
これから稟議書を書こうとしていて、何をどこまで書けばいいのか、手が止まっている方もいると思います。
もし今まさにそうした状況にあるなら、ここから先が手がかりになるはずです。
この記事では、稟議書に必ず入る項目とフォーマット、書き方7ステップ、購入・契約・採用で使える例文、差し戻される5つの理由、そして保存期間や押印のルールまで、法令と実態調査にあたって整理しました。
著者は鶴田洋(Gallup認定ストレングスコーチ)です。法律・税務の専門家ではないため、条文と公的資料の内容の紹介にとどめます。
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稟議とは 関係者に回して承認をもらう社内の手続き
稟議とは、決めたいことを1枚の書類にまとめ、関係者に順番に回して承認をもらう社内の手続きです。
稟議の意味は「くだんの案を、関係者に問うて議る」こと
「稟議」という言葉は、案を関係者に問いかけ、議ることを指します。
「議」の字が入っている通り、話し合って決めるという意味合いを持つ言葉です。
会議を開かずに決めるための仕組み
稟議は、関係者を一堂に集める会議を開かずに、書類を回すことで承認を集める仕組みです。
一人ひとりの都合に合わせて回せるため、日程調整をしなくてすみます。
「稟議」という言葉は、現行の法令に一件も出てこない
e-Gov法令検索で全文検索すると、「稟議」「稟議書」「起案」「決裁権限」は、現行の日本の法令に一件も出てきません。
一方、「決裁」という言葉は202の法令に、「内部統制」は323の法令に登場します(e-Gov法令検索、2026年8月19日実測)。
つまり稟議書には法的な定義も作成義務もなく、社内の慣行として運用されているものです。
だからこそ、会社によって書き方や項目が違います。
決裁・承認・決済との違い
稟議と混同されやすい言葉に、決裁・承認・決済があります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 稟議 | 案を関係者に回して意見を求める過程そのもの |
| 承認 | 稟議の途中で、それぞれの関係者が可否を示すこと |
| 決裁 | 最終的な権限者が可否を決めること |
| 決済 | 代金の支払いなど、取引を終わらせる行為 |
「決裁」は法令上も使われる言葉ですが、「稟議」は社内の呼び方だと理解しておくと整理しやすくなります。
稟議書とは 何を決めてもらうための1枚か
稟議書とは、稟議の過程で使う、判断材料と承認欄をまとめた1枚の書類です。
稟議書は、判断に必要な材料をそろえた依頼書
稟議書は、承認者が「決めてよいかどうか」を判断できるだけの材料をそろえた依頼書です。
目的・内容・費用・比較・リスクがそろっていれば、承認者は会議を開かなくても判断できます。
報告書・企画書・申請書との違い
報告書は、すでに起きたことを伝える書類です。
企画書は、案そのものの魅力を伝える書類です。
稟議書は、この2つとは違い、承認をもらって実行に移すための書類という点が特徴です。
稟議書に法律上の書式の決まりはない
前の章で触れた通り、稟議書に法的な定義はないため、書式にも法律上の決まりはありません。
会社ごとに、独自の様式やワークフローシステムの項目を使っています。
それでも保存が必要になる場合がある
稟議書そのものに保存義務はありませんが、内容によっては帳簿書類として保存が必要になる場合があります。
青色申告法人の帳簿書類の保存期間は7年間、欠損金の繰越控除を受ける場合は10年間です(法人税法施行規則第59条第1項・第26条の3第1項)。
費用の支出をともなう稟議書は、こうした保存ルールの対象になりうる書類として扱っておくと安全です。
稟議書のフォーマットと、必ず入る項目
稟議書のフォーマットに決まりはありませんが、承認者が判断するために必ず入る項目があります。

表題・起案日・起案者・所属
何についての稟議かが一目でわかる表題と、起案日・起案者・所属を書きます。
承認者が複数の稟議を並行して見るため、この4点がないと後回しにされやすくなります。
