「いまの仕事が合っているのか、正直分からなくなった。」
「転職するべきか、いまの部署でもう少し頑張るべきか。」
そんなふうに立ち止まったとき、多くの人が「仕事の価値観」という言葉にたどり着きます。
ただ、価値観の一覧を検索して眺めても、そこから答えが出てくるわけではありません。一覧は選ぶための材料であって、選ぶ作業そのものは自分でやる必要があるからです。
もし転職や異動で迷っている、就活で「大切にしていること」を言葉にしたい、部下の価値観を知りたい、そのどれかに当てはまるなら、最後まで読んでいただく価値があると思います。厚生労働省の検査が測る11の要素と、心理学の研究にもとづく株式会社Rinの8軸、そして「合わないと感じたときにどうするか」まで整理しました。

仕事の価値観とは|「何をするか」ではなく「何が満たされると続くか」
仕事の価値観とは、働くうえで「何が満たされると自分は続けられるか」を表すものさしです。
条件(給与・勤務地)と価値観の違い
給与や勤務地、勤務時間は「条件」です。条件は数字や制度として決まっていて、比較がしやすいものです。
一方、価値観は「なぜその条件を大切にしたいのか」という理由の側にあります。同じ給与でも、それを「安定のため」と感じる人と「自由に使うため」と感じる人がいます。
やりがいとも、目標とも違う
やりがいは、特定の仕事や場面で感じる一時的な手応えです。目標は、いつまでに何を達成するかという到達点です。
価値観は、その手前にある「何を満たしたいか」という土台にあたります。やりがいや目標が変わっても、価値観そのものはあまり動きません。
満たされない状態は「不満」より先に「無関心」で出る
価値観が満たされていないとき、最初に出るのは強い不満ではないことが多いです。むしろ「なんとなく気分が乗らない」「頑張る理由が見つからない」という無関心に近い形で現れます。
不満として言葉にできる頃には、すでにしばらく満たされていない状態が続いていることがあります。
仕事の価値観は、職種ではなく場面につく
「営業だから達成感が必要」「事務だから安定が必要」という決まりはありません。同じ営業職でも、人との関係を重視する人もいれば、数字を追う挑戦を重視する人もいます。
価値観は職種そのものではなく、日々のどの場面で満たされるかについています。
仕事の価値観 一覧|厚生労働省の検査が測っている11の要素
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)にある仕事価値観検査は、働くうえで大切にしたいことを11の要素に分けて測っています。就業者と高等教育課程の在学者、あわせて4,298名を対象にした2回のWeb調査をもとに作られました。
11の要素は、次の3つのまとまりに整理されています。
| まとまり | 変数(要素) |
|---|---|
| 職務重視(5) | 達成感/自己成長/専門性/奉仕・社会貢献/自律性 |
| 働き方重視(4) | 私生活との両立/雇用や生活の安定性/良好な対人関係/労働安全衛生 |
| 報酬・地位重視(2) | 報酬や収入/社会的認知・地位 |
「職務重視」の5つ(達成感・自己成長・専門性・奉仕・社会貢献・自律性)
「職務重視」は、達成感・自己成長・専門性・奉仕や社会貢献・自律性の5つの変数でできています。目の前の仕事そのものから何を得たいかに関わる分類です。
成し遂げること、学ぶこと、専門性を伸ばすこと、人の役に立つこと、自分で決めて動くことが含まれます。
「働き方重視」の4つ(私生活との両立・雇用や生活の安定性・良好な対人関係・労働安全衛生)
「働き方重視」は、私生活との両立・雇用や生活の安定性・良好な対人関係・労働安全衛生の4つです。仕事の中身よりも、働く環境や周囲との関係にかかわる価値観です。
プライベートの時間が守られるか、雇用が安定しているか、人間関係が良好か、安全に働けるかを表します。
「報酬・地位重視」の2つ(報酬や収入・社会的認知・地位)
「報酬・地位重視」は、報酬や収入と、社会的認知・地位の2つです。働いた結果として得られる対価や、周囲からの見られ方に関する価値観です。
3つのまとまりのうち、変数の数がいちばん少ない分類にあたります。
全体では「働き方重視」がいちばん高く出ている
