心を閉ざした部下のサイン11個|辞める前の接し方|Rin

心を閉ざした部下のサインと接し方

部下の雑談が減った。提案が出てこなくなった。1on1で「大丈夫です」しか返ってこない。

そんな変化に気づいて、この記事を開いた方もいるのではないでしょうか。

もし、部下が急に静かになったと感じている、あるいは辞めそうな気配があるのにどう声をかけていいか分からずにいるなら、最後まで読んでいただく価値があると思います。

厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、1年間の離職率は14.2%でした(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)。男女別では男性12.6%、女性16.0%です。離職者数は7,195.3千人にのぼり、決して一部の会社だけの話ではありません。

この記事では、心を閉ざした部下に出るサインの見分け方から、やってはいけない接し方、距離を戻すための具体的なステップまでを、公的統計と民間調査の数字を根拠にして整理しました。推測や一般論ではなく、実際に取得した数字だけを使っています。

目次
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心を閉ざした部下とは|「静かに辞める」までの3段階

心を閉ざした部下は、ある日突然そうなるわけではありません。声をかけるのをやめ、必要なことだけを話し、最後には相談ではなく報告だけが残る。この3段階を順に踏んでいきます。

段階1=違和感を伝えるのをやめる

最初に消えるのは、小さな違和感を口にする行為です。「これ、ちょっとおかしくないですか」という一言が出なくなります。本人の中では、まだ関係を保とうとする気持ちが残っている段階です。

段階2=必要なことしか話さなくなる

次に、業務連絡以外の言葉が減っていきます。雑談も相談も減り、会話は用件だけになります。この段階になると、周囲は「最近静かだな」と気づき始めますが、原因までは見えていないことが多いです。

段階3=相談ではなく報告に変わる(この時点で決まっている)

最後の段階では、部下からの言葉は「相談」ではなく「報告」に変わります。すでに答えを自分の中で出したうえで、結果だけを伝えてくる状態です。この段階に入ってから引き止めようとしても、決断そのものはすでに終わっていることが少なくありません。

心を閉ざした部下に出るサイン11個【チェックリスト】

サインは「会話」「行動」「仕事」の3つの場面に分けて見ると、見落としにくくなります。

会話に出るサイン4つ(雑談が消える/返事が短くなる/意見や提案が止まる/報連相が形式的になる)

会話の変化は、もっとも気づきやすいサインです。

  • 雑談が消える。挨拶以外の言葉を交わさなくなる
  • 返事が短くなる。「はい」「大丈夫です」で終わる会話が増える
  • 意見や提案が止まる。会議で発言しなくなる
  • 報連相が形式的になる。事実だけを伝え、感想や意図が入らなくなる

どれも一つひとつは小さな変化ですが、重なって初めて意味を持ちます。

行動に出るサイン4つ(有休の取り方が変わる/飲み会や雑談の場を避ける/離席や不在が増える/服装や身だしなみが変わる)

行動面の変化は、会話よりも見えにくい分、見逃されがちです。

  • 有休の取り方が変わる。突発的な取得や、まとまった休みが増える
  • 飲み会や雑談の場を避ける。理由をつけて参加しなくなる
  • 離席や不在が増える。席にいる時間そのものが減る
  • 服装や身だしなみが変わる。それまでとの落差が大きいほど注意が必要

これらは体調や私生活の変化でも起こりうるため、行動だけで断定はできません。ただし、会話のサインと重なったときは、注意して見るべき変化です。

仕事に出るサイン3つ(引き継ぎ資料が急に整う/新しい仕事を引き受けなくなる/ミスへの反応が薄くなる)

仕事の仕方に出るサインは、もっとも見落とされやすいものです。

  • 引き継ぎ資料が急に整う。それまで放置していた資料を急に整備し始める
  • 新しい仕事を引き受けなくなる。今後の役割を広げる話に反応が薄くなる
  • ミスへの反応が薄くなる。それまで気にしていたことに動揺しなくなる

これらは一見すると「仕事ができるようになった」ように見えることもあります。だからこそ、変化のタイミングを見ることが大切です。

サインが「1つ」では判断できない理由

サインが1つだけであれば、体調や家庭の事情など、別の理由である可能性のほうが高いです。判断すべきは、複数のサインが同じ時期に重なって出てきているかどうかです。会話・行動・仕事の3つの場面のうち、2つ以上で変化が見えたときに、初めて注意を向けるタイミングだと考えてください。

