文:鶴田 洋(つるた ひろし)/Gallup認定ストレングスコーチ
「インサイドセールスを立ち上げてほしい」と言われて、何から手をつければよいか分からなくなったことはないでしょうか。
テレアポと何が違うのか、フィールドセールスとどう役割を分けるのか、社内で説明を求められても、うまく言葉にできないことがあります。
もし立ち上げの担当になった方や、少人数の営業組織で分業を考えている方、テレアポとの違いを社内で説明する必要がある方であれば、最後まで読んでいただく価値があると思います。
この記事では、インサイドセールスとフィールドセールス・テレアポとの違いを、担当する仕事と引き継ぐ基準から整理します。
立ち上げの6ステップ、フローの書き方、KPIの決め方を順番に見ていきます。他社の数値と比較するときは、対象や集計の条件をそろえて読む方法も確認します。

インサイドセールスとは 訪問しない営業の役割

インサイドセールスとは、訪問せずに、電話やオンラインで案件を進める役割のことです。
インサイドセールスは会いに行かずに案件を進める役割
見込み客に電話やメール、オンライン会議で接点を持ち、商談として成立する状態まで進める役割です。
訪問しないことは手段であって、目的ではありません。
案件を前に進められるのであれば、電話でもチャットでも構いません。
自社で担う仕事を具体的にする
インサイドセールスが担当する範囲は、会社ごとに異なります。最初の接点づくり、状況の確認、継続的な連絡、商談担当者への引き継ぎのうち、どこまでを担うかを決めます。呼び方だけで仕事を分けず、次の担当者が動くために何を渡すかまで具体化します。
区分が無いことは悪いことではない
区分が無いことは、制度として認められていないという意味ではありません。
「インサイドセールス」は、公的な制度上の言葉ではなく、会社が仕事の分け方につけた呼び名だと考えると、扱いやすくなります。
呼び名が先に決まっていなくても、何をする役割かを決めれば、そのまま運用できます。
「内勤営業」と呼ばれてきたものとの関係
似た働き方は、以前から「内勤営業」と呼ばれてきました。
呼び方が変わっただけで、電話や資料を使って案件を進めるという中身自体は、大きくは変わっていません。
何をする役割なのかは会社ごとに決めてよい
区分が制度で決まっていない以上、何をする役割にするかは、会社ごとに決めてよい部分です。
先に呼び方を決めるより、何を渡す役割にするかを決めるほうが、あとの設計がしやすくなります。
インサイドセールスとフィールドセールスの違い

インサイドセールスとフィールドセールスを分けるときは、働く場所だけでなく、担当する判断と引き継ぐ条件を決めます。
ここでは、初期の相談や情報確認を担当する役割と、具体的な提案や契約に向けた調整を担当する役割を分けて考えます。
相手が次に検討できる条件をそろえる
関心のあるテーマ、現在の課題、検討の時期、関わる人を、分かる範囲で確認します。
決まっていない点を無理に埋めず、次の担当者が何を聞けばよいかまで残します。
商談の日程が取れたことだけを、提案の準備が整ったことと同じ扱いにしません。
引き継ぐ範囲を言葉にする
誰がどこまで確認し、どの状態になれば次の担当に渡すかを決めます。
企業や商材によって役割の置き方は異なるため、名称だけで担当を決めないようにします。
小さな組織では同じ人が両方を担っていても、作業の段階を分けて記録できます。
インサイドセールスとテレアポの違い

インサイドセールスとテレアポを比べるときは、電話を使うかどうかより、その接点で何を確認するかに注目します。
アポイントの獲得を中心にする業務もあれば、情報提供や課題の確認を続けながら、次の接点を選ぶ業務もあります。
予定を取った後まで設計する
面談の日程を決める場合は、参加する目的と扱う話題を相手と合わせます。
説明することが決まっていないまま、予定だけを引き継がないようにします。
面談をまだ希望しない相手には、役立つ情報を送る、検討時期を聞く、今後の連絡を控えるなど、状況に合わせた対応があります。
相手の希望と、次に連絡してよい条件を記録します。
台本の通りにアポイントへ進めることだけを成果にせず、自社でどこまでの役割を担うかを決めます。
インサイドセールスの電話で先に共有すること

