セルフコーチングのやり方|一人で回す5ステップと質問30・続かないときの対処

この記事の監修・執筆:鶴田 洋(株式会社Rin 代表)
ギャラップ認定クリフトンストレングスコーチ(2025年取得・Gallup公式プロフィール)。東証プライム企業で管理職・マネジメントを経験し、これまでに500回以上のコーチングセッションを実施しています。

セルフコーチングのやり方は、自分に質問をして、その答えを書き出し、次の一歩を自分で決める、という手順です。特別な道具も資格もいりません。必要なのは紙1枚と15分だけです。

ただ、やり方を調べて試したのに続かなかった、という声もよく聞きます。
質問リストは手に入るのに、実際に机の前に座ると手が止まる。
そこには理由があります。

この記事では、基本の5ステップと場面別の質問30に加えて、一人でやるからこそ起きる詰まりと、その抜け方まで書きました。もし「やり方は知っているのに続かない」と感じているなら、最後まで読んでいただく価値があると思います。読み終えたときに、今日そのまま試せる15分の型が手元に残ります。

30秒でわかるセルフコーチングのやり方
  • やり方の骨格=テーマを決める→現在地を書く→望む状態を書く→選択肢を出す→今日の一歩を決める、の5ステップ
  • 使う道具=紙とペン、またはメモアプリ。1回15分。慣れたら5分でも回ります
  • いちばん多い失敗=落ち込んでいる日に、いきなり解決策を考えること
  • 続けるコツ=時間を増やすのではなく、質問の数を減らすこと
目次
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セルフコーチングとは 自分に問いかけて自分で答えを出す方法

セルフコーチングとは、コーチが担っている「問いかける役」を自分で引き受けて、自分の考えを整理し、次の行動を決めていく方法です。相談相手がいなくても、自分の中にある材料だけで前に進めるところに価値があります。

もとになっているコーチングは、答えを教える関わりではありません。
国際コーチング連盟(ICF)も、コーチングを「クライアントが自分の可能性を最大限に引き出せるよう、考えを刺激し創造性を高める関係」として定義しています(出典:International Coaching Federation)。
助言ではなく、問いで注意の向きを変える関わりです。

だからセルフコーチングでも、自分に指示を出すのではありません。
やることは、自分に質問をして、出てきた答えを目に見える形にすることだけです。

セルフコーチングが効く理由

効きめの正体は、自分と悩みのあいだに距離ができることです。

ミシガン大学のイーサン・クロスらの研究では、内省するときに「私は」ではなく自分の名前や二人称で自分に語りかけた人のほうが、ストレス場面での動揺が小さく、終わったあとに引きずる度合いも低いという結果が出ています(Kross et al., 2014, Journal of Personality and Social Psychology, 106(2), 304-324・doi:10.1037/a0035173)。

書くという行為にも、同じはたらきがあります。
頭の中にあるうちは自分と一体だったものが、紙の上に出た瞬間、眺められる対象に変わるからです。

セルフコーチングとコーチングの違いを3点で整理

セルフコーチングは、コーチングの簡易版ではありません。得意な場面がそれぞれ違います。

セルフコーチングコーチとのコーチング
問いかける人自分相手
得意なこと日々の整理。決めたことの実行。習慣にできる自分では気づけない前提に気づく。逃げ場をなくさず深く掘る
苦手なこと自分の考えの枠を超えにくい。避けたい話題を飛ばせる費用と時間がかかる。毎日は使えない

つまり、頻度で回すのがセルフコーチング、深さで進むのがコーチングです。片方だけなら、まずは毎日回せるほうから始めるのが現実的だと思っています。

セルフコーチングのやり方 基本の5ステップ

ここからが本体です。1回15分。紙1枚を4つに折って使います。コーチングで広く使われるGROWモデル(目標・現実・選択肢・意志の順に扱う枠組み)を、一人でも回せる形にしたものです。

