営業資料をAIで作る記事はたくさんあります。
ただ、そのほとんどが「おすすめツール10選」で終わっていて、実際に作った人の手元に何が起きたかは書かれていません。
私たちは自社の提案活動のために、AIを使って営業資料を作っています。
直近の1本は、11,775字の原稿から39ページのスライドになりました。この記事では、その過程で人が直した箇所と、実物を見るまで気づけなかった不具合を、そのまま出します。
もし「AIで営業資料を作ってみたが、どこまで信じていいのか分からない」と感じているなら、最後まで読んでいただく価値があると思います。
道具の紹介ではなく、道具を使ったあとに残る作業の話をします。
最終更新:2026年8月16日/記事中の数値はすべて自社で作った資料の実測です。
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営業資料をAIで作るとはどこまでを任せることか
営業資料をAIで作るとは、白紙から完成品が出てくることではなく、材料をこちらが用意して、並べ方と見た目をAIに任せることです。
ここを取り違えると、最初の出力を見た瞬間に落胆します。
逆に、材料さえ揃っていれば、並べ替えと体裁づくりは驚くほど速く進みます。
AIが速いのは形にする工程だけ
私たちの実感では、時間の配分はこう変わりました。
- 材料を集める工程は、まったく速くなりません。価格、実績、できないことの線引きは、こちらが調べて確定させる作業です。
- 形にする工程は劇的に速くなります。23の節を持つ原稿を、39ページのスライドに割り直す作業がその日のうちに終わります。
- 検品の工程は、むしろ増えます。出力が速い分だけ、確かめるものが増えるからです。
できないことを先に決めておく
AIは、こちらが渡していない事実も、それらしく埋めてきます。
実績の数字、導入社数、他社との比較。このあたりは、渡していなければ作られると考えておくのが安全です。
「この資料に書いていい数字はこれだけ」を先に決めてから頼む。これが最も効いた工夫でした。
営業資料のAI作成でできることとできないこと
実際にやってみて分かった線引きです。
| 工程 | AIに任せられるか | 実際に起きたこと |
|---|---|---|
| 構成を割り直す | 任せられる | 23節の原稿を39ページに割り直せた |
| 文章を整える | 任せられる | ねじれた文や主語の飛びは指摘すれば直る |
| 体裁を揃える | 任せられる | 見出し位置や余白は一括で統一できる |
| 原稿の重複に気づく | 任せにくい | 同じ内容を2章に分けて書いた箇所が、そのまま2ページになった |
| 数字の正しさを保つ | 任せられない | 税込と税別が資料の中で混ざった |
| はみ出しに気づく | 任せられない | 実物を書き出すまで、切れていることが分からなかった |
下の3行が、この記事の中心です。
上位の記事が書いている「ファクトチェックしましょう」という一文は正しいのですが、実際に確かめるべきものは、数字だけではありませんでした。
営業資料をAIで作る5つの手順
私たちが実際に踏んでいる順番です。
手順1 材料を先に固める
価格、提供できること、提供できないこと、担当者の経歴。
この4つを文章で確定させてからでないと、AIに頼んでも手戻りが増えるだけでした。
手順2 用途を宣言する
誰がその資料を使うのかを先に伝えます。
対面で人が説明するのか、送りっぱなしで読まれるのかで、作り方が変わるからです。
手順3 1ページ1メッセージで割る
原稿の節数とページ数を一致させないのが肝でした。
私たちの場合、23節が39ページになっています。1節が2ページに割れたところもあれば、丸ごと削った節もあります。
手順4 人が直す
ここが本番です。次章で具体的に並べます。
手順5 実物を書き出して検品する
画面上では問題なく見えていたものが、PDFにすると崩れます。
この工程を飛ばした資料は、必ず事故ります。私たちは実際に事故りました。
営業資料のAI作成に使う道具は3つの型に分かれる
ツールの名前を並べる前に、型で見たほうが選びやすくなります。
どの製品も、次の3つのどれかに当てはまります。
| 型 | やってくれること | 詰まりどころ |
|---|---|---|
| スライド生成型 | 文章や箇条書きを渡すと、ページに割って体裁まで作る | 体裁は整うが、割り方の判断は原稿の質に依存する |
| テンプレート型 | 既存のひな形に文言を流し込む | 自社の言い回しに寄せると、ひな形の利点が消える |
| 対話型 | 構成の相談から文章の推敲まで、やり取りしながら進める | 出力の形が毎回ぶれるので、体裁は別途整える必要がある |
私たちは、構成と文章は対話型で詰め、体裁は自社の型に流し込む形に落ち着きました。
1つの道具で全部やろうとしないほうが、手戻りが減ります。