この検査を受けた人たちの回答を見ると、「働き方重視」に関する変数が、「職務重視」や「報酬・地位重視」よりも高めに位置していました。達成感や専門性よりも、私生活との両立や安定、人間関係のほうが、多くの人にとって大切にされている傾向があるということです。
「頑張って成果を出したい」よりも、「安心して続けたい」が先に来る人が多いとも読み取れます。
学生は、働いている人より全部の項目が高く出る
在学者の平均値は、11の変数すべてで就業者よりも高めになりました。働く前は、あらゆる価値観を「大切にしたい」と幅広く感じやすいということです。
実際に働き始めると、優先順位がしぼられていく傾向があると考えられます。
この検査は無料で受けられる
11要素は、11変数について各4項目、全44項目を5段階で答える形式で測られます。就業者20名以上のデータがある426職業を分析し、14個の職業グループとの対応も示されています。
この検査は、job tagの仕事価値観検査のページから無料で受けられます。開発の経緯はWeb提供型の仕事価値観検査の開発(JILPT資料シリーズNo.287)にまとめられています。
仕事の価値観 一覧|株式会社Rinの8軸を働く場面のことばに訳す
厚生労働省の11要素とは別に、弊社では価値観を8つの軸としてシンプルに整理しています。
8軸そのものの並び(成長・学び/挑戦・達成/貢献・役立ち/人とのつながり/安定・安心/誠実・信頼/楽しさ・心地よさ/自由・柔軟性)
株式会社Rinの8軸は、成長・学び/挑戦・達成/貢献・役立ち/人とのつながり/安定・安心/誠実・信頼/楽しさ・心地よさ/自由・柔軟性の8つです。それぞれの軸は、心理学者シュワルツの基本的価値観理論に準拠して意味づけられています。
| 軸 | 働く場面での意味 |
|---|---|
| 成長・学び | 新しく学び、自分を高められること |
| 挑戦・達成 | 新しいことに挑み、目標をやりきること |
| 貢献・役立ち | 人の役に立ち、誰かを支えられること |
| 人とのつながり | 職場の身近な人と、温かい関係を持てること |
| 安定・安心 | 見通しが立ち、落ち着いて働けること |
| 誠実・信頼 | 約束を守り、筋の通った仕事ができること |
| 楽しさ・心地よさ | 楽しく、心地よく働けること |
| 自由・柔軟性 | 自分で決め、自分のやり方で働けること |
8軸を「職場で満たされる瞬間」に言い換える
成長・学びは、新しい知識やスキルが身についた瞬間に満たされます。挑戦・達成は、難しい目標をやりきった瞬間に満たされます。
貢献・役立ちは、誰かから「助かった」と言われた瞬間に満たされます。安定・安心や誠実・信頼、楽しさ・心地よさ、自由・柔軟性も、同じように具体的な瞬間で確かめられます。
仕事とキャリアの価値観20語
弊社では、人生全体をカバーする価値観リストの中に、「仕事とキャリアの価値観」として20語を独立させて用意しています。この20語を、上の8軸に振り分けて見ていくことができます。
仕事以外の価値観まで幅広く見たい場合は、人生全体をカバーする価値観の一覧208語もあわせて参考にしてください。
向かい合う4組は押し合う
株式会社Rinの8軸には、向かい合う4組があります。成長・学びと安定・安心、自由・柔軟性と誠実・信頼、楽しさ・心地よさと人とのつながり、挑戦・達成と貢献・役立ちの4組です。
それぞれの組は合計が100に固定されていて、8軸の合計は必ず400になる設計です。片方が上がれば、向かい合う軸は必ず下がります。だから「全部の価値観が高い人」は出てきません。
11要素との対応の見方
厚生労働省の11要素と、株式会社Rinの8軸は、作られた目的も対象も違います。一対一で完全に対応するものではありませんが、大まかな重なりを見ることはできます。
例えば「達成感」や「自己成長」は挑戦・達成や成長・学びに近く、「良好な対人関係」は人とのつながりに近い位置にあります。
仕事 価値観の別の分け方|15項目・83語という数え方もある
仕事の価値観の分け方は一つではなく、15項目で数える方法や、83語のカードで数える方法もあります。
日本マンパワーの15項目
日本マンパワーは、仕事を通じて大切にしたい価値観を15項目で整理しています。
- プライベートの時間