ステップ1. 扱うテーマを1つに決める

最初に「今日はこれを考える」と1つに決めます。
「仕事全般」ではなく「来週の面談で何を伝えるか」くらいの大きさが適切です。

テーマが決まらない日は、それ自体を書いてしまってください。
「決まらないのは、選択肢が多いからか、決めるのが怖いからか」と1行足すだけで、扱うものが見えてきます。

ステップ2. 現在地を、事実と気持ちに分けて書く

いま何が起きているかを書きます。ポイントは事実と気持ちを混ぜないことです。

「上司から差し戻された」は事実。
「自分は評価されていない」は気持ちの側の解釈です。
この2つを分けて書くと、どこまでが実際に起きたことなのかが見えます。

ステップ3. 望む状態を、完了形で書く

次に、どうなっていたら良いかを書きます。
「頑張る」ではなく「来週の面談が終わったとき、伝えたい3点を全部言えている」のように、終わった状態の絵にします。

「そんなの無理では」と思っても、いったん書いてください。実現できるかを判定するのは、このステップの仕事ではありません。

ステップ4. 選択肢を、質より数で出す

現在地と望む状態の差を埋める方法を、思いつくだけ書きます。
目安は5つ。3つで止まると、たいてい最初から考えていた案しか出てきません。

詰まったら「もし時間もお金も無制限だったら」と条件を外して考えます。実行できない案を混ぜておくほうが、実行できる案の質も上がります。

ステップ5. 今日の一歩を1つだけ決める

最後に、選択肢の中から今日か明日に手をつけられるものを1つ選びます。
「いつ」「どこで」までを書いて終わりです。

ここで3つも4つも決めないでください。1つに絞るほど実行率が上がる、というのは現場でくり返し見てきたことです。

セルフコーチングのやり方を5分・15分・週1で使い分ける

毎回15分を確保できる人は多くありません。時間で諦めるより、時間に合わせて型を変えるほうが続きます。

時間使う場面やること
5分毎日。通勤や寝る前ステップ2と5だけ。「いま何が起きているか」「今日の一歩は何か」の2問
15分週に1〜2回。迷いが出たとき5ステップをひと通り。紙1枚
30分月1回。区切りのとき1か月ぶんの記録を読み返し、くり返し出ている言葉を拾う

おすすめは、5分の型を毎日、15分の型を週1回という組み合わせです。
毎日の5分は記録をためる役、週1の15分は方向を決める役。役割が違うので、両方あると回りはじめます。

セルフコーチングで使う質問30(場面別)

手が止まったときの質問を場面別にまとめました。全部使う必要はありません。1回で使うのは多くても3つです。

現在地をつかむ質問

  • いま、実際に起きている事実はどれか
  • そのうち、自分の解釈が混ざっているのはどこか
  • この状況を10点満点で表すと、いま何点か
  • その点数の理由は何か
  • 1点ぶん高かったとしたら、何が違っているか
  • すでにうまくいっている部分はどこか

望む状態を描く質問

  • これが解決したら、何ができるようになっているか
  • そのとき、自分はどんな気持ちでいるか
  • まわりの人には、どう見えているか
  • 期限をつけるとしたら、いつまでか
  • それは本当に自分が望んでいることか。誰かの期待ではないか
  • 100点でなく60点でいいとしたら、どんな状態か

選択肢を広げる質問

  • ほかにどんなやり方があるか
  • 時間もお金も制限がなければ、何をするか
  • 尊敬している人なら、ここで何をするか
  • 1年後の自分が見ていたら、何と言うか
  • あえて何もしないとしたら、どうなるか
  • いちばん小さく試せる方法は何か

行動を決める質問

  • 今日か明日、実際に手をつけられるのはどれか
  • それはいつ、どこでやるか
  • 始めるのを邪魔しそうなものは何か
  • その邪魔を、あらかじめ減らす方法はあるか
  • できたと分かる目印は何か
  • 誰かに宣言しておいたほうが動けるか