電話をかける前に、相手との関係、今回の用件、連絡してよい時間帯を確認します。
冒頭では会社名と担当者名、連絡した目的を短く伝え、今話せるかを聞きます。
相手の時間を確かめることを、台本の最初の手順に入れておきます。
断られた内容を担当者間で共有する
今は時間がないのか、今回の提案を望まないのか、今後の連絡を望まないのかを混ぜて記録しません。
相手が示した範囲をもとに、次の連絡の可否を管理します。
別の担当者から同じ用件で連絡を重ねないため、共有先を決めます。
取引の種類に応じたルールを確認する
電話勧誘販売に関する制度は、消費者庁の特定商取引法の案内で確認できます。
対象となる取引や具体的な運用は、自社の法務・管理担当者に確認します。
事業者向けという理由だけで、すべての連絡を同じ扱いにしないようにします。
インサイドセールスのメールで連絡先の扱いを決める

メールの送信先を増やす前に、アドレスを受け取った経緯、送る目的、相手の希望を記録します。
公開されている連絡先を見つけたことだけで、自社の配信リストへ一律に追加しないようにします。
広告宣伝メールの原則と例外、表示や停止への対応は、消費者庁の特定電子メール法の案内で確認できます。
送信を止めてほしいという連絡は、共有の管理先へ反映します。
個人のメールボックスにだけ残すと、別の担当者が気付かず送る原因になります。
送信対象に戻す条件も、管理担当者が確認できる形で決めます。
文面では、相手に連絡した理由、役立つと考えた情報、次に確認したいことを短く書きます。
具体的な例は、休眠顧客へのメールの書き方も参考にできます。
インサイドセールスの立ち上げ 6ステップ

立ち上げは、区分を整える作業ではなく、6つのことを順番に決める作業です。
STEP1 何を渡す役割なのかを1文で決める
インサイドセールスが何をして、どこまで進めたら終わりなのかを、1文で書き出します。
ここがあいまいなままだと、あとの5つのステップも決まりません。
STEP2 引き継ぐ相手と引き継ぐ基準を決める
誰に、何が揃った状態で渡すのかを、先に決めます。
「興味がありそう」のような感覚ではなく、具体的な条件で書きます。
STEP3 名簿をどこから作るかを決める
既存顧客、過去の問い合わせ、展示会の名刺などを候補にする場合も、取得した経緯、利用目的、相手の希望、連絡を止めた記録を確認して対象を選びます。
営業リスト作成をAIでやる5手順も、名簿づくりの参考にしてください。
外部の名簿を使う場合は、入手方法を確認したうえで進めます。
STEP4 話す内容の骨をつくる
最初から完成した台本を目指す必要はありません。
聞かれることが多い質問への答え方だけ、先に決めておきます。
STEP5 記録の残し方を決める
誰が、いつ、何を話したかを、どこに残すかを決めます。
記録がないと、次のステップの「基準を直す」ができません。
STEP6 1ヶ月動かして基準を直す
最初に決めた基準は、たいてい実態と少しずれています。
1ヶ月動かしてから、引き継ぐ基準を1度だけ見直します。
人を増やす前に決めておくこと
6つのステップが回るようになってから、人を増やすかどうかを考えます。
基準が決まらないまま人を増やすと、渡し方のばらつきも一緒に増えます。
インサイドセールスのフローを1枚で書けるようにする

フローは、4つのブロックに分けると1枚で書けます。
入口(どこから名前が入ってくるか)
問い合わせ、展示会、紹介など、名前が入ってくる経路を書き出します。
経路が複数あるなら、それぞれ別のブロックとして扱います。
判断(誰にいつどう連絡するか)
入ってきた名前に、誰が、いつまでに、どの手段で連絡するかを決めます。
ここを決めておかないと、対応が担当者ごとにばらつきます。
引き継ぎ(何が揃ったら渡すか)
STEP2で決めた基準を、フロー図の中にもそのまま書き込みます。
基準が図の中に書かれていれば、担当者が変わっても迷いません。
戻し(進まなかった案件をどこへ返すか)
引き継いだ案件が進まなかったとき、どこへ戻すかも決めておきます。
戻し先が無いと、進まなかった案件がそのまま消えてしまいます。
商談の流れ6段階も、引き継いだ後の流れとして確認しておくと、フロー全体がつながります。
フローが書けないとKPIも決まらない
フローの中のどこで数を数えるかが決まらないと、KPIも決められません。
1枚のフローを先に作ることが、次の章のKPI設計の前提になります。
インサイドセールスのKPIを自社で決める

