営業リスト作成をAIでやる5手順 6270社を作って分かった限界

営業リストをAIに作らせると、数千社は本当に出てきます。
問題はその先です。出てきた行の何割が使えるのかを、測っている記事がほとんどありません。

私たちは自社の営業のために、AIとスクリプトを組み合わせて6,270社の営業リストを作りました。
この記事では、その6,270行を列ごとに数え直し、今日あらためて実在確認まで走らせた数字をそのまま出します。

もし「AIで営業リストは作れるらしいが、精度がどうなのか分からない」と止まっているなら、最後まで読んでいただく価値があると思います。
どこまでAIが埋めてくれて、どこから人の手が要るのかが、推測ではなく数字で分かります。

最終更新:2026年8月16日/記事中の数値はすべて自社リストの実測です。

目次
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営業リスト作成をAIでやるとは何をすることか

営業リスト作成をAIでやるとは、送り先の会社をゼロから発明させることではなく、すでにどこかに公開されている情報を、送れる形の表に整え直させることです。

ここを取り違えると、最初の一歩で失敗します。
「愛知県の中小製造業を300社出して」と頼んで出てきた表は、それらしく見えても、実在確認を取っていない文字列の集まりであることがあります。

AIが得意なのは集めることではなく そろえること

私たちのリストで、AIとスクリプトがいちばん力を発揮したのは、次の3つでした。

  • ばらばらな名簿ページから、会社名と公式サイトのURLを同じ形で抜き出す。
  • 各社のサイトを順に開いて、問い合わせフォームの場所を探す。
  • 同じ会社が二重に入っていないかを、ドメイン単位で突き合わせる。

逆に、公開されていない情報は出てきません。
出てきたときは、たいてい間違っています。

手作業との違いは速さではなく再現性

1社ずつ手で調べても、同じリストは作れます。
違うのは、条件を変えてもう一度やり直せるかどうかです。

抽出のルールを残しておけば、名簿を差し替えるだけで同じ品質の表がもう一度出てきます。
このやり直しの効きが、人の手集めとの本当の差でした。

営業リスト作成でAIに任せられる工程と任せられない工程

6,270社を作る過程を工程に分けると、任せられる場所と任せられない場所がはっきり分かれました。

工程 AIに任せられるか 実際に起きたこと
名簿ページから会社名とURLを抜く 任せられる 会社名は6,270行すべて、サイトURLは98.8%が埋まった
各社サイトから問い合わせ先を探す おおむね任せられる フォームURLは87.9%が埋まった。メールは6.9%しか取れなかった
重複を消す 任せられる ドメイン重複は0件まで落ちた
会社の規模や所在地で絞る 任せにくい 所在地は1.8%、従業員規模は0.0%しか埋まらなかった
送る優先順位をつける 任せられない 93.4%が同じ「中」のまま残った
送っていい相手かの判断 任せられない 法令と自社の方針の話で、精度の問題ではない

表の下半分が、この記事でいちばん伝えたいところです。
AIは行を増やす作業に強く、行を減らす作業には弱い。実際に困ったのは、増やせなかったことではなく、減らせなかったことでした。

営業リスト作成をAIでやる5つの手順

私たちが実際に踏んだ順番です。特別なことはしていません。

手順1 出どころを先に決める

AIに「探して」と言う前に、どこから取るかを決めます。
私たちは業界団体の会員名簿を出どころにしました。日本鋳造協会、情報サービス産業協会、各県の建設業協会などです。

出どころを決めると、リストの性格が決まります。団体名簿は実在性が高い代わりに、大手が混ざります。

手順2 会社名と公式サイトを抜き出す

名簿ページのHTMLから、社名とリンク先を機械的に取り出します。
ここは完全に自動化できました。ただし後述するとおり、静かな失敗が混ざります。

手順3 各社サイトから連絡先を探す

抜き出したURLを1社ずつ開き、問い合わせフォームのページを見つけます。
この工程だけで、リストが「名前の一覧」から「送れる表」に変わります。

手順4 重複と表記ゆれを消す

会社名とドメインの両方で突き合わせて、同じ会社を1行にまとめます。
社名の表記ゆれは残るので、ドメインを主キーにするのが確実でした。

手順5 送る順番を決める

最後に優先度をつけます。
そして私たちは、ここで止まりました。理由は次章の数字が示しています。

営業リスト作成のAI出力を6270社ぶん数えた結果

できあがったリストの列を、1つずつ数えました。

埋まっている行 埋まり率
会社名 6,270 100.0%
サイトURL 6,192 98.8%
問い合わせフォームURL 5,514 87.9%
メールアドレス 432 6.9%
所在地 112 1.8%
従業員規模 1 0.0%

上から3行までを見れば、AIによる営業リスト作成は成功しているように見えます。
下から3行を見ると、印象が変わります。

メールアドレスが6.9%しか取れなかったのは、AIの性能ではなく日本のB2Bサイトの作りが理由です。公開されているのはフォームであって、アドレスではありません。
「AIがメールアドレス付きのリストを作ってくれる」という前提そのものが、この国では成り立ちにくいことが分かりました。