目的(何のために)
何のためにこの稟議を出すのか、目的を1〜2文で書きます。
目的があいまいだと、後の項目を読む前に承認者の理解が止まってしまいます。
内容(何を・いくらで・いつから)
何を・いくらで・いつから始めるのか、内容を具体的に書きます。
抽象的な表現を避け、固有名詞と数字で書くことが大切です。
費用と、その根拠
費用の金額だけでなく、その金額になった根拠を書きます。
見積もりの内訳や、他社との比較といった根拠があると、承認者は数字を信頼しやすくなります。
比較検討したもの
その案以外に検討した選択肢と、選ばなかった理由を書きます。
比較がないと、承認者は「他にもっと良い方法があるのでは」と考えて止まってしまいます。
想定されるリスクと、やめるときの条件
実行した場合に想定されるリスクと、うまくいかなかったときにやめる条件を書きます。
リスクを先に書いておくことで、承認者は安心して判断できます。
承認欄
誰が、どの順番で承認するかを示す欄です。
社内の承認ルートに合わせて、必要な人数と順番を反映させます。
稟議書と一緒に詳しい資料を共有する場合は、営業資料をURLで共有する方法も参考になります。
稟議書の書き方7ステップ
稟議書は、いきなり書き始めるのではなく、順番を踏むことで差し戻しを減らせます。

STEP1 誰が承認するのかを先に確かめる
書き始める前に、誰が承認者になるのか、承認ルートを確かめます。
ルートによって、必要な項目や説明の厚さが変わるためです。
STEP2 決めてほしいことを1行で書く
「何を決めてほしいのか」を、1行で言い切れる形にします。
ここが長いと、承認者は最後まで読んでも何を決めればいいのかわからなくなります。
STEP3 数字を確定させる
費用・期間・数量といった数字を、確定させてから書きます。
概算のまま出すと、確認の往復が発生し、承認までの時間が延びます。
STEP4 比較したものを並べる
検討した他の選択肢を並べ、なぜこの案を選んだのかを添えます。
比較の材料が1つもないと、承認者は自分で調べ直すことになります。
STEP5 リスクとやめ方を書く
想定されるリスクと、うまくいかなかった場合にやめる条件を書きます。
やめる条件まで書いてあると、承認者は「試してみよう」と判断しやすくなります。
STEP6 承認者ごとの関心に合わせて順番を入れ替える
同じ稟議書でも、承認者によって気にする点は違います。
料金を聞く人の裏には「予算内かどうか」「稟議を通したいから」という理由が、導入事例を聞く人の裏には「自分と似た規模で効くのか」という理由が隠れていることがあります。
| 聞かれること | 裏にありがちな理由 |
|---|---|
| 料金は | 予算内か不安・稟議を通したい |
| 導入事例は | 自分と似た規模で効くか知りたい |
| 解約できるか | 縛られるのが怖い・小さく試したい |
こうした関心の違いを踏まえて、承認者ごとに気になりそうな項目を前に出す順番に組み替えます。
ただし、これは決めつけの道具ではなく、仮説の候補として使うものです。
STEP7 回す前に、直属の上長に見せる
正式に回す前に、直属の上長に一度見せておきます。
早い段階で指摘をもらうことで、大きな差し戻しを避けられます。
稟議書の書き方 例文【購入・導入】
ここからは、そのままコピーして使える形で例文を紹介します。
会社名・金額はすべてダミーです。
例文|ソフトウェアの新規導入
“`表題:会計ソフト導入の件起案日:2026年8月19日起案者:営業部 山田太郎目的:手作業で行っている経費精算の入力工数を減らすため内容:株式会社サンプル会計の会計ソフトを導入する費用:初期費用5万円、月額利用料2万円(他社2社の見積もりと比較し、機能と価格のバランスで選定)比較検討したもの:A社(月額3.5万円)、B社(月額1.8万円だが必要機能が一部不足)リスクと撤退条件:3か月間の試用期間を設け、工数削減が確認できない場合は契約を更新しない承認欄:課長( )→ 部長( )→ 経理担当役員( )“`
例文|備品・機器の購入
