管理能力のない上司の末路|部下が離れる前に変えること

管理能力のない上司の末路と、明日から変える3つのこと

会議室に一人残る管理職の後ろ姿

「管理能力のない上司」で検索した、ということは、もう気づいているのだと思います。

部下との間に、何かうまくいっていないものがある。それが自分の側にあるかもしれない、と。

この記事は、そういう管理職の方に向けて書きました。公的な統計と、実際にいま動いている仕組みの両方から、何が起きているのかを整理しています。

部下との関係に引っかかりを感じているなら、最後まで読んでいただく価値があると思います。数字の裏側にある構造と、明日から変えられることの両方を置いています。

目次
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管理能力のない上司の末路は、部下が静かに離れていくこと

「末路」を検索している人が、本当に知りたいこと

「末路」という言葉で検索する人は、劇的な結末を探しているわけではないと思います。

実際に多くの職場で起きているのは、もっと静かなことです。部下が離れていく、それだけです。

起きるのは処分ではなく、情報が上がってこなくなること

管理能力のない上司のもとで最初に起きるのは、懲戒や異動ではありません。部下が、悪い情報を早く伝えなくなることです。

相談すれば評価される、指摘すれば否定される。そう感じた部下は、報告を遅らせるようになります。

数字に出るころには、時間が経っている

離職や労災という数字に表れるのは、たいてい最後の段階です。その手前に、報告が遅れる、相談が減る、という時期があります。

数字が動く前に気づけるかどうかが、分かれ目になります。

この記事は、誰かを断罪するためのものではない

ここから先、部下を潰す上司の特徴やパワハラの統計を扱います。これは、特定の誰かを裁くための材料ではありません。

管理職自身も、育て方を教わらないまま任され、孤独を抱えていることが、この記事の後半でわかります。

管理能力のない上司かどうかを、他人の評価で測らない

「人望がない」と検索する人が増える理由

「人望がない」という言葉で検索する人は、誰かからそう言われたか、自分でそう感じているのだと思います。

人望は目に見えないぶん、噂や雰囲気で判断されやすい言葉です。

人望は結果であって、能力の名前ではない

人望がある・ないは、能力の種類ではありません。日々の関わり方の積み重ねが、あとから人望という形で見える、それだけです。

管理能力を「人望があるかどうか」で測ろうとすると、後から気づくしかなくなります。

人望がない上司と言われる前に見るのは、行動のほう

指示の出し方、相談を受けたときの返し方、失敗をどう扱うか。このあとの章で扱う「特徴」は、どれも日々の行動です。

行動は、人望と違って自分で確かめられます。

自己点検のほうが、噂より正確

他人からの評価を待つより、自分で行動を点検するほうが確実です。評価は伝わる過程で歪みますが、行動そのものは歪みません。

後半では、明日から変えられる行動を3つに絞って紹介します。

部下を潰す上司の特徴は、悪意ではなく「ずれ」から生まれる

部下を潰す上司の5つの特徴と部下側の受けとめ方の図

特徴1 指示が結論だけで、前提が共有されていない

「これをやっておいて」だけで、なぜ必要なのかが伝わっていない指示です。部下は目的がわからないまま作業を進めることになります。

悪意があるわけではなく、上司の頭の中では前提が完結しているだけのことが多いです。それが部下には見えていません。

特徴2 相談されたときに、まず評価を返す

部下が相談を持ちかけたときに、最初に返ってくるのが良し悪しの判断だと、部下は次から相談しなくなります。部下が動くフィードバックの伝え方とNG例でも扱っていますが、伝え方の手前に、受けとめ方の順番があります。

まず状況を受けとめてから、整理に進む。この順番が崩れると、相談そのものが減っていきます。

特徴3 一度に複数のことを決めさせる

一度の会話で、方針も、優先順位も、次の行動も、まとめて決めさせようとする指示です。部下にとっては、どれから手をつければよいのかわからなくなります。

問いは一度に1つ、という原則は、後半でも使います。複数を同時に投げないことが、実は一番シンプルな対策です。

特徴4 できていないことだけを見て、できたことを言わない

できていない部分ばかりを指摘し、できている部分に触れない関わり方です。部下からすると、何をしても評価されないという感覚が積み重なっていきます。

意図的に否定しているわけではなく、できて当たり前という前提が、上司の側にあることが多いです。

特徴5 自分の負担を部下に見せない

上司が自分の忙しさや不安を一切見せないと、部下は上司も同じ人間だと感じにくくなります。何でも一人でこなしているように見える上司は、近寄りがたい存在になります。

この特徴の背景には、上司自身の孤独があります。その孤独については、後半の章で数字とあわせて扱います。

適正な業務指示・指導はパワハラに当たらない

ここまでの5つの特徴は、厳しい指導そのものを否定するものではありません。厚生労働省の指針は、「客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導」は、職場におけるパワーハラスメントには該当しないとしています。