営業リスト作成のAIが埋められなかった2つの列

所在地1.8%、従業員規模0.0%。この2つが空欄のまま残ったことが、実務では最も痛い誤算でした。

絞り込めない表は6270行でも1行と同じ

営業でリストを使うときにやりたいのは、全件に送ることではありません。
「愛知県の、従業員50人から300人の製造業に、今週100件」のように切り出すことです。

その切り出しに使う列が空欄なら、6,270行あっても順番を決められません。
実際、優先度の列は93.4%にあたる5,854行が同じ「中」のままでした。高は96行、低は209行です。

名簿から作るリストの構造的な弱点

団体名簿には、会社名とサイトURLは載っていても、規模や所在地は載っていないことが多くあります。
出どころに無い情報は、どれだけ賢いAIを使っても出てきません。出てきたら、それは推測です。

ここが企業データベースを買う判断の分かれ目になります。絞り込みの列こそが、有料データベースが本当に売っているものでした。

営業リスト作成のAIで実際に起きた5つの不具合

作業ログに残っていた不具合を、そのまま並べます。どれも事前には想像していませんでした。

会社名の欄にURLが入る

名簿の取り込みで、会社名の列にURLがそのまま入った行が発生しました。
文面に差し込むと「http://www.example.co.jp ご担当者さま」という宛名になります。

サイトのタイトルタグから社名を復元する処理を書いて、約515件を修復し、468社を復元、42社は判別できず手作業に回しました。
今日あらためて数え直すと、会社名にURLが残っている行はちょうど42行。当時の記録と一致しました。

AIが書いた文の記号が片方だけ消える

1社ごとの冒頭文をAIに書かせたところ、引用で始まる文で開きのかぎかっこだけが消えました。
23件が該当し、前後のかっこを外す処理の条件が原因でした。

送信ボタンを機械が押せない

フォームの入力まではできるのに、送信ができない会社が22社ありました。
JavaScriptで動くボタン、確認画面をはさむ2段階のフォーム、フレームの中のボタンが原因です。

判定の条件を広げて22社中17社を回収し、残る6社は特殊すぎて個別対応にしました。

成功したのか分からない行が大量に出る

送信後の完了画面が独自デザインだと、機械が成功を判定できません。
その結果「要確認」というステータスの行が積み上がりました。届いていないのではなく、届いたかを読めていない状態です。

CAPTCHAで自動化が止まる

画像認証があるフォームは自動では通せません。
現在183社が「要手動」として残っています。ここは通すべきでもないので、人が判断する場所として残しました。

営業リスト作成のAIが作った行の6.0%は今日つながらなかった

この記事を書くにあたって、精度をひとつ実際に測りました。

6,270行から150社を無作為に抜き出し、記録されているサイトURLに今日アクセスしてみました。結果は次のとおりです。

結果 社数 割合
正常に開いた 141 94.0%
アクセスを拒否された・ページが無い 5 3.3%
接続できなかった 3 2.0%
別URLへの転送が返った 1 0.7%

150社中9社、6.0%はそのままでは開けませんでした。
そのうち何社かは自動アクセスを拒否しているだけで、人が開けば見られます。とはいえ、機械で回す前提の営業では、その区別がつかないまま止まります。

リストは作った瞬間から古くなる

抜き出した150社の情報の取得日を見ると、142社が2026年6月時点のものでした。約2か月前です。
2か月で6.0%が開かなくなったとは言い切れません。作った時点で開けなかった行も混ざっているはずです。

言えるのは1つだけです。取得日を列として持っていなければ、この計算自体ができませんでした。
リストの列に「いつ確認したか」を必ず入れる。これが今回いちばん役に立った設計でした。

営業リスト作成のAIの精度を測る4つの物差し

「精度が高いリスト」という言葉は、測り方を決めない限り意味を持ちません。
私たちが実際に使えた物差しは4つでした。

物差し 測り方 自社の実測
埋まり率 列ごとに空欄でない行を数える フォームURL 87.9%/メール 6.9%
到達性 無作為抽出でURLに接続する 150社中141社が正常
重複率 ドメインと社名で突き合わせる ドメイン重複0件/同名4件
送信成功率 送信後に完了を確認できた割合 処理100件中94件が到達

4つとも、無作為抽出と数え上げでできます。特別な道具は要りません。
やっていないのは、難しいからではなく、測ろうと決めていないからでした。

営業リスト作成のAIとハルシネーションの見つけ方

AIが実在しない会社や、もっともらしい嘘の電話番号を出すことがあります。
これを人の目で全部確かめるのは、数百行を超えた時点で現実的ではなくなります。

機械で確かめられるものから確かめる

人が読む前に、機械で落とせるものを落とします。

  • URLに接続してみる。開かない行は、実在していないか、情報が古いかのどちらかです。
  • ドメインと社名の対応を見る。まったく関係ないドメインが付いている行は、生成の混線を疑います。
  • 国税庁の法人番号公表サイトで社名を照合する。公的で無料の実在確認ができる仕組みです。