“`表題:ノートパソコン買い替えの件起案日:2026年8月19日起案者:総務部 佐藤花子目的:耐用年数を超えた機器の不具合が増え、業務に支障が出ているため内容:対象の5台を、株式会社サンプル電機の同等モデルに買い替える費用:1台12万円×5台=60万円(社内規程に基づき3社から相見積もりを取得)比較検討したもの:C社(1台14万円)、D社(1台10万円だが保証期間が短い)リスクと撤退条件:特になし(既存機器の故障リスクを避けるための予防的な購入)承認欄:課長( )→ 部長( )→ 総務担当役員( )“`
例文の中で、いちばん直されるのはどこか
例文の中で、いちばん直されやすいのは「費用と、その根拠」の欄です。
金額だけを書いて根拠を省くと、差し戻しの理由として最も多くなります。
稟議書の書き方 例文【契約・採用・費用】
続けて、契約・採用・費用の3パターンを紹介します。
例文|業務委託契約の締結
“`表題:Webサイト保守業務委託の件起案日:2026年8月19日起案者:広報部 鈴木一郎目的:自社サイトの保守を外部委託し、更新の遅延をなくすため内容:株式会社サンプルデザインと、月額保守契約を締結する(契約期間1年、自動更新)費用:月額5万円(年間60万円。他社2社と比較し、対応速度を重視して選定)比較検討したもの:E社(月額4万円だが対応が翌営業日)、F社(月額7万円)リスクと撤退条件:契約は1か月前の申し出でいつでも解約可能とする承認欄:課長( )→ 部長( )→ 広報担当役員( )“`
例文|中途採用の実施
“`表題:営業部 中途採用(1名)の件起案日:2026年8月19日起案者:営業部 高橋次郎目的:退職者の後任を補充し、既存顧客対応の質を維持するため内容:求人媒体サンプルナビに掲載し、中途採用を1名実施する費用:掲載費30万円、想定年収400万円(他部署の過去採用実績と比較し妥当と判断)比較検討したもの:人材紹介会社の利用(手数料が高いため見送り)リスクと撤退条件:応募が集まらない場合は、掲載媒体の見直しを行う承認欄:課長( )→ 部長( )→ 人事担当役員( )“`
例文|広告費・イベント費の支出
“`表題:展示会出展費用の件起案日:2026年8月19日起案者:マーケティング部 伊藤三郎目的:新規リード獲得のため、業界展示会に出展する内容:サンプル展示会(2026年10月開催)に、小間1枠で出展する費用:出展料25万円、装飾費10万円(合計35万円。昨年の同種展示会の獲得リード単価と比較)比較検討したもの:Web広告への予算配分(見込み効果を比較し、展示会を優先)リスクと撤退条件:想定リード数を大きく下回った場合、翌年の出展は見送る承認欄:課長( )→ 部長( )→ マーケティング担当役員( )“`
稟議書のテンプレートを使うときの3つの注意
テンプレートは便利ですが、そのまま使うと差し戻しの原因になることがあります。
自社の承認ルートが入っていない
一般的なテンプレートには、自社独自の承認ルートが反映されていません。
使う前に、自社の承認欄を人数・順番ともに書き換える必要があります。
項目が多いテンプレートほど、埋まらない欄が残る
項目数の多いテンプレートほど、実際には埋められない欄が残りがちです。
空欄のまま回すと、かえって「検討が浅い」という印象を与えてしまいます。
稟議書のテンプレをそのまま使うと、比較欄が形だけになる
比較検討の欄は、テンプレをそのまま使うと形だけになりやすい項目です。
実際に比較した内容を具体的に書かないと、承認者には伝わりません。
稟議が差し戻される5つの理由
稟議が差し戻されるのには、共通したパターンがあります。

差し戻しはほぼ全員が経験している
稟議の差し戻しを経験したことがある人は97.2パーセントにのぼり、そのうち「何度もある」と答えた人は39.3パーセントです(エイトレッド「稟議業務の負担とAI活用意向」2025年10月調査・n=107)。
差し戻しは特別なことではなく、ほとんどの人が経験しているものだとわかります。
理由1 決めてほしいことが1行で書かれていない