厳しさそのものではなく、前提の共有や受けとめ方の順番といった「ずれ」の部分が、この記事で扱っている論点です。

優秀な部下を潰す上司に、起きていること

優秀な人ほど、期待という名前で仕事が集まる

仕事ができる部下には、自然と難しい案件が集まっていきます。上司にとっては信頼の証ですが、部下の側には負荷として積み上がっていきます。

任せることと、放り出すことの境目

任せることは、放置することとは違います。状況を確認しながら手を離すのが「任せる」で、確認をやめてしまうのが「放り出す」です。

部下育成のやり方とNGな関わり方では、育てる側の指導の進め方を扱っています。

「できるから大丈夫」は、確認をやめる合図になっている

「あの人はできるから大丈夫」という言葉は、便利なぶん危険です。確認をやめてよい理由として使われがちだからです。

優秀な部下ほど、限界まで一人で抱え込む傾向があります。確認を止めてよい根拠には、なりません。

優秀な人は、辞める前に相談しない

優秀な部下は、辞める判断を自分の中で完結させてから伝えることが多いです。相談してから辞めるのではなく、決めてから伝える、という順番です。

だからこそ、辞めると聞いた時点ではもう遅いことが多くなります。兆候を見るタイミングは、もっと手前にあります。

部下が離れていく上司に共通する、パワハラの3要素との距離

パワーハラスメントの3要素と6つの類型の図

パワハラは3つの要素をすべて満たすもの

厚生労働省の指針は、職場のパワーハラスメントを、次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。

要素 内容
優越的な関係を背景とした言動 上司から部下など、抵抗や拒絶が難しい関係を背景にしていること
業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの 業務上の必要性がない、または方法・程度が相当でないこと
労働者の就業環境が害されるもの 能力の発揮に支障が出るなど、就業環境が悪化していること

3つのうち1つだけを満たしても、パワハラの定義には当てはまりません。

6つの類型は「代表的な言動」であって限定列挙ではない

同じ指針は、代表的な言動として6つの類型を挙げています。

類型 内容
身体的な攻撃 暴行・傷害
精神的な攻撃 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視
過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
過小な要求 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること、仕事を与えないこと
個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること

指針の原文では、これらは「代表的な言動の類型」とされています。この6つに当てはまらなければパワハラではない、という読み方はできません。

中小企業も2022年4月から措置義務の対象

労働施策総合推進法の改正により、2020年6月1日に、職場のパワーハラスメント防止のための法律が施行されました。厚生労働省のリーフレットによると、中小企業については2022年3月31日までは努力義務とされ、2022年4月1日から防止措置が義務化されています。

判断は「平均的な労働者の感じ方」で、受け手の主観だけでは決まらない

パワハラに該当するかどうかの判断は、受け手一人の感じ方だけで決まるものではありません。指針では、平均的な労働者の感じ方を基準にするとされています。

同時に、業務上必要で相当な指導は該当しないという前提も変わりません。

管理能力のない上司がいる職場で、実際に何が起きているか

パワハラを受けた後にとった行動の割合の図

過去3年間にパワハラを受けた労働者は19.3%

厚生労働省委託の「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度・労働者調査n=8,000)によると、過去3年間にパワハラを受けたと回答した労働者は19.3%でした。

令和2年度の前回調査では31.4%だったため、数字自体は下がっています。ただしこの間にはテレワークが広がった時期も含まれるため、単純に「パワハラが減った」と読むことはできません。

受けたあと、いちばん多い行動は「何もしなかった」36.9%

パワハラを受けた後にとった行動を尋ねた報告書の設問(複数回答・n=1,546)では、「何もしなかった」が36.9%で最も多くなっています。家族や社外の友人への相談が19.3%、社内の同僚への相談が18.3%、社内の上司への相談が17.9%と続きます。

複数回答のため合計は100%を超え、全員が行動したという引き算はできません。

会社を退職した人は14.9%。ただしこの数字には限定がある

同じ設問で、「会社を退職した」と答えた人は14.9%でした。報告書の注記には、この数字には「その後転職や再就職をした者のみが含まれ、現在無業になっている者は調査対象外である」とはっきり書かれています。