KPIは、他社の平均を探すところからではなく、自社の前月の数字と比べるところから決めます。
KPIは集計の定義をそろえる
架電数、接続率、商談化率、SQL転換率は、何を数えるかを決めて記録します。
見かける数字の多くは、ツールを提供する会社が自社の顧客データをもとに公表しているものです。
まず自社の対象・期間・分母を決め、同じ条件で変化を確認します。
ベンダーの自社調査を業界平均として扱わない
自社調査が悪いわけではありませんが、対象企業の業種や規模が自社と同じとは限りません。
数字だけを借りて基準にすると、自社の実態と合わないことがあります。
先に決めるのはKPIではなく「引き継ぐ基準」
KPIより先に、STEP2で決めた「何が揃ったら渡すか」という基準を固めます。
基準が固まってから、その基準を満たした件数を数えれば、それがそのままKPIになります。
数えるものを3つに絞る
数える指標を増やしすぎると、どれを見ればよいか分からなくなります。
連絡した件数、引き継いだ件数、引き継いだ後に進んだ件数の3つから始めると扱いやすくなります。
他社の数字ではなく自社の前月と比べる
先月より件数が増えたか減ったかを見るほうが、他社の平均と比べるより実態に近い判断ができます。
自社の前月と比べる場合も、対象、商材、流入経路、担当者の体制、集計方法に変化がないかを確認します。
数字が動かないときに見る場所
数字が動かないときは、フロー図のどのブロックで止まっているかを先に確認します。
指標そのものを変える前に、止まっている場所を特定するほうが早く直せます。
インサイドセールスのトークスクリプトの作り方

台本は、話す順番を覚えるためのものではなく、答え方を決めておくためのものです。
台本は「話す順番」ではなく「答え方」を書く
順番どおりに話そうとすると、相手の反応に合わせられなくなります。
先に決めておくのは、よく聞かれる質問にどう答えるかという答え方の部分です。
冒頭で名前と用件を伝える
事業者名、勧誘者の氏名、商品・役務の種類、勧誘のための電話であることの4つを、冒頭で伝えます。
相手が何の連絡かを判断できるよう、台本の冒頭で短く伝えます。
相手の質問にまず短く正面から答える
聞かれたことに、まず短く正面から答えます。
答えを出し惜しみして質問で返すと、相手の不信感につながります。
裏にある用事を仮説の形で1つだけ確かめる
答えたあとに、相手の質問の裏にある意図を、仮説の形で1つだけ確かめます。
外れる余地を残した聞き方にすることで、相手が違うと言いやすくなります。
分からないことはその場で分からないと言う
その場で答えられないことは、分からないと正直に伝えます。
推測で答えると、あとで食い違いが起きたときに、信頼を落とします。
台本どおりに読ませない
裸の質問返し、確認の連発とWhyの連打、二択で詰める聞き方、相手の言葉を一般論に置き換えることの4つは避けます。
1人ロープレをAIで練習する無料ツールを使うと、台本どおりに読まない練習を、1人でも重ねられます。
インサイドセールスのコツ 5つ

台本ができたあとの実践では、次の5つを意識します。
コツ1 二択で詰めない
「AとBのどちらですか」と詰めると、相手は答えやすいほうを選ぶだけになりがちです。
開いた聞き方に変えるだけで、得られる答えの幅が広がります。
コツ2 相手の言ったことばをそのまま使う
相手が使った言葉を、こちらの言葉に置き換えずにそのまま使います。
言い換えると、相手は「分かってもらえていない」と感じることがあります。
コツ3 一度の連絡で聞くことを1つに絞る
一度に何個も質問すると、相手の負担が増えます。
聞くことを1つに絞ると、答えてもらえる確率が上がります。
コツ4 断られた理由をそのまま記録する
断られたときほど、理由をそのまま記録に残します。
理由を丸めて記録すると、あとで傾向を見返せなくなります。
コツ5 進まない案件を消さずに残す
進まなくなった案件を消してしまうと、あとから振り返る材料が無くなります。
進まなかった理由も含めて残しておくと、次のトークスクリプトの材料になります。
インサイドセールスが立ち上がらない4つの理由