急にやる気がなくなった部下に、実際に起きていること

「やる気がなくなった」ように見える部下の多くは、やる気そのものではなく、期待が切れています。

「やる気」ではなく「期待」が切れている

やる気は、成果に対する期待があるからこそ生まれます。何を言っても状況が変わらないと感じたとき、人はやる気を出す前に、期待すること自体をやめます。外から見ると「やる気がない」ように映りますが、本人の中では「もう期待していない」だけのことが多いです。

言っても変わらなかった経験が積み重なっている

一度や二度の失望で、人は簡単には諦めません。何度も意見を伝え、そのたびに状況が変わらなかった経験が積み重なったときに、期待を手放します。上司から見える「最近急に」は、本人にとっては積み重ねの結果であることがほとんどです。

評価への影響を恐れて言えなくなる

意見を言ったことで評価が下がると感じた経験があると、その後は言葉を選ぶようになります。安全に振る舞うことを優先すると、結果として発言そのものが減っていきます。本人にとっては、これは「合理的な選択」として起きている変化です。

ストレスの正体は「対人関係」だけではない(§2のデータを使う)

厚生労働省の令和6年労働安全衛生調査(実態調査)では、現在の仕事や職業生活に強いストレスを感じている労働者は68.3%でした(厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査」)。令和5年調査では82.7%だったため、数字だけを見ると下がっているように見えますが、令和6年は設問の形式が変わっているため、単純に比較して「ストレスが減った」と読むことはできません。

ストレスの内容として多いのは、「仕事の量」43.2%、「仕事の失敗、責任の発生等」36.2%、「仕事の質」26.4%です。「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」は26.1%(令和5年調査は29.6%)で、属性別では女性29.2%、20〜29歳30.8%が高くなっています。つまり、やる気の低下やストレスの背景は人間関係だけでなく、仕事の量や責任の重さも大きく関わっているということです。

もし1on1の場で部下が話さなくなっていると感じるなら、1on1で部下が話さないときの対処法もあわせて確認してみてください。

本当に辞める人の特徴|心を閉ざした部下との共通点

本当に辞める人は、辞めると言葉にする前に、すでに気持ちの整理を終えています。

「辞めたい」と口に出す人は、まだ引き止めてほしい

「辞めたい」と直接口にする人は、実は引き止められることを期待している場合が多いです。言葉にできるうちは、まだ関係を続けたいという気持ちが残っています。本当に危ういのは、言葉にする段階を過ぎてしまった人です。

本当に辞める人は、話し合いの前に手続きが終わっている

本当に辞める決意をした人は、上司に話す前に、転職先や退職の段取りを固めていることが多いです。退職の報告先について、直属の上司に伝えるという回答は約7割にのぼります(エン・ジャパン「退職理由のホンネと建前[2022年版]」)。話し合いの場は、決断を伝えるための場であって、決断を左右する場ではなくなっているのです。

10人中7人が本当の理由を会社に伝えていない(§2のデータを使う)

エン・ジャパンの「退職理由のホンネと建前[2022年版]」(有効回答610人)では、会社に伝えなかった「ホンネの退職理由」があった人が70%、つまり10人中7人にのぼります(エン・ジャパン「退職理由のホンネと建前」)。

伝えなかったホンネの退職理由の1位は「人間関係が悪かった」で約3割、2位は「給与が低かった」、3位は「社風や風土が合わなかった」でした。ホンネを話せなかった理由の1位は「話しても理解してもらえないと思ったから」で約3割、2位は「円満退社したかったから」で2割強です。数字が示しているのは、辞める理由を隠すのは特別なことではなく、むしろ多数派だということです。

会社に伝えられる理由が「体調」「家庭の事情」に偏る理由

会社に伝えた退職理由として最も多かったのは「体調を壊した」、次いで「結婚、家庭の事情」でした(エン・ジャパン「退職理由のホンネと建前」)。厚生労働省の雇用動向調査でも、転職入職者が前職を辞めた理由のうち、分類できない「その他の個人的理由」が男性20.2%、女性24.3%と、集計上もっとも大きな塊になっています(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」概況)。