- 安全・安心感
- 報酬や豊かな生活
- 他者やチームとの協調
- 社会のために役立つ
- 他者への影響力
- 個性を発揮する
- 権威・責任
- 自律
- 秩序・完璧を目指す
- 冒険・リスクを恐れない
- 社会的評価
- 美的なものを追求する
- 多様である
- 身体的活動
2022年4月から2025年5月の期間に検査を実施した2,920名のうち、分析可能だった2,844名のデータをもとにしています。
実際に多く選ばれたのは「プライベートの時間」と「安全・安心感」
この15項目の中で、実際にもっとも多く重視されたのは「プライベートの時間」と「安全・安心感」でした。厚生労働省の検査で「働き方重視」が高く出ていたことと、同じ方向を示す結果です。
割合の数字までは公表されていませんが、どちらの調査でも「安心して働き続けたい」という価値観が上位にきています。
心理学のカードは83語で数える
心理学の分野には、価値観を83語のカードで数える手法もあります。ニューメキシコ大学のミラーらが2001年に発表したPersonal Values Card Sortという手法で、公有のものとして配布されています。
83枚の価値観の語を、「自分にとって重要でない」「重要」「非常に重要」の3つに仕分けていきます。
分類がいくつあっても困らない理由
11要素、8軸、15項目、83語と、分類の数はさまざまです。どれか一つが正解というわけではなく、それぞれ目的が違う物差しです。
大切なのは、分類の数ではなく、自分の言葉で「なぜそれが大切なのか」まで説明できるかどうかです。
仕事の価値観の見つけ方|「思い出す」から始める4ステップ
仕事の価値観は、一覧から選ぶのではなく、自分の経験を思い出すところから見つけていきます。
STEP1 満たされた瞬間を3つ書き出す
これまでの仕事の中で、「やってよかった」「続けたい」と感じた瞬間を3つ書き出します。大きな成果である必要はありません。
小さな場面で構わないので、具体的な出来事として思い出します。
STEP2 嫌だった場面を裏返す
逆に、しんどかった場面・辞めたいと思った場面も1つか2つ書き出します。「何が満たされていなかったから、しんどかったのか」を考えます。
嫌だった場面を裏返すと、大切にしたい価値観が浮かび上がることがあります。
STEP3 一覧から20語→5語に絞る
ここで初めて、仕事とキャリアの価値観20語のような一覧を使います。STEP1とSTEP2で書き出した内容に近い言葉を、20語の中から選びます。
選んだ言葉が多ければ、そこからさらに5語まで絞り込みます。
STEP4 5語に、自分の言葉で説明をつける
絞り込んだ5語それぞれに、「なぜそれが自分にとって大切なのか」を自分の言葉で説明をつけます。説明の根拠は、STEP1・STEP2で書いた具体的な場面にします。
一般論ではなく、自分の体験に紐づいた説明になっているかを確認します。
一覧を眺めるだけでは決まらない
価値観の一覧をいくら眺めても、それだけでは自分の価値観は決まりません。決めるためには、STEP1からSTEP4のように、自分の経験を材料にする作業が必要です。
この見つけ方は、就活生にも、転職を考える社会人にも、同じように使えます。
仕事の価値観が合わないとき|すぐ辞める前に確かめる3つ
仕事の価値観が合わないと感じたときは、辞める前に「会社」「役割」「変えられる余地」の3つを確かめる価値があります。
合っていないのは「会社」か「いまの役割」か
合わないと感じたとき、まず会社全体が合わないのか、いまの役割や部署だけが合わないのかを分けて考えます。同じ会社でも、部署や役割が変われば満たされる価値観は変わります。
会社全体の方針や文化が根本的に合わない場合と、役割の割り当てだけがずれている場合では、対処の仕方が違います。
満たされていない軸を1つだけ特定する
「なんとなく合わない」で止めず、8軸のうちどれが満たされていないのかを1つだけ特定します。複数まとめて挙げると、対策が漠然としたものになりがちです。
1つに絞ると、次に何を変えればいいかが具体的になります。
変えられる余地があるかを見る(席・仕事の配分・時間の使い方)
満たされていない軸が特定できたら、いまの環境の中で変えられる余地がないかを見ます。席や座る場所、仕事の配分、時間の使い方など、小さな範囲で調整できることがあります。