行き詰まったときの質問

  • いま避けている話題はどれか
  • この問題を、自分は本当に解きたいのか
  • 解けないのではなく、決めたくないだけではないか
  • 今日の自分は、考えられる状態にあるか
  • これは自分でどうにかできる範囲のことか
  • 誰かに聞いたほうが早いことではないか

セルフコーチングの質問の選び方3つのルール

質問リストがあっても手が止まるのは、選び方を知らないまま、上から順に答えようとするからです。実際のセッションでも、使う問いは1回に数個です。

ルール1. 一度に投げる質問は1つだけ

2つ並べて聞くと、人は答えやすいほうにしか答えません。
紙に書くときも、1問書いて、答えを書いて、それから次の1問にします。

ルール2. 「なぜ」を「どうすれば」に置きかえる

「なぜできなかったのか」と自分に聞くと、出てくるのは理由ではなく言い訳か自己否定になりがちです。
「どうすればできるか」「何があればできたか」に置きかえると、同じ内容でも前を向いた答えが出ます。

ルール3. 二択で自分を追い込まない

「やるのか、やらないのか」と自分に迫ると、答えは出ても納得は残りません。
「いま出ている選択肢は何か」と広げる形にすると、3つめ4つめが見えてきます。
問いは自分を裁く道具ではなく、注意の向きを変えるスイッチです。

セルフコーチングでよくある3つの詰まりと抜け方

一人でやるからこそ起きる詰まりが3つあります。手順よりも、ここでつまずく人のほうが多いところです。

詰まり1. 自分の考えの枠から出られない

自分に質問しているので、自分の発想の外には出にくくなります。
抜け方は2つあります。ひとつは、視点をずらす質問を必ず1つ混ぜること(「あの人ならどうするか」「1年後の自分から見たら」)。もうひとつは、月に1回でいいので人に話す機会をつくることです。

詰まり2. 自分に甘くなる、または厳しくなりすぎる

誰も見ていないので、行動を決めても流れます。逆に、責める方向に振れる人もいます。
どちらも、記録を残して後から読み返すことで修正できます。1か月前の自分の言葉は、他人の言葉に近い距離で読めるからです。

詰まり3. 答えが出ない日がある

これがいちばん多い詰まりです。
答えが出ない日は、考える力の問題ではなく、コンディションの問題であることがほとんどです。

睡眠が足りない日、気持ちが落ちている日は、無理に結論を出さず「今日は考えられる状態ではない」と1行だけ書いて終えてください。
それも立派な1回です。

セルフコーチングが続かないときに変える3か所

続かない原因は、意志ではなく設計にあります。次の3か所のどれかを変えると、たいてい戻ります。

1つめは、量です。質問を6つ使っていたなら2つに減らします。時間を延ばすより、減らすほうが続きます。

2つめは、場所です。書く場所が毎回違うと、探す手間で止まります。ノート1冊かメモアプリ1つに決めて、そこだけに書きます。

3つめは、きっかけです。「時間があるとき」では来ません。すでに毎日やっていること(歯みがきのあと、通勤の電車、寝る前)に貼りつけます。

それでも止まるときは、扱っているテーマが大きすぎる可能性があります。
「キャリアをどうするか」は1回では終わりません。
「今週の面談で何を言うか」まで小さくすると、また回りはじめます。仕事のモヤモヤの扱い方は仕事のモヤモヤを言葉にする3ステップにまとめました。

セルフコーチングをやらないほうがいい場面

やり方の記事ですが、使わないほうがよい場面をはっきり書いておきます。

ひとつめは、心身の不調が続いているときです。
眠れない、食べられない、気分の落ち込みが2週間以上続いている。
こうしたときに自分へ問いを向けると、自己否定を強める方向に働くことがあります。医療や相談の窓口が先です。