つまり、パワハラを受けて辞めた人のうち、次の仕事に就けていない人は、この数字に入っていません。14.9%という数字は、実態の下限に近いと見るのが自然です。

心身への影響の1位は「仕事に対する意欲が減退した」61.1%

パワハラを受けた人に心身への影響を尋ねた設問(複数回答)では、「怒りや不満、不安などを感じた」が68.5%、「仕事に対する意欲が減退した」が61.1%でした。「眠れなくなった」も25.0%にのぼります。

離職という結果の前に、意欲の低下という段階があります。

勤務先が認めたあとも「何もしなかった」が28.7%

勤務先がハラスメントを認めたと回答した人(n=108)に、その後の対応を尋ねた設問では、「何もしなかった」が28.7%で最多でした。サンプル数は大きくありませんが、認定されたあとも約3割で会社側の対応がなかった、という結果です。

認定後の対応にも、課題が残ります。

部下が離れていく上司と、離職の理由の統計

前職を辞めた理由「職場の人間関係が好ましくなかった」男9.0%・女11.7%

厚生労働省の「令和6年(2024)雇用動向調査」によると、転職入職者が前職を辞めた理由のうち「職場の人間関係が好ましくなかった」を挙げた人は、男性9.0%、女性11.7%でした。

女性ではこの理由が、その他の個人的理由を除くと、労働時間や休日等の条件に次いで2番目に多い理由になっています。

これは単一回答=「一番の理由」に挙げた人の割合

この調査は単一回答で、各理由を選んだ人の割合の合計が100%になる設計です。複数回答の調査と混ぜて語ることはできません。

また、この調査の対象は「転職入職者」、つまり辞めて次の仕事に就いた人だけです。離職後に無業のままの人は含まれていません。

前年から増えてはいない

前年の令和5年調査では、男性9.1%、女性13.0%でした。前年差は男性でマイナス0.1ポイント、女性でマイナス1.3ポイントです。

「人間関係を理由に辞める人が増えている」という言い方は、この数字とは合いません。

数字が小さいことは、問題が小さいことを意味しない

9.0%や11.7%という数字だけを見ると、大きな問題には見えないかもしれません。ですが、これは「一番の理由」として選ばれた割合です。

二番目、三番目の理由として人間関係を挙げた人は、この数字には含まれていません。

精神障害の労災に、上司との関係はどう表れているか

出来事別の支給決定1位はパワーハラスメント222件

厚生労働省の「令和7年度 過労死等の労災補償状況」によると、精神障害の労災のうち「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を出来事とするものは、決定403件のうち支給決定222件でした。出来事別の支給決定件数では、この222件が最多です。

「上司とのトラブル」は決定1,061件で最多、支給決定は36件

一方、「上司とのトラブルがあった」を出来事とするものは、決定件数そのものは1,061件で全出来事中もっとも多くなっています。しかし支給決定は36件で、認定率はおよそ3.4%にとどまります。

この差は「大したことがない」ではなく、分類の構造

支給決定件数だけを見ると、「上司とのトラブル」は小さな問題に見えるかもしれません。ですが、令和5年の認定基準の見直しでパワーハラスメントが独立した出来事として整理されて以降、パワハラに当たる事案はパワハラの欄で認定されるようになっています。

そこまでには至らない対立が、「上司とのトラブル」という欄に残っている、という分類上の構造です。数が少ないことを、そのまま問題の小ささと読むことはできません。

制度で救われる手前に、数えられていない苦しさがある

労災として認定されるのは、精神障害の発症という重い段階に達したケースです。その手前で、報告が減り、相談が減り、意欲が下がっていく過程は、この統計には映っていません。

制度に届く前の時間のほうが、実は長いのだと思います。

理想の上司として挙げられる姿は、能力ではなく関わり方

「理想の上司」を検索する人は、何と比べているのか

「理想の上司」を検索する人は、多くの場合、有名な誰かではなく、身近にいる誰かとの差を確かめようとしています。

管理職の自己認識と、部下からの見え方は、必ずしも一致しない

リクルートマネジメントソリューションズの「管理職のあり方に関する実態調査」(n=354、管理職188名・一般社員166名)は、管理職本人と一般社員の両方から回答を集めています。

管理職自身が感じている状態と、部下から見えている上司の姿は、同じ調査の中でも別の角度から測られ、必ずしも一致しません。

理想の上司像を一般論で追わない

一般論としての「理想の上司」像を追いかけても、目の前の部下には合わないことがあります。価値観には、成長・挑戦・貢献・つながり・安定・誠実・楽しさ・自由という8つの軸があり、人が何を大切にしているかは一人ひとり違います。