例えば人とのつながりが満たされていないなら、席替えや定例の1on1を増やすだけで変わることもあります。
それでも合わないときは、合わないという事実がデータになる
小さな調整を試しても満たされないなら、それは「合わない」という確かなデータになります。曖昧な違和感のまま抱え続けるより、はっきりした事実として扱えるほうが、次の判断がしやすくなります。
職場に限らず、人間関係全般で「価値観が合わない」と感じたときの考え方は、価値観が合わないと感じたときの対処法でも扱っています。
仕事の価値観が合わないと、人は実際に辞めている|統計で見る
仕事の価値観が合わないという感覚は、令和6年 雇用動向調査の転職理由の統計にもはっきり表れています。
転職した人が前職を辞めた理由の順番
前職を辞めた理由(個人的理由や定年を除く具体的な理由)で、男性は「給料等収入が少なかった」10.1%がもっとも高くなっています。女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.8%がもっとも高くなっています。
男女で1位の理由が違うという結果です。割合はいずれも構成比で、複数回答ではありません。
男女で理由の並びが違う
「職場の人間関係が好ましくなかった」は、女性11.7%・男性9.0%で、女性のほうが2.7ポイント高くなっています。年齢層別に見ると、19歳以下の女性で34.0%、25〜29歳の女性で14.0%、40〜44歳の男性で16.0%と、人間関係を理由に挙げる割合が特に高い層があります。
性別や年齢によって、前面に出る理由が違うということです。
「会社の将来が不安だった」は前年から伸びている
前年(令和5年)と比べると、男性では「会社の将来が不安だった」が2.2ポイント伸びていて、男性の中でもっとも大きな伸びでした。女性では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が1.7ポイント伸びています。
給料等収入が少なかったという理由も、男性で1.9ポイント、女性で1.2ポイント伸びています。
転職後の賃金は、増えた人のほうが多い
転職前と比べた賃金の変化は、「増加」が40.5%、「減少」が29.4%、「変わらない」が28.4%でした。「増加」が「減少」を11.1ポイント上回っています。
「1割以上の増加」は29.4%、「1割以上の減少」は21.7%でした。
初めての会社をやめた理由|若手ほど人間関係と労働時間で決まる
初めて勤めた会社を辞めた理由は、令和5年 若年者雇用実態調査を見ると、勤続期間によって「人間関係」と「賃金」の順位が入れ替わります。
上位4つの理由
最終学校卒業後に初めて勤めた会社を辞めた理由(複数回答・3つまで)の上位は、労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった28.5%、人間関係がよくなかった26.4%、賃金の条件がよくなかった21.8%、仕事が自分に合わない21.7%の順でした。複数回答のため、順位として断定はできませんが、この4つが特に多く挙げられています。
「仕事が自分に合わない」という、価値観に近い理由も21.7%と、賃金とほぼ並ぶ水準で挙がっています。
勤続3か月未満では人間関係が52.3%
勤続3か月未満で辞めた人に限ると、人間関係がよくなかったを挙げた人が52.3%と、突出して高くなっています。次いで仕事が自分に合わない42.1%、労働時間・休日・休暇40.8%と続きます。
入社してすぐの時期は、条件よりも人との関係が続けられるかどうかを大きく左右しているということです。
勤続が延びると理由が賃金へ移る
勤続2年〜3年未満になると、賃金を挙げる人が30.0%まで上がり、人間関係は23.1%まで下がります。勤続5年〜10年未満では、人間関係はさらに16.5%まで下がります。
結果概況の記述でも、勤続1年未満は人間関係がもっとも高く、1年〜3年未満は労働時間・休日・休暇がもっとも高く、3年以上では再び人間関係がもっとも高くなると示されています。
正社員と正社員以外で理由が違う