多くの場合、原因は担当者の力不足ではなく、決め方が言葉になっていないことです。
理由1 引き継ぐ基準が言葉になっていない
「温度感が高くなったら渡す」のような感覚的な基準では、担当者によって渡すタイミングがずれます。
何が揃ったら渡すかを、具体的な条件で書き出しておく必要があります。
理由2 決める人に話が届いていない
担当者とやり取りが続いていても、実際に決める人まで話が届いていないことがあります。
決裁者を見つける3つの聞き方も、あわせて確認してください。
決める人が誰かを早い段階で確かめておくと、案件が止まりにくくなります。
理由3 資料が相手の社内で説明できる形になっていない
担当者は、社内の別の人に説明するために資料を使います。
説明する側の言葉で作られていない資料は、社内で止まってしまいます。
理由4 KPIを他社から借りている
他社の平均値を基準にすると、自社の実態と合わないまま数字だけが独り歩きします。
KPIは、自社の前月の数字と比べることから決め直します。
インサイドセールスは人を増やさずに商談を増やせるか

人を増やさなくても、会話の回数を増やす方法はあります。
会話の回数を増やすには人か時間が要る
架電もメールも、対応できる時間や人員には限りがあります。必要な作業や対応の難しさによって、扱える件数は変わります。
人を増やさずに件数を伸ばそうとすると、どこかで無理が出ます。
件数を追う前に、そもそも件数を増やす必要があるのかを考える余地もあります。
資料が代わりに答えると会話の回数が減る
「きける資料」は、資料の内容をもとに質問に応じるAIチャットです。資料で確認できない事項は、人が追加で確認する前提で運用します。
担当者が同じ質問に何度も答える代わりに、資料の側が先に答えます。
URLを送るだけで話が始まるため、担当者が動く前に、相手の側で疑問が片づいていることもあります。
会話の回数を増やす代わりに、資料が先に答えるという考え方に興味があれば、きける資料のページをのぞいてみてください。
答えられなかった質問が次の台本の材料になる
質問の履歴やダッシュボードを確認し、よく聞かれる点や答えられなかった質問を、説明を見直す材料にできます。
答えられなかったという記録だけで、相手の納得度や離脱理由までは分かりません。追加の確認が必要な点として扱い、実際の返答や商談の経緯と合わせて検討します。
答えられなかった質問は、そのまま次のトークスクリプトの材料になります。
インサイドセールスについてよくある質問

Q. インサイドセールスとテレアポは結局どう違うのですか?
実務としては「会う約束を取る」か「案件を進める」かという目的の違いです。
テレアポはアポイントの獲得を中心に置く呼び方ですが、インサイドセールスが電話でアポイントを取る場合もあります。どこまで担当するかは会社ごとに決めます。
法令の適用は呼び方だけで決まらず、実際の取引と連絡の内容に応じて別に確認します。
Q. 何人から始めればいいですか?
必要な担当人数は、対象数、対応する作業、既存の体制から考えます。
1人で始めて、引き継ぐ基準を先に固める進め方もできます。
人数よりも、誰が何を決めるかを先に決めるほうが、あとから増やしやすくなります。
Q. KPIは何%に置けばいいですか?
架電数や接続率、商談化率の目標は、対象や商材に加えて、集計の条件をそろえて検討します。
見かける数字の多くは、ベンダー各社の自社調査です。
自社の前月の数字と比べるところから始めるほうが、実態に近い基準になります。
Q. 名簿を買ってもいいですか?
名簿の入手方法は、個人情報の扱いに関わるため、社内の法務担当者や専門家に確認したうえで判断してください。
この記事では、名簿の入手方法そのものについては扱っていません。
Q. インサイドセールスという名前を社内で使う必要はありますか?
使う必要はありません。
公的な制度の言葉ではないため、「内勤営業」など、社内で通じる呼び方のままでも運用できます。
呼び方より、引き継ぐ基準が言葉になっているかのほうが重要です。
インサイドセールスは「区分」ではなく「決め方」で立ち上げる(まとめ)

インサイドセールスという名前の元になっているのは、公的な制度ではなく、会社ごとの仕事の分け方です。
今日引き継ぐ基準を1つ決める
区分そのものを整えるより先に、何が揃ったら誰に渡すかという基準を、まず1つ決めることから始められます。
基準が1つ決まれば、フローもKPIも、そこから逆算して決められます。
引き継ぐ基準と記録の方法をそろえ、実際の結果を見ながら自社の運用を調整します。
次に読む記事
立ち上げの手順を1つずつ確認したい方は、この記事の「立ち上げ6ステップ」と「フローを1枚で書けるようにする」を、順番に読み返してみてください。
会話の回数を増やさずに商談を増やす方法として、きける資料も、あわせてご覧いただければと思います。
この記事の内容について、気になった点や、実際に立ち上げてみた感想があれば、ぜひ教えてください。


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