何を決めてほしいのかが最後まで読まないとわからない稟議書は、差し戻されやすくなります。
冒頭で1行に言い切ることが、差し戻しを避ける第一歩です。
理由2 数字の根拠が示されていない
費用の金額だけがあって、その根拠が書かれていない稟議書も差し戻しの対象になります。
これは、資料に書かれていないことを推測で埋めた瞬間に事故になる、という話と同じです。
稟議書の空欄も、AIが答える場面での回答も、根拠のないところを推測で埋めると、あとで信頼を失うという点で共通しています。
理由3 比較した他の選択肢がない
選んだ案しか書かれておらず、他の選択肢との比較がない稟議書も差し戻されます。
なぜその案を選んだのかが伝わらないと、承認者は判断材料が足りないと感じます。
理由4 リスクの欄が空いている
想定されるリスクや、うまくいかなかったときの対応が書かれていないと、差し戻されやすくなります。
リスクを先に示すことは、隠すことではなく、承認者の不安を減らすことにつながります。
理由5 承認者が知りたいことと、書いてあることがずれている
承認者が気にしているポイントと、稟議書に書かれている内容がずれていると、差し戻しにつながります。
回す前に、承認者が何を気にしそうかを想像しておくことが有効です。
差し戻しが続いて時間がかかっている場合は、資料請求後のフォロー手順のように、後工程まで見通して準備しておく考え方も参考になります。
稟議に時間がかかる本当の理由は「人数」
稟議に時間がかかる最大の理由は、内容の複雑さよりも関わる人数にあります。

承認完了まで1日を超えるのが多数派
稟議の申請から承認完了までの所要時間は、1日以内が19.3パーセント、2〜3日が52.5パーセント、4〜5日が14.4パーセントで、1日を超えるケースが73.5パーセントを占めます(弁護士ドットコム「社内稟議の実態調査」2024年9〜10月調査・n=312、クラウドサイン利用者対象)。
別の調査でも、1〜3日が37.6パーセント、7日以上が10.1パーセントという結果が出ています(エイトレッド「『稟議書』に関する実態調査」2022年3月公表・n=109)。
いずれも調査の対象や時期が異なるため、単純な比較はできませんが、稟議には一定の日数がかかることが共通して見えてきます。
課題の1位は「関わる人が多すぎる」
稟議に課題があると答えた人は65.2パーセントで、その内訳の1位は「承認関係者が多すぎる」で41.0パーセントでした(弁護士ドットコム、同調査)。
内容そのものより、関わる人数の多さが課題として意識されています。
起案そのものに強いストレスを感じている人が多い
稟議書の起案にストレスを感じると答えた人は86.9パーセントにのぼります(エイトレッド「稟議業務の負担とAI活用意向」2025年10月調査・n=107)。
書くこと自体が、多くの人にとって負担になっている実態がうかがえます。
根回しは省略ではなく、順番の設計
こうした事情から、稟議の前に根回しをする人が多くなります。
根回しは手続きを省略する行為ではなく、誰にどの順番で説明するかを設計する行為だと捉えると、負担を減らしやすくなります。
稟議と、取締役会で決めなければならないことの違い
会社の意思決定の中には、稟議では決められず、取締役会で決めなければならない事項があります。
会社法が「委任できない」と定めている事項がある
取締役会は、重要な業務執行の決定を取締役に委任することができません。
委任できない事項には、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任及び解任などが含まれます(会社法第362条第4項、2026年8月時点)。
取締役会を置かない会社では決め方が変わる
取締役が2人以上いて、取締役会を置いていない会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数で業務を決定します(会社法第348条第2項)。
中小企業に多いこの形態では、稟議の位置づけも変わってきます。
金額の線は法律ではなく社内規程で決まる