正社員では、労働時間33.3%、人間関係26.2%、賃金25.9%の順に挙げられています。正社員以外では、人間関係26.8%、労働時間21.8%、賃金15.9%の順です。
雇用形態によっても、何を理由に辞めるかの並びが変わります。
15〜19歳の数字が示していること
15〜19歳では、人間関係52.7%、労働時間・休日・休暇50.6%と、この2つが突出して高くなっています。一方で賃金は1.6%と、ほとんど理由に挙がっていません。
働き始めたばかりの年齢層では、報酬よりも人との関係や働く環境そのものが、続けられるかどうかを決めているということです。
価値観 就活での使い方|「大切にしていること」を言葉にする
就活で「大切にしていること」を聞かれたとき、価値観の一覧はそのまま使う言葉ではなく、体験を言葉にするための手がかりとして使います。
学生全体が答えた就職観の1位
マイナビの2026年卒 大学生就職意識調査(調査期間2024年10月1日〜2025年3月25日・有効回答36,311名)によると、就職観の1位は「楽しく働きたい」37.4%でした。前年から1.5ポイント減ってはいますが、今も最も多い回答です。
2位に近い位置にいるのが「個人の生活と仕事を両立させたい」25.6%で、前年から1.1ポイント増えています。「収入さえあればよい」は8.4%にとどまっています。
企業選択のポイントは「安定している会社」が7年連続で最多
企業選択のポイントでは、「安定している会社」が51.9%で1位でした。7年連続で最多となっていて、今回初めて5割を超えています。
2位は「給料の良い会社」25.2%でした。
行きたくない会社から分かること
行きたくない会社の1位は「ノルマのきつそうな会社」38.2%でした。2位は「転勤の多い会社」31.0%でした。
「行きたい会社」だけでなく「行きたくない会社」を聞くことで、大切にしたくない価値観も見えてきます。
自己PRで価値観を語るときの型
面接で価値観を語るときは、一覧から言葉を借りるだけで終わらせず、場面から話す型を使います。まず、価値観が満たされた具体的な場面を1つ話します。
次に、その場面でなぜそれを選んだのか、理由を話します。最後に、それをいま仕事の中でどう大切にしているかを話すと、一貫した内容になります。
一覧から言葉を借りても、体験は自分のものにする
一覧にある言葉をそのまま使うこと自体は、問題ではありません。大切なのは、その言葉を裏づける体験が自分の中にあるかどうかです。
体験が伴っていない言葉は、深掘りする質問をされたときに答えに詰まりやすくなります。
仕事の価値観を、上司が部下に聞くとき
部下の価値観を知りたいときも、いきなり「何を大切にしてる?」と聞くのではなく、場面から聞いていくほうがうまくいきます。
「何を大切にしてる?」といきなり聞かない
抽象的な質問をいきなり投げかけると、部下は答えを一般論でまとめてしまいがちです。本音に近い答えを引き出すには、具体的な場面から入るほうが有効です。
最初から助言や評価を挟まず、まず聞くことに徹します。
選んだ場面から聞く
「最近、やっていて良かったと思う仕事は何でしたか」のように、具体的な場面を聞きます。部下が話した言葉を、上司の側で一般的な言葉に置き換えないようにします。
部下が言っていない気持ちを決めつけず、「〜ということでしょうか」と仮説の形で確かめます。
出てきた価値観を評価に使わない
部下から出てきた価値観は、評価や査定の材料として使わないことが大切です。評価に使われると分かった瞬間、部下は本音ではなく評価に有利な言葉を選ぶようになります。
株式会社Rinでも、会社の管理者が見られるのは利用状況・強み・チーム集計のみで、ジャーナルや相談の中身は上司・管理者には非公開という設計にしています。
1on1で使える3つの問い
「最近、やっていて手応えを感じた場面はどこでしたか」。「逆に、気分が乗らなかった場面はどこでしたか」。
「いまの仕事の中で、もっと増やしたいと感じる時間はありますか」。ほかの質問例もあわせて知りたい場合は、部下との面談で使える質問例も参考になります。
仕事の価値観を、実際は誰に相談しているのか
いちばん多いのは、職場の上司や管理者です。ここまでの見つけ方や聞き方の話を、実際の相談の場面に置き直してみます。
相談先の最多は「職場の上司・管理者」