「体調」や「家庭の事情」は、角が立たず、追及されにくい理由です。本当の理由が言いにくいとき、人は角の立たない理由を選ぶ、ということが2つの調査からうかがえます。

優秀な人ほど見切りが早い|心を閉ざす前に離れていく人たち

優秀な人ほど、心を閉ざす手前で会社を離れていきます。

選択肢が多いぶん、我慢のコストが高くつく

優秀な人材は、他の会社や仕事という選択肢を持っていることが多いです。選択肢がある分、今の環境に不満があるときの「我慢」のコストは高くつきます。我慢する理由が薄くなれば、離れる決断も早くなります。

期待値が高いぶん、失望が早く来る

優秀な人ほど、組織や上司に対する期待値も高い傾向があります。期待が高いということは、裏切られたと感じたときの落差も大きいということです。厚生労働省の調査でも、「会社の将来が不安だった」という理由は前年から男性で2.2ポイント上昇しており、男性の理由の中でもっとも伸び幅が大きい項目でした(出典=令和6年雇用動向調査の概況(厚生労働省))。

「言っても変わらない」を最初に見抜くのが優秀な人

優秀な人は、状況を分析する力にも長けています。「これ以上言っても組織は変わらない」という判断を、周囲より早く下せてしまうということです。声が小さくなったときには、すでに結論が出ていることが少なくありません。

見切りの早さは、忠誠心の低さではない

見切りが早いことを、忠誠心の低さと結びつけるのは早計です。むしろ、組織の課題を正確に把握していたからこそ、早く動けたと考えるほうが実態に近いことがあります。見切りの早さそのものではなく、見切られる前の状態に目を向けることが大切です。

エース退職が手遅れになる分かれ目|部下が黙った日から数える

エース人材の退職が「手遅れ」になるのは、告げられた日ではなく、黙り始めた日から始まっています。

告げられた時点で、決断は何か月も前に終わっている

退職の申し出は、決断そのものではなく、決断の結果を伝える行為です。本人の中では、何か月も前から静かに検討が進んでいることが珍しくありません。上司が変化に気づくのが遅れるほど、対話できる期間は短くなります。

もし退職の影響を数字で押さえておきたい場合は、社員1人が辞めたときの離職コストの計算方法もあわせてご覧ください。

慰留が効かないのは、条件の問題ではないから

給与や役職を上げる形での慰留が効かないことがあります。それは、辞める理由が条件面ではなく、期待や信頼が積み重なって崩れた結果であることが多いためです。条件を後から積み増しても、崩れた期待そのものは戻りません。

手遅れにしないために見る「黙り始めた頃」の変化

手遅れにしないために見るべきは、退職の申し出そのものではなく、その数か月前の変化です。発言が減った時期、雑談が減った時期を振り返ることで、対話できたはずのタイミングが見えてきます。このタイミングを逃さないためにも、日頃から小さな変化を観察しておくことが重要です。

辞めて欲しくない人の特徴|心を閉ざした部下の中で最初に動く人

辞めてほしくないと感じる人材ほど、心を閉ざした部下の中で最初に動き出す傾向があります。

会社の課題を一番よく知っている人が、一番早く諦める

現場の課題を正確に把握している人ほど、改善されない現実にも早く気づきます。課題を理解しているからこそ、変わらない状況への失望も早く訪れます。声を上げなくなった優秀な人材は、課題を諦めた人材でもあるということです。

「代わりがいない」がその人の負荷になっている

「あの人がいないと回らない」という状態は、本人にとって重い負荷になります。役割が集中している人ほど、休みにくく、相談しにくい立場に置かれがちです。負荷の集中は、本人が声を上げにくくなる一因にもなります。

評価されている実感と、理解されている実感は別物

評価されていることと、理解されていることは、まったく別の実感です。成果を評価されていても、悩みや事情を理解されていないと感じれば、心は離れていきます。辞めてほしくない人材にこそ、評価とは別に、理解しているという実感を届ける必要があります。

びっくり退職はなぜ起きるのか|部下の予兆は届いていなかった

びっくり退職は、予兆がなかったのではなく、予兆が受け取る側に届いていなかったために起こります。

予兆がなかったのではなく、受け取る側に届いていない

本人にとっては、心を閉ざしていく過程そのものが予兆でした。上司の側から見えていなかっただけで、予兆がゼロだったわけではありません。「まさかあの人が」という反応の多くは、サインの見落としから生まれています。