自社の型を1つ作ると2本目から速くなる
いちばん効いたのは、道具の選択ではなく、1本目でできた体裁をそのまま次に使い回したことでした。
2本目の資料は、同じ型に材料を入れ替えるだけで44ページまで組み上がっています。
上位の記事は、どれも「はじめての1本」の作り方で終わっています。
実務で効くのは2本目からの速さで、それを決めるのは道具ではなく自社の型です。
営業資料のAI作成で人が直した箇所の実測
1本の提案スライドで、実際に手を入れた箇所を種類ごとに数えました。
同じことを2回言っている節が見つかった
原稿の第4章と第5章が、ほぼ同じ内容でした。
AIは指示どおり両方をスライドにしたので、同じ話が2ページ続く資料ができあがりました。
片方を別の内容に置き換えて解決しましたが、元の原稿の重複は、AIには重複に見えません。言い回しが違えば、別の論点として扱われます。
章の参照がすべて意味を失った
原稿にあった「第12章で述べたとおり」「後述します」といった言い回しが、スライドではそのまま残りました。
ページをめくって見る資料に、章番号への参照は成立しません。
該当箇所を「ここまでご覧いただいた」「次のページで」に全部書き換えました。
文章をスライドに変換するときは、毎回これが出ます。
日本語の文のねじれが5種類出た
直した文の傾向を分類すると、次の5つに集約されました。
- 「〜が難しい場合」型のねじれ。「予算が難しい」は「予算の確保が難しい」に直します。
- 主語の飛び。1文の途中で主語が入れ替わっている箇所です。
- 2文を無理につないだ文。「〜のことで」で接続されています。
- 一人称の混在。「私たち」と「弊社」が同じ資料に混ざります。
- リストから浮いた箇条書き。1項目だけが箇条書きの外に置かれていました。
税込と税別が同じ資料の中で混ざった
私たちの商品は、月額料金が税込表示、研修費が税別表示です。
AIはこの区別を知らないので、同じページに並べたときに表記が揃ってしまいました。
金額を書く前に、一次情報のページを実際に開いて確認する。これを手順に入れて再発を止めました。
営業資料のAI作成で日本語スライドが崩れた3つの実例
上位の記事で見かけない話なので、実物で起きたことを書きます。
はみ出した文字が静かに消える
スライドの枠から溢れた内容が、警告もなく切り取られていました。
画面では気づけません。PDFに書き出して全ページを機械で測ったところ、39ページ中5ページが下端の帯に食い込んでおり、最大で46ピクセルはみ出していました。
見出しの最後の1文字だけが2行目に落ちる
日本語の見出しは、幅の計算がぎりぎりで当たります。
私たちの版では、文字サイズ36ピクセルのとき全角29文字までが1行に収まり、30文字目から折り返しました。「〜します」の「す」だけが次の行に落ちる形です。
改行タグを入れるより、その見出しだけ文字サイズを2〜3ポイント下げるほうが崩れませんでした。
A4の資料は4ページとも末尾が欠けていた
別に作ったA4の提案書では、ページ高さを固定していたために、4ページすべてで末尾の数行が消えていました。
文字を小さくして詰めるのではなく、4ページを5ページに割り直して解決しています。
AIで作った資料は、必ず溢れる前提で作る。これが3件から得た結論です。
営業資料をAIで作ったあとの検品項目7つ
3件の事故から作った、実物を書き出したあとに必ず見る項目です。
- 全ページを書き出して、枠から溢れている箇所が無いか。画面ではなくPDFで見ます。
- 見出しが意図しない位置で折り返していないか。最後の1文字だけ落ちる形が出ます。
- 同じ内容のページが2枚無いか。原稿の重複はそのまま持ち越されます。
- 章や節への参照が残っていないか。「後述します」はスライドでは成立しません。
- 金額の税区分が資料全体で揃っているか。税込と税別が混ざります。
- 渡していない数字が入っていないか。実績値と比較は特に確認します。
- スマートフォンで開いて読めるか。送った先の多くはその画面で最初に開きます。
7項目のうち5つは、書き出した実物を見ないと判定できません。
検品を画面上で済ませないことが、いちばん確実な事故対策でした。
営業資料のAI作成で用途を先に決めるべき理由
私たちが最も驚いたのは、用途によって良い資料の作法が反転することでした。
人が説明する資料と AIが読む資料は逆になる
対面で人が話す資料では、1ページ1メッセージ、文字は最小限が定石です。
ところが、その資料をAIに読ませて質問に答えさせる使い方をすると、この定石が裏目に出ます。
- 文字を減らすと、AIが答えられる材料が減ります。情報量は厚いほうが有利になります。
- 図で示したことは、必ず文章でも書きます。AIは図の意図を読み取れません。
- 数字は単独で読める形にします。「約1,500円」ではなく「1名あたり月額1,500円(税込)」と書きます。