出どころを持つ列だけを信じる

私たちのリストは、全行に出どころの列を持たせています。
どの名簿から来た行かが分かるので、疑わしいときに元をたどれます。

AIが生成した値と、どこかから転記した値を、同じ表の中で区別できるようにしておく。これだけで、後から検証する余地が残ります。

営業リスト作成をAIでやるときに確認する法律

リストを作る話と、送っていい相手かの話は別です。
ここは自社で判断せず、一次情報を読んでから決めることをおすすめします。

広告宣伝メールは原則として事前の同意が要る

特定電子メール法は、広告や宣伝のためのメールについて、あらかじめ同意を得た相手に送ることを原則としています。
例外として、自社の電子メールアドレスを公表している法人などへの送信が認められていますが、送信拒否の意思が示されている場合は除かれます。

送信者の氏名や名称、受信拒否の通知先の表示も求められます。
条文と解説は総務省の特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のページで確認できます。

法人の情報でも個人情報が混ざる

会社名やサイトURLそのものは個人情報ではありません。
一方で、代表者や担当者の氏名、個人名が入ったメールアドレスは、個人情報として扱う必要が出てきます。

取得の経緯と利用目的を整理しておくのが安全です。考え方は個人情報保護委員会の法令解説にまとまっています。

名簿とサイトの利用規約を読む

公開されているページでも、機械的な収集を禁じている場合があります。
出どころを決める段階で、その名簿の利用条件を確認しておくと、後から作り直さずに済みます。

営業リスト作成のAIで6270社のうち送れたのは175社だった

最後に、いちばん都合の悪い数字を出します。

6,270社のうち、実際に手をつけた行は371社。全体の5.9%です。
その内訳は、送信できたことを確認できた行が43社、送信はしたが完了を読めなかった行が132社、手作業に回した行が183社、失敗が10社でした。

つまり、相手に届いたと言えるのは175社。作った6,270社の2.8%です。

ボトルネックはリストの量ではなかった

リストを1万社に増やしても、この2.8%はほとんど改善しません。
詰まっているのは、作る工程ではなく、送る工程と、送る順番を決める工程だからです。

送信そのものの精度は上げられました。判定を作り直したことで、送信成功率は当初の19%から94%まで上がっています。
それでも全体が動かないのは、優先順位がついていないリストは1件目を選べないからです。

反応の列は今も空のまま

私たちのリストには「反応」という列があります。
返信や問い合わせがあったら書き込むための列です。この列は、いま1行も埋まっていません。

ここを空欄のままにしておくと、次のリストを何で改善すればいいのかが永久に分かりません。
そして、この空欄こそが次の章の主題です。

営業リスト作成をAIでやった結果が正しかったかを確かめる方法

ここまで、埋まり率も、到達率も、送信成功率も測ってきました。
けれど、これらは全部こちら側だけで完結する数字です。

リストが正しかったかどうかは、こちらの都合では決まりません。
決めるのは相手です。そして相手の側から返ってくる情報は、ほとんどの場合ひとつしかありません。

相手が何を聞いてきたかが唯一の答え合わせ

送った相手が何を質問してきたか。それだけが、リストと資料が合っていたかを教えてくれます。

「うちは何人から使えますか」と聞かれたなら、規模の想定が合っていたということです。
「これは何をするサービスですか」と聞かれたなら、そもそも届け先を間違えています。
何も聞かれないなら、それは最も強い答えです。関心の外にいたということになります。

返信率や開封率は、この質問の量を粗く数えているだけとも言えます。
本当に読むべきは数ではなく、質問の中身のほうです。

質問を集めるには渡し方から変える必要がある

添付ファイルで資料を送ると、相手が何ページ目で止まったかも、何を疑問に思ったかも、こちらには残りません。
質問を集めたいなら、渡し方の側を先に変えることになります。

渡し方ごとの違いは、営業資料をURLで共有する6つの方法の比較にまとめました。
リストを作る前に読んでおくと、送ったあとに何が手元に残るかを決めてから動けます。

質問が来てからのほうが本番

私たちが自分たちの数字を見て痛感したのも、送るまでではなく送ったあとの手順が空白だったことでした。
その手順は資料請求後のフォロー7段階の手順に整理しています。

次のリストは反応から作る

答え合わせが1周すると、リストの作り方そのものが変わります。
質問をくれた会社に共通する特徴が見えたら、それが次の出どころの条件になります。

AIによる営業リスト作成の精度は、作った瞬間には決まりません。返ってきた質問を読み終えたときに、はじめて分かります。

いま同じところで詰まっている方がいれば、どの列が埋まらなかったかを教えていただけるとうれしいです。
私たちの6,270行も、まだ2.8%しか答え合わせが終わっていません。

執筆:株式会社Rin 鶴田洋(Gallup認定ストレングスコーチ)/本文中の数値は自社の営業リストを2026年8月16日に実測したものです。

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