退職代行の利用は年々増えている(§2のデータを使う)

マイナビの「退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)」によると、2024年上半期に「退職代行を利用して退職した人がいた」と回答した企業は23.2%、約4社に1社にのぼりました(マイナビ「退職代行サービスに関する調査レポート」)。

年別の推移を見ても、2021年16.3%、2022年19.5%、2023年19.9%と、利用は年々増えています。直近1年間に転職した人のうち、退職代行を利用した人は16.6%でした。上司に直接伝えず、代行を通す選択が広がっているという事実そのものが、「話せば分かる」という前提が揺らいでいることを示しています。

「話せば分かる」が通じなくなった構造

「話せば分かる」という前提は、話すこと自体のハードルが低い関係でしか成り立ちません。心を閉ざした部下にとっては、話すこと自体がすでに高いハードルになっています。びっくり退職を防ぐには、話しかけるタイミングを待つのではなく、話しやすい状態を先につくっておく発想が必要です。

退職ラッシュで組織が崩壊する流れ|心を閉ざした部下が連鎖する

退職ラッシュは、1人の退職が引き金になって、連鎖的に広がっていきます。

1人目の退職が、残った人の天秤を動かす

1人が辞めると、残ったメンバーの中で「このままでいいのか」という問いが生まれます。それまで我慢とのバランスを保っていた天秤が、1人の退職をきっかけに動き出します。1人目の退職は、組織にとって単なる欠員以上の意味を持ちます。

負荷が寄って2人目・3人目が続く

退職した分の業務は、多くの場合、残ったメンバーに配分されます。負荷が集中したメンバーから、次の離職の芽が生まれやすくなります。2人目、3人目と連鎖するのは、偶然ではなく、負荷の移動という構造の結果です。

崩壊を止められるのは「1人目より前」だけ

退職の連鎖が始まってからでは、打てる手は限られます。本当に手を打つべきタイミングは、1人目が辞める前、まだ心を閉ざし始めた段階です。社員が辞める理由と離職防止策10選もあわせて確認しておくと、早い段階での打ち手を検討しやすくなります。

小さい事業所ほど連鎖が速い(§2の規模別データを使う)

厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は事業所規模が小さいほど高く、大卒では5人未満57.5%に対し、1,000人以上は27.0%でした(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。高卒でも、5人未満63.2%に対し1,000人以上は26.3%と、同じ傾向が見られます。

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は全体で63.2%ですが、規模別では50人以上が94.3%であるのに対し、10〜29人は55.3%にとどまります(出典=令和6年労働安全衛生調査の公表資料(厚生労働省))。小規模な事業所ほど、離職しやすい環境にありながら、対策の体制が薄いという二重の課題を抱えていることが分かります。

部下の退職は自分のせいなのか|上司が抱える罪悪感の扱い方

部下が辞めたとき、上司が自分のせいだと感じるのは自然な反応ですが、それがすべての原因ではありません。

上司の影響は大きい。ただし全部ではない

Gallupは、部署間で見られるエンゲージメントのばらつきのうち、少なくとも7割は管理職によって説明できると推計しています(Gallup estimates)(Gallup「Why Great Managers Are So Rare」)。これはあくまでGallupによる推計であり、個々の退職の原因が上司100%にあると確定させるものではありません。上司の影響が大きいことは事実として受け止めつつ、それだけがすべての原因ではないことも、同時に持っておく必要があります。

自分を責めることと、原因を見ることは別

自分を責めることと、何が起きたのかを見ることは、似ているようでまったく別の作業です。責めるだけでは、次にどう関わればいいのかという学びにつながりません。起きた事実を一つずつ振り返ることのほうが、次の部下との関係にとって意味があります。

責め続けると、次の部下にも心を閉ざされる

自分を責め続ける上司は、無意識のうちに部下との距離をさらに取ってしまうことがあります。罪悪感から関わりを避けるようになると、次の部下もまた同じように心を閉ざしていく可能性があります。罪悪感を抱え込んだまま関わり続けることは、本人にとっても部下にとっても良い結果を生みません。

上司自身が話せる場所を持つ

部下の変化に気づき、支えるためには、上司自身が誰かに話せる場所を持っていることも重要です。上司が抱え込んでしまえば、部下の変化に気づく余力そのものが失われていきます。上司自身の状態を整えることは、遠回りに見えて、部下との関係を守るために必要な土台です。