厚生労働省の厚生労働省 令和7年度 能力開発基本調査によると、キャリアの主な相談先を尋ねた設問で、正社員の69.5%が「職場の上司・管理者」と答えています。会社の外の専門機関より先に、日々の上司との会話のなかで価値観の話が出ているということです。特別な制度や窓口を新しく用意しなくても、上司との1on1や雑談のなかに、すでに相談の入口はあるということでもあります。
企業の外の機関に相談している人は多くない
同じ調査で、企業外の機関等を相談先に挙げた正社員は13.1%でした。専門の相談窓口があることは知られていても、実際にそこへ足を運ぶ人はまだ少数派です。忙しさや、どこに聞けばよいか分からないという事情もあるはずですが、結果として、価値観の話の多くは職場の中だけで完結しています。キャリア面談の進め方を先に知っておくと、上司との1on1でも価値観の話がしやすくなります。
相談を受けている人が、有資格者とは限らない
相談を受けている側がキャリアコンサルタントかどうかを尋ねた設問では、「そうである」が11.7%、「そうではない」が74.0%でした(常用労働者30人以上の事業所が対象)。いま職場で価値観の相談に乗っている人の多くは、資格を持たないまま話を聞いているということです。良い悪いという話ではなく、相談する側もされる側も、そのことを前提に話す必要があるという事実です。
相談したいという要望自体は、半数を超えている
キャリアコンサルタントによる相談を利用したいという要望は、正社員で57.9%、正社員以外で36.1%にのぼります。実際に相談を受けた正社員の45.9%は「仕事に対する意識が高まった」と答えており、話す機会そのものに意味があると感じている人は少なくありません。誰かに相談したいという気持ちは、思っている以上に多くの人が持っているということです。
仕事の価値観の相談は、キャリアコンサルティングという制度になっている
令和6年度にキャリアコンサルティングを受けた人は、正社員で14.8%、正社員以外で5.4%、労働者全体では12.1%です。「上司に話す」とは別に、こういう名前の制度も存在しています。
法律に定義が置かれている
キャリアコンサルティングは、e-Gov法令検索(職業能力開発促進法)の第2条第5項で定義されています。「労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行うこと」と条文に書かれています。日常の会話の延長にあるものが、法律のうえでは名前と定義を持った行為になっているということです。
名乗るには国家資格が要る(名称独占)
同法第30条の28は、キャリアコンサルタントという名称の使用を制限しています。資格を持たない人がこの名称を名乗ることはできません。ただし、これは「名乗ってはいけない」という決まりであって、「相談に乗ってはいけない」という決まりではありません。相談すること自体は、資格の有無にかかわらず、誰にでもできることです。
「コーチング」ということばは、この法律の条文に無い
職業能力開発促進法の条文には、キャリアコンサルティングという言葉は定義されていますが、コーチングという言葉は出てきません。制度としてのことばと、サービスとして使われることばは、もともと別のものだということです。どちらが優れているという話ではなく、呼び名が違うものとして両方が存在している、という整理にとどめておきます。
会社のなかにしくみがあるかを、先に見る
キャリアコンサルティングを行うしくみを導入している事業所は48.4%です(常用労働者30人以上の事業所が対象)。まずは自分の会社にそうしたしくみがあるかを確かめ、なければキャリアコーチング おすすめ7社の料金比較で外部の選択肢を見ておく、という順番でも遅くありません。社内にあるかどうかを知らないまま外を探し始めるより、まず足元を確かめるほうが早道です。
相談する相手が上司であっても、資格を持った人であっても、話すのは自分の言葉です。何を大事にしているかが自分のなかで少しでも形になっていると、相談は前に進みます。
仕事の価値観と強みは別のもの|方向と武器
仕事の価値観と強みは、似ているようで役割が違います。価値観は向かう方向を、強みは進み方を決めるものです。
価値観=どこへ向かうか