上司と部下の間で「わかってくれない」と感じる場面の多くは、性格が合わないのではなく、前に出している軸が違うだけということがあります。本人の言葉を、一般論に置き換えないことが出発点です。

自分の職場の1人に合わせるほうが速い

理想像を探すより、目の前の1人が何を求めているかを確かめるほうが、実は近道です。上司と部下の信頼関係の築き方では、その関係の築き方を扱っています。

管理職は、育て方を教わらないまま管理職になっている

計画的OJTを実施した事業所の割合を職層別に比べた図

計画的OJTで管理職層を対象にした事業所は24.8%

厚生労働省の「令和6年度 能力開発基本調査」(事業所調査)によると、計画的なOJTを実施した事業所は64.7%でした。そのうち、管理職層を対象にした事業所は24.8%です。

対象 計画的OJTを実施した事業所の割合
新入社員 54.7%
中堅社員 37.5%
管理職層 24.8%

新入社員54.7%の半分以下

管理職層を対象にした24.8%は、新入社員を対象にした54.7%の半分以下です。新入社員向けの仕組みに比べ、管理職向けの仕組みは薄いという構造が見えます。

OFF-JTでも管理職層は51.0%

同じ調査で、業務を離れた研修(OFF-JT)を実施した事業所は73.8%でした。そのうち管理職層を対象にした事業所は51.0%で、こちらも新入社員向けの59.8%を下回ります。

これは「事業所の割合」であって個人の受講率ではない

これらの数字は、事業所がその層を対象に研修を実施したかどうかの割合です。管理職個人が実際に研修を受けたかどうかの割合ではありません。

「管理職の半分しか研修を受けていない」という読み方は正確ではなく、実施している事業所の割合として見る必要があります。

教わっていないことを、能力の問題にしない

それでも、管理職層を対象にした仕組みが、新入社員向けより薄いという傾向は変わりません。教える機会が少ないまま任されている人に、能力の問題だけを求めるのは、フェアではないと思います。

管理職の孤独は、続ける気持ちを削っている

管理職の孤独感と継続意向の関係を示した図

上場企業の課長の94.9%が、自分をプレイングマネジャーだと認識している

産業能率大学総合研究所の「第7回 上場企業の課長に関する実態調査」(2023年・n=809)によると、従業員300人以上の上場企業に勤め、部下が1人以上いる課長級のうち、94.9%が自身をプレイングマネジャーだと認識しています。

管理だけでなく、自分自身も実務を抱えている、という回答です。対象は上場企業の課長級に限られるため、この数字をそのまま日本全体の管理職に広げることはできません。

中間管理職の52.5%が業務量の増加を挙げた(2019年調査)

パーソル総合研究所の「中間管理職の就業負担に関する定量調査」(2019年・管理職n=2,000)では、コロナ禍前の職場と比べて、52.5%が自身の業務量の増加を挙げています。

この調査は2019年時点、7年前の結果として読む必要があります。

孤独感が高い層では、管理職を続けたい割合が40.6%

リクルートマネジメントソリューションズの前述の調査(n=354)では、孤独感が高い層で「管理職を続けたい」とする割合は40.6%でした。

孤独感が低い層では70.2%

同じ調査で、孤独感が低い層では70.2%が続けたいと答えています。両者の差は約30ポイントです。

相関であって因果ではない

この数字は、孤独感が高い層ほど継続意向が低いという相関を示しているだけで、孤独が原因で辞めたくなる、という因果関係を示したものではありません。サンプル数もn=354と大きくはないため、傾向として受け止めるのが正確です。

孤独を抱える管理職に向けて、AIコーチの法人導入の手順とポイントでは、管理職本人も使える場所としての設計を紹介しています。

一般社員の77.3%は管理職になりたくない。でも管理職の56.4%は面白いと言っている

なりたくない77.3%という数字

日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)の「管理職の実態に関するアンケート調査」(2023年・一般社員n=1,116、企業規模300名以上)によると、一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」と回答しています。2018年の調査時点では72.8%だったため、4.5ポイント増えています。

