。
どの対象に対して何を懸念しているか、その懸念にはどのような根拠があるかを見ましょう。
望む方向に進むことと、危険や負担を無視することは同じではありません。
ほかの人のアティチュードを変えられますか?
相手の内面を自由に変えることはできません。
仕事の基準や観察できる行動を伝え、理由を聞き、必要な条件を整える対話はできます。
本人が望むことと、自分が相手に望むことも区別して話します。
ゴールが決まらないときはどうすればよいですか?
ゴールをすぐに確定させなくても、今回の対象をどう評価し、何を選んだかは振り返れます。
その場面を、将来の方向を考える材料にすることもできます。
自分への問いの進め方を知りたい方は、セルフコーチングのやり方も参考にしてください。
学ぶときや相談するときは何を確認しますか?
本や講座の発行者が、誰の何をアティチュードと呼んでいるかを確認しましょう。
用語の説明、実践する方法、期待される効果は分けて読み、紹介されている例だけで効果が確かめられたとは判断しないことが大切です。
相談の場でも、「今回は選び方を考えたい」「繰り返す行動を見直したい」と対象を伝えると、扱いたい論点を共有できます。
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