「多額の借財」や「重要な財産」にあたる金額の基準は、条文には書かれていません。
実際には、各社の取締役会規程などで個別に定められています。
稟議で決められる範囲を先に確かめる
そのため、稟議で決めてよい範囲がどこまでかは、自社の規程で確かめる必要があります。
金額や内容によっては、稟議だけで完結せず、取締役会での決定が必要になる場合があります。
決裁権限そのものの調べ方は、決裁者とは 決裁権の範囲と決裁者を見つける聞き方でも扱っています。
稟議書の保存期間と、電子で回すときの決まり
稟議書を電子で回す場合、保存の仕方にもいくつかの決まりがあります。

電子取引のデータは、電子のまま保存する
電子取引で受け渡しした取引情報は、電磁的記録のまま保存しなければなりません(電子帳簿保存法第7条)。
保存場所や保存期間は、書面で受領したとした場合に保存すべき場所・期間と同じ扱いです(電帳法施行規則第4条第1項)。
出力した紙だけの保存は認められない
令和6年1月以降は、電子データを紙に出力しただけの保存は認められていません。
電子データ自体を保存することが必須です(国税庁「一問一答【電子取引関係】」令和6年6月・問60-2)。
帳簿書類の保存期間は7年、場合により10年
青色申告法人の帳簿書類の保存期間は、起算日から7年間です(法人税法施行規則第59条第1項)。
欠損金の繰越控除を受ける場合は、10年間の保存が必要になります(同施行規則第26条の3第1項)。
訂正・削除の記録が残る形にしておく
電子取引データの真実性を確保するためには、タイムスタンプの付与や、訂正・削除の履歴が残る、あるいはできないシステムの利用など、いずれかの措置が求められます(電帳法施行規則第4条第1項一〜四)。
稟議書を電子で回す場合も、こうした仕組みを備えたシステムを使っておくと安心です。
本記事の内容は2026年8月時点の情報です。具体的な取扱いは、所轄の税務署や顧問の税理士・弁護士にご確認ください。
稟議のハンコは、もう必須ではない
稟議書に押印がなくても、契約や決定そのものは有効に成立します。
押印がなくても契約は成立する
契約は当事者の意思の合致によって成立するものであり、書面の作成や押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていません(内閣府・法務省・経済産業省「押印についてのQ&A」令和2年6月・問1、2026年8月時点)。
行政手続の押印は、ほぼ全面的に見直された
押印を求める行政手続は、令和3年3月31日時点で15,611手続のうち15,493手続、率にして99.2パーセントが廃止されました(内閣府「行政手続等の棚卸」令和3年4月公表)。
存続した手続きも118にとどまり、そのほとんどが印鑑証明つきや登記印など特別な事情のあるものです。
押印のために出社していた時期があった
2020年2月時点の調査では、テレワーク中に押印や書類対応のためやむなく出社した経験があると答えた人が64.2パーセントにのぼりました(アドビ、都内勤務者対象・n=500)。
この調査は新型コロナウイルスの対策基本方針が決定される前のものですが、押印が出社の理由になっていたことがうかがえます。
国の行政機関でも電子決裁が進んでいる
国の行政機関では、平成28年度実績で決裁文書889万件のうち813万件が電子決裁され、電子決裁率は91.4パーセントでした(「電子決裁移行加速化方針」平成30年7月・デジタル・ガバメント閣僚会議決定)。
この数字は今から10年近く前の実績で、電子決裁の仕組みが整っていない紙前提の業務は集計の対象から外れています。国全体の決裁の9割が電子化されている、という意味ではありません。
電子決裁の効果について、政府は「起案者が持ち回る必要がなく、また、決裁者は自分のタイミングで決裁ができるなど業務効率化に資する」としています(同方針)。
本記事の内容は2026年8月時点の情報です。具体的な取扱いは、所轄の専門家にご確認ください。
買い手の稟議を通すために、売る側ができること
ここまでは稟議書を書く側の話でしたが、最後に、提案を受ける側の稟議についても触れておきます。