ふたつめは、緊急で危険が関わる場面です。
安全に関わることを一人で整理しようとせず、人に頼ってください。

みっつめは、相手がいる問題を一人で結論づけようとするときです。
相手の考えは、聞かないと分かりません。
セルフコーチングでできるのは「何を聞くか」を決めるところまでです。

自分で扱える範囲を決めておくことも、やり方の一部だと思っています。

セルフコーチングのノートの書き方テンプレート

そのまま書き写して使える型です。紙でもメモアプリでも構いません。

書くこと目安
日付とテーマ今日扱うことを1つ1行
事実実際に起きたこと2〜3行
気持ちそのとき感じたこと。ことばは短くてよい1〜2行
望む状態終わったときの絵。完了形で1〜2行
選択肢思いつくだけ。実行できなくてよい3〜5行
今日の一歩1つだけ。いつ、どこでも書く1行

書きにくいのは、たいてい「気持ち」の欄です。
ことばが出てこないときは、感情の名前を並べたものを見ながら選ぶほうが早く進みます。価値観のことば208語の一覧は、自分が何に反応しているかを言い当てるときにも使えます。

セルフコーチングの効果を確かめる4つの目印

効果は、やる気や気分では測りません。次の4つのうち、いくつ増えたかで見ます。

  • 決めるまでが短くなった:同じような場面で迷う時間が減った
  • 抱え込む感覚が弱まった:頭の中でぐるぐるする時間が減った
  • 自分を必要以上に責めなくなった:うまくいかない日の立ち直りが早い
  • 次にやることが自分で言える:人に聞かなくても一歩が出せる

2週間で全部が動くことはありません。
1つでも動いていれば、続けてよいサインだと考えてください。

逆に、1か月続けて4つとも動かないなら、扱うテーマか質問の量を変えるタイミングです。
自分の判断の基準そのものが揺れている感覚があるなら、自分軸のつくり方5ステップを先に読むと順番が整います。

セルフコーチングのやり方に関するよくある質問

セルフコーチングは、頭の中で考えるだけでもいいですか

書くことをおすすめします。頭の中だけだと、同じ考えを何度もくり返しやすいからです。書き出すと、考えたことが目に見える形で残り、後から読み返せます。

1回にどのくらい時間をかければいいですか

15分が目安です。慣れたら5分でも回ります。長くやるほど良いというものではなく、30分を超えると考えが堂々めぐりになりやすくなります。

質問を自分で考えるのが難しいです

この記事の質問30から、まず3つだけ選んで固定してください。毎回同じ質問で構いません。同じ問いをくり返すほうが、答えの変化に気づけます。

セルフコーチングとジャーナリングは違いますか

目的が違います。ジャーナリングは思ったことをそのまま書き出す方法で、整理する前の材料を出すのに向いています。セルフコーチングは、質問と行動決定がセットになっている点が違います。書き出したあとに「で、どうするか」まで進むのがセルフコーチングです。

コーチをつけずに、セルフコーチングだけで進められますか

日々の整理と実行は、セルフコーチングだけで十分に進みます。ただ、自分では気づけない前提を扱うときは人の力が要ります。半年に1回でも、人に話す機会を混ぜると進み方が変わります。

やっているうちに落ち込んでしまいます

問いの向きが「なぜできないのか」に寄っている可能性が高いです。「どうすればできるか」「今日できたことは何か」に置きかえてください。それでも落ち込みが続くときは、いったん止めて休むほうが先です。

セルフコーチングをもっと深める関連記事

セルフコーチングは、今日の15分から始まる

セルフコーチングのやり方をまとめると、次の1行になります。
テーマを1つ決めて、現在地と望む状態を書き、選択肢を出して、今日の一歩を決める。

紙を1枚出して、いま気になっていることを1つだけ書いてみてください。5分で構いません。

うまく書けなくても大丈夫です。
書けなかったという事実も、次に何を変えればいいかを教えてくれる材料になります。

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