同じ調査で、管理職本人の56.4%が「今の仕事が面白い」

同じ調査の管理職側(n=1,072)では、56.4%が「今の仕事が面白い」「管理職を続けたい」というポジティブな回答をしています。

この2つを並べないと、片方だけの物語になる

77.3%だけを見ると、管理職は誰もが避けたい役割に見えます。ですが同じ調査の中で、実際に管理職をしている人の半数以上が、いまの仕事に手応えを感じてもいます。

なりたくない人が多いことと、続けている人に手応えがあることは、両立する事実です。

続けている人が何をしているのか

その手応えにつながる関わり方を、次の章で3つに絞って紹介します。

管理能力のない上司にならないために、明日から変える3つのこと

明日から変える3つの関わり方の対比図

変えること1 相談されたら、まず評価を返さない

部下から相談を受けたとき、最初に良し悪しを判断してしまうと、部下は次から相談しなくなります。まず状況を受けとめてから、整理に進む。

この順番だけで、相談の数は変わっていきます。

変えること2 問いを一度に1つだけにする

一度に複数のことを尋ねたり、決めさせたりすると、部下は何から答えればよいのかわからなくなります。問いは一度に1つ、二択で詰めない。

会話の負荷はかなり軽くなります。

変えること3 自分の状態を、上司や同僚に1人だけ話す

自分の負担や不安を、誰にも見せずに抱え続けると、部下との関わり方にもその硬さが出てきます。すべてを開示する必要はありません。

1人にだけ話す、という小さな範囲から始めるほうが現実的です。

部下の言葉を一般論に置き換えない

部下が「上司との関係がつらい」と言っているときに、それを「職場のストレス」という一般的な言葉に置き換えてしまうと、本人の言葉が消えてしまいます。本人が使った言葉を、そのまま受けとめることが出発点です。

部下が上司に見せない場所を、職場の中に用意する

先ほどの章で見たように、パワハラを受けた人の36.9%は「何もしなかった」と答えています。上司や同僚に直接言えないことを、どこかに置ける場所があるかどうかは、大きな違いになります。

株式会社Rinの法人向けAIコーチは、月額1,500円(税込・1名から・初回30日間無料)で導入でき、書いた記録は本人だけのもので、上司や管理者が見ることはできません。これは部下だけでなく、管理職自身にも同じことが言えます。

部下との面談で使える質問例50選もあわせて参考にしてみてください。

管理能力のない上司に関するよくある質問

Q. 部下から「管理能力がない」と言われました。どう受けとめればよいですか?

まず、その言葉をそのまま自分への攻撃として受け取らないことが大切です。前半で挙げた特徴のうち、当てはまるものがないかを、行動の単位で確かめてみてください。

人望より、指示の出し方や相談の受け方といった具体的な行動のほうが、直しやすい対象です。

Q. 厳しく指導するとパワハラになりますか?

厚生労働省の指針では、業務上必要で相当な範囲の指導は、パワーハラスメントに該当しないとされています。厳しさそのものが問題なのではなく、優越的な関係を背景にした、業務上必要な範囲を超えた言動かどうかが判断の基準です。

判断に迷う場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなど、専門の窓口に相談することをおすすめします。

Q. 優秀な部下が辞めそうです。引き止めてもよいですか?

引き止める前に、確認なしに仕事を抱えさせていなかったかを振り返ってみてください。辞める決断をしてから伝える人が多いため、伝えられた時点で状況を覆すのは簡単ではありません。

同じことを繰り返さないために、他の部下との関わり方を見直す機会にしてください。

Q. 自分が孤独です。誰に相談すればよいですか?

孤独を感じている管理職は、少なくありません。まずは1人にだけでも話してみることをおすすめします。

言いにくい場合は、自分だけの記録を持つ方法もあります。

Q. 管理職を降りたいと思うことがあります

その気持ちは、能力が足りないという証拠ではありません。管理職向けの育成の仕組みは、他の層より薄いのが実情です。

迷いが続く場合は、信頼できる上司や、社外の相談窓口に話してみてください。

管理能力は、性格ではなく手順で変えられる(まとめ)

ここまで、管理能力のない上司と言われる状態で何が起きているかを、統計とあわせて見てきました。

部下が離れていくのは、多くの場合、悪意ではなく「ずれ」の積み重ねからです。そして、その上司自身も、育て方を教わらないまま任され、孤独を抱えていることが少なくありません。

管理能力は、生まれ持った性格ではなく、相談の受け方や問いの立て方といった手順の積み重ねで変えられます。「明日から変える3つのこと」で挙げた内容は、どれも今日から始められることです。

この記事は、著者の鶴田洋(ギャラップ認定クリフトンストレングスコーチ)が、公的な統計と実際の仕組みから整理しました。

部下にも自分の上司にも見せずに、自分の状態を書ける場所が必要だと感じたら、法人向けAIコーチを見てみてください。月額1,500円(税込)、1名から、初回30日間は無料で始められます。

パワーハラスメントに関する専門の相談は、厚生労働省のあかるい職場応援団や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーでも受け付けています。

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