提案を受けた人は、社内で稟議を書く側になる
営業やサービスの提案を受けた担当者は、社内に戻ると、今度は自分が稟議を書く側になります。
つまり、提案する側がどんな資料を渡すかは、相手の稟議の書きやすさに直結しています。
提案の材料をどう整えるかは、提案資料の作り方7ステップでも詳しく扱っています。
稟議に関わる人数は、金額が上がるほど増える
比較・稟議・承認・決裁に関与した社内関係者が、自分を含め5人以上と答えた人は46.9パーセントで、検討開始から決定まで1か月以上かかった人は50.9パーセントでした(HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」2026年6月調査・n=1,573、従業員50名以上対象)。
発注までの承認段階については、部門長と役員などによる2段階が60.9パーセントを占めています(IDEATECH「日本のBtoB大型購買プロセスに関する実態調査」2026年3月調査・n=307、年額300万円以上の大型購買対象)。
資料はそのまま回らず、加工されて上申される
受け取ったBtoB資料を、そのまま渡さず加工・抜粋して社内共有する人は68.4パーセントにのぼり、加工の目的として「決裁会議への上申」を挙げた人が43.3パーセントいました(IDEATECH・Bizibl Technologies「見込み客社内で使われる資料の条件調査」2026年5月調査・n=317、複数回答)。
つまり、渡した資料そのものではなく、相手が加工した後の形で稟議に回っている場合が多いということです。
稟議書の欄を、先に埋められる形で渡す
だからこそ、提案する側は、相手が稟議書の欄をそのまま埋められる形で資料を渡すことが助けになります。
たとえば「きける資料」では、担当者が資料を見ながら質問したやり取りを、加工せず全量のまま社内で共有できる仕組みを備えています。
質問には、料金や比較といった表面的なものの裏に、稟議を通したいという用事が隠れていることがあります。
推測で埋めず、資料に書かれた範囲で正直に答える設計にしておくことが、結果として相手の稟議書を書きやすくすることにつながります。
稟議に関するよくある質問
Q. 稟議書は何日前までに出せばよいですか?
稟議の承認には日数がかかることが多いため、期限から逆算して余裕を持って出すことをおすすめします。
前の章で見た通り、承認完了までに1日を超えるケースが多数派です。
Q. 稟議書に決まった書式はありますか?
法律で定められた書式はありません。
会社ごとの様式や、社内のワークフローシステムの項目に沿って作成します。
Q. 稟議が通ったあと、書類はいつまで保管しますか?
内容によりますが、青色申告法人の帳簿書類にあたる場合は7年間、欠損金の繰越控除に関わる場合は10年間の保存が必要になることがあります。
具体的な取扱いは、所轄の税務署や顧問の税理士にご確認ください。
Q. 稟議書に押印は必要ですか?
法律上、押印は契約や決定の成立要件ではありません。
社内の運用として押印を求めている会社もありますが、電子決裁に切り替える会社も増えています。
稟議書を書く前に決めておく3つのこと(まとめ)
稟議書を書く前に、次の3つを決めておくと、差し戻しを減らせます。
- 誰が承認するのか、承認ルートを先に確かめること
- 決めてほしいことを1行で言い切ること
- 費用の根拠と、比較した選択肢を用意しておくこと
稟議書には法的な定義も決まった書式もありませんが、判断材料がそろっているかどうかで、通りやすさは大きく変わります。
もしあなたが今、提案を受ける立場で稟議書を書こうとしているなら、その材料が資料の中にきちんとそろっているかを確かめてみてください。
材料がそろっていない場合は、担当者に質問して埋めることになりますが、きける資料のように、質問のやり取りをそのまま社内で共有できる形にしておくと、稟議書を書く手間が減ることもあります。


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