心を閉ざした部下にやってはいけない接し方5つ

良かれと思って取る行動が、かえって部下をさらに閉ざしてしまうことがあります。

問い詰める・原因を分析して見せる

「なぜそうなったのか」を問い詰めたり、上司側の分析を先に伝えたりすると、部下は防御的になります。本人が言っていない気持ちを断定せず、仮説として置き、違うと言える余地を残すことが大切です。分析を先に伝えることは、対話ではなく尋問に近くなってしまいます。

急に距離を詰める

変化に気づいた直後に、急に距離を詰めるのも逆効果になりがちです。段階を見ずに助言や解決策を出すことは、もっとも多い失敗のひとつです。まずは短く、負担の少ない関わりから始めることが望ましいです。

放置して様子を見る

「そのうち戻るだろう」と放置することも、状況を悪化させる選択です。共感だけを繰り返して停滞させるのではなく、受けとめが届いたら次の関わりに進む必要があります。放置は、部下にとって「気づかれていない」というサインにもなります。

他の人経由で探りを入れる

本人ではなく、周囲の同僚を通じて事情を探ろうとするのも避けたい接し方です。本人の言葉を一般論に置き換えず、相手の語彙をそのまま使うことが信頼につながります。本人抜きで話が進んでいると分かれば、心はさらに閉ざされます。

「何かあった?」だけ聞いて終わる

「何かあった?」とだけ聞いて、返事がなければそこで終わらせてしまうことも少なくありません。問いは情報収集の道具ではなく、注意の向きを変えるスイッチとして、一度に1つだけ置くことが大切です。一度で終わらせず、短い関わりを繰り返すことが、心を開くきっかけになります。

心を閉ざした部下との距離を戻す5ステップ

距離を戻すプロセスは、一度に大きく踏み込むのではなく、小さな段階を積み重ねる形で進めます。

STEP1 期待を下ろして、短い関わりを毎日つくる

最初のステップは、大きな成果や変化を期待せず、短い関わりを毎日続けることです。「おはよう」や「ちょっといい?」といった短い言葉だけでも構いません。毎日の小さな関わりが、次のステップの土台になります。

STEP2 評価ではなく、見えた事実をそのまま伝える

次に、評価や解釈を交えず、見えた事実だけをそのまま伝えます。「最近、資料の提出が早いね」といった、事実に基づく声かけです。根拠のない肯定はせず、本人が実際にしたことを根拠にすることがポイントです。

STEP3 答えを求めず、問いを1つだけ置く

3つ目のステップでは、返事を急がず、問いを1つだけ置きます。二択で詰めるのではなく、答えなくてもよい余白を残した問いにします。部下との面談で使える質問例も、問いを1つ置く場面の参考にできます。

STEP4 役割と期待を、やさしい言葉で言い直す

4つ目は、これまで伝えてきた役割や期待を、あらためてやさしい言葉で言い直すステップです。本人の言葉を一般論に置き換えず、これまで本人が語ってきた言葉を使って伝えると届きやすくなります。役割の再確認は、責めるためではなく、必要とされていることを伝えるために行います。

STEP5 変えられたことを一緒に確認する

最後に、小さくても変えられたことを、一緒に確認します。「前より話してくれるようになったね」という一言でも十分です。段階を一つずつ進めてきたことを、本人と一緒に振り返ることが、関係を戻す最後の一歩になります。

心を閉ざした部下を出さない仕組み|上司に見せない場所をつくる

心を閉ざした部下を出さないためには、上司との関わり方だけでなく、本音を置ける場所そのものを用意しておくことも有効です。

本音は「会社に見られる場所」には出てこない

本音は、会社や上司から見られていると感じる場所には出てきません。厚生労働省の調査でも、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は全体で63.2%にとどまり、10〜29人規模では55.3%と、対策そのものが行き届いていない実態があります(厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査」概況)。上司の目に触れない、本人だけの場所を持つことが、本音を残すための前提になります。

Rinの法人版=記録は本人のもの、会社が見るのは集計だけ(§3を使う)