- よくある質問と、向いている相手の条件を厚くします。そのまま回答の材料になります。
作法は用途で決まる
つまり「良い営業資料の作り方」は1つではありません。
どちらの用途で使うかを決めないままAIに頼むと、どちらにも中途半端な資料が出てきます。
頼む前に用途を1行で宣言する。これだけで出力の質が変わりました。
営業資料のAI作成で情報漏えいと数字の捏造を防ぐ
この2つは上位の記事でも扱われている論点なので、実務で効いたことだけ書きます。
渡す情報を減らすのではなく 渡す情報を決める
価格表や実績をAIに渡さなければ、漏えいのリスクは下がります。
その代わり、AIは足りない部分を推測で埋めます。伏せることと捏造されることは、裏表の関係にあります。
私たちは、資料に載せてよい事実を一覧にして渡し、それ以外は書かないよう指定する方法に落ち着きました。
捏造されやすいのは実績と比較
実際に注意が要ると感じたのは、次の3種類です。
- 導入社数や継続率などの実績値。渡していない数字が入っていたら、必ず消します。
- 競合との比較。他社の仕様を確かめずに書くと、事実誤認のまま相手に届きます。
- グラフの数値。見た目は整っていても、軸や凡例が中身と合わないことがあります。
私たちの資料では、実績が乏しい部分は隠さず「現在地」として1ページ取って正直に書きました。
結果として、そのページが商談で最も反応のあるページになっています。
営業資料をAIで作る費用の考え方
金額そのものは各ツールの公式ページで確認していただくとして、判断の枠だけ書きます。
| 費用の種類 | 見落としやすい点 |
|---|---|
| ツールの月額 | 書き出し機能が上位プラン限定のことがある |
| 枚数やファイルの上限 | 無料枠は試作までで、実務の分量で足りなくなる |
| 商用利用の可否 | 生成された素材を顧客へ渡してよいかは規約で分かれる |
| 検品にかかる人の時間 | ここが最大の費用。実物の確認は自動化できない |
費用の比較でいちばん抜けやすいのが最後の行です。
出力が速いほど検品の量が増えるので、道具代よりも人の時間のほうが先に効いてきます。
営業資料をAIで作ったあと それが正しかったかを確かめる方法
ここまで、ページ数も、はみ出しも、直した箇所も測ってきました。
ただし、これらは全部こちら側だけで完結する検品です。
資料が正しかったかどうかは、こちらの都合では決まりません。
決めるのは受け取った相手です。そして相手の側から返ってくる情報は、ほとんどの場合ひとつしかありません。
相手が何を聞いてきたかが唯一の答え合わせ
送った相手が何を質問してきたか。それだけが、資料が伝わったかを教えてくれます。
料金のページを見て「これは何名からですか」と聞かれたなら、料金の説明はおおむね届いています。
逆に「結局これは何をするものですか」と聞かれたなら、39ページのどこにも答えが無かったということです。
何も聞かれないまま終わったなら、それが最も強い答えになります。
質問は資料のどこが弱いかを名指ししてくれる
質問には、必ず出どころのページがあります。
同じ質問が3回続いたら、そのページの書き方が原因だと考えて間違いありません。
私たちが原稿の重複や税込表記の混在に気づけたのも、読んだ人からの指摘がきっかけでした。
作り手は自分の資料の穴を自分では見つけられません。これは何度やっても同じでした。
質問を残すには渡し方を変える必要がある
PDFを添付して送ると、相手が何ページ目で止まったのかも、何を疑問に思ったのかも、こちらには一切残りません。
質問を集めたいなら、資料の中身より先に渡し方を決めることになります。
渡し方ごとに何が手元に残るかは、営業資料をURLで共有する6つの方法の比較にまとめました。
AIで資料を作る前に読んでおくと、作ったあとの答え合わせまで含めて設計できます。
質問が来てからの手順を決めておく
質問が来たあと、いつ何を返すかを決めていないと、せっかくの答え合わせが流れます。
その手順は資料請求後のフォロー7段階の手順に整理しています。
次の資料は質問から作る
答え合わせが1周すると、次に作る資料の構成が変わります。
実際に聞かれた質問を先回りして入れたページは、次の商談で説明が要らなくなります。
営業資料のAI作成でいちばん効いたのは、生成の速さではなく、相手の質問を次の版に戻す往復でした。
同じようにAIで営業資料を作っている方がいれば、どこを人が直しているかを教えていただけるとうれしいです。
私たちの39ページも、まだ何度も直っています。
執筆:株式会社Rin 鶴田洋(Gallup認定ストレングスコーチ)/本文中の数値は自社で作成した提案資料を2026年8月16日に実測したものです。

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