Rinの法人版では、会社ごとにデータを分離しています。会社の管理者が見られるのは利用状況・強み・チーム集計のみで、ジャーナルや相談の中身は上司・管理者には非公開です。料金は1人あたり月額1,500円(税込)、1名から利用でき、初回30日間は無料、支払いは31日目から、いつでも解約できます(Rin料金ページ)。

価値観8軸で、何が満たされていないかが本人にも見える(§3を使う)

Rinでは、成長・学び、挑戦・達成、貢献・役立ち、人とのつながり、安定・安心、誠実・信頼、楽しさ・心地よさ、自由・柔軟性という8つの価値観軸を使っています。この8軸はシュワルツの基本的価値観理論に準拠しており、合計は必ず400に固定される設計です。「やる気がない」という見え方ではなく、「いま、どの軸が満たされていないか」という角度で本人が自分の状態を見られることが、この仕組みの特徴です。

もし社内で本音を拾う仕組みそのものに関心がある場合は、AIコーチで社員の本音を拾う仕組みもあわせてご覧ください。

1on1の前に、本人が自分の言葉を持っている状態にする

1on1の場でいきなり本音を尋ねても、心を閉ざした部下からは言葉が出てきにくいものです。先に本人が自分の言葉で状態を整理できている状態をつくっておくと、1on1はその言葉を確認する場に変わります。本音を引き出す場を無理につくるのではなく、本音がすでにある状態で1on1を迎えることが、負担の少ないやり方です。

心を閉ざした部下についてよくある質問

Q. 心を閉ざした部下は、異動させたほうがいいですか?

異動が有効な場合もありますが、必ず有効とは限りません。心を閉ざした背景が特定の人間関係にある場合は環境を変えることが助けになりますが、期待や信頼そのものが崩れている場合は、異動先でも同じ結果になることがあります。まずは背景を丁寧に見たうえで判断することが大切です。

Q. 何度話しかけても反応がないときはどうすれば?

反応がないときほど、「何かあった?」の一問で終わらせず、短い関わりを繰り返すことが有効です。一度で心を開かせようとせず、評価を交えない事実の共有を積み重ねてみてください。それでも反応が変わらない場合は、上司以外の相談先を用意することも選択肢になります。

Q. 退職を切り出された後でも間に合いますか?

退職の申し出は、決断の結果を伝える行為であることが多く、その時点からの引き止めが難しいことは事実です。ただし、間に合わないと決まっているわけではなく、条件面ではなく、期待や信頼のずれをどこまで具体的に扱えるかによって変わります。可能性を残すには、申し出の前、心を閉ざし始めた段階で気づくことが何よりも重要です。

Q. メンタル不調が疑われるときは、どこに相談すればいいですか?

心を閉ざした様子の背景にメンタル不調が疑われる場合、上司や社内の仕組みだけで抱え込まず、産業医や社外の専門家につなぐことを優先してください。Rinの仕組みでも、希死念慮や自傷、被害を示す表現を検知した場合は、通常のAIコーチとしての応答を止め、受けとめとあわせて公的な相談窓口の案内を返す設計にしています。これは「誤検知しても窓口を案内する側に倒す」という考え方に基づくもので、AIも上司も、医療や専門家の代わりにはなりません。

心を閉ざした部下の変化に、早く気づくために(まとめ)

心を閉ざした部下は、ある日突然そうなるのではなく、違和感を伝えるのをやめる段階から、静かに進んでいきます。会話・行動・仕事という3つの場面のサインが重なったときに気づけるかどうかが、退職を防げるかどうかの分かれ目になります。本当に辞める人の多くが本音を会社に伝えていないという事実は、上司の観察と関わり方が、数字が語らない部分を埋める役割を持つことを示しています。

やってはいけない接し方を避け、期待を下ろした短い関わりから距離を戻していくことは、時間はかかっても、上司自身が今日から始められる関わり方です。それに加えて、上司に見られない場所で、部下が自分の言葉を持てる状態をつくっておくことも、心を閉ざした部下を出さないための備えになります。

Rinの法人版は、上司に見えない場所を、部下に1つ持ってもらうための仕組みです。月額1,500円から、1名からでも始められ、初回30日間は無料でお試しいただけます(Rin法人版の料金・お申し込み)。商談の場で資料が必要な場合は、きける資料もあわせてご確認ください。


著者:鶴田 洋(つるた ひろし)/Gallup認定ストレングスコーチ

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