価値観は、何が満たされると自分にとって意味のある仕事になるかを示します。「成長したい」「貢献したい」「安定していたい」といった、方向を表す言葉です。
同じ職種でも、向かう方向が違えば選ぶ道は変わります。
強み=どう進むか
強みは、その方向に向かうときに、どうやって進むかを表します。得意なやり方や、無理なく力を発揮できる動き方のことです。
同じ「貢献したい」という価値観でも、人によって強みが違えば、貢献の仕方は変わります。
両方そろって初めて選択が決まる
価値観だけでは、どう進めばいいかが分かりません。強みだけでは、何のために進むのかが分かりません。
両方がそろって、初めて「この仕事を選ぶ理由」が具体的な形になります。
片方だけだとどうなるか
価値観だけを追うと、方向は正しくても手応えを感じにくくなることがあります。強みだけを追うと、得意なことはできても、なぜそれをやるのかが見えなくなることがあります。
価値観と強みの違いをより詳しく知りたい場合は、価値観と強みの違いで扱っています。
仕事の価値観は変わる|半年に一度、書き直す前提で持つ
仕事の価値観は一度決めたら終わりではなく、役割や経験によって変わっていくものです。
役割が変わると満たされる軸が変わる
異動や昇進、転職によって役割が変わると、満たされる価値観の軸も変わります。若いうちは成長・学びが満たされやすい役割でも、経験を積むと貢献・役立ちや安定・安心が前面に出てくることがあります。
半年に一度くらいのペースで、書き直す前提を持っておくと無理がありません。
昔の軸を「間違いだった」と扱わない
以前大切にしていた価値観が、いまは薄れていることがあります。それは間違いだったわけではなく、その時期にはその軸が確かに満たされていたということです。
過去の自分の選択を否定せず、いまの自分に合わせて更新していきます。
毎日の記録が貯まると、選ばなくても見えてくる
日々のノートに、満たされた瞬間やしんどかった場面を書きためていくと、あとから見返したときに傾向が見えてきます。弊社では、ノートに書いた言葉が8つの価値観軸として言語化され、コーチとの対話にも生かされる仕組みになっています。
一覧は「選ぶ」道具、株式会社Rinは「貯まる」道具です。
二択12問で、いまの断面だけ先に見る
じっくり記録を貯める前に、いまの断面だけをすぐ確認したい場合は、二択12問の価値観軸チェックが使えます。向かい合う4組それぞれについて3問ずつ、合計12問に答える形式です。
無料・登録不要で、答えた内容はブラウザの中だけで処理され、どこにも送信されません。「今日の断面」であって、確定した診断ではないという前提で使います。二択12問の価値観軸チェック(無料・登録不要)で、いまの断面を2分ほどで確認できます。
仕事の価値観についてよくある質問
よくある質問に、ここでまとめて答えます。
Q. 給料は仕事の価値観に入らないのですか?
給料そのものは「条件」に近く、価値観というよりは条件です。ただし、「報酬や収入」は厚生労働省の検査でも「報酬・地位重視」の変数の1つとして扱われています。
給料を大切にしたい理由が、安定のためなのか、自由に使うためなのかを掘り下げると、その先に価値観が見えてきます。
Q. 仕事の価値観が1つに絞れません。いくつまでにすべきですか?
見つけ方のSTEP3では、20語から5語まで絞る形を紹介しています。5語は目安であって、絶対の数ではありません。
大切なのは数を減らすことより、それぞれに自分の言葉で説明をつけられることです。
Q. 仕事の価値観が合わないと感じたら、すぐ転職したほうがいいですか?
すぐ転職を決める前に、合わないのが会社なのか役割なのかを分けて考えることをおすすめします。満たされていない軸を1つ特定し、席や仕事の配分など小さく変えられる余地がないかを見てから判断します。
それでも満たされないなら、その事実自体が転職を検討する材料になります。「合う仕事が必ず見つかる」と保証できるものではありませんが、判断の材料は増やせます。
Q. 就活の面接で、価値観をそのまま言っても大丈夫ですか?
一覧にある言葉をそのまま使うこと自体は問題ではありません。ただし、その言葉を裏づける具体的な体験がセットになっているかを確認してください。
場面→選んだ理由→いま大切にしていること、の型で話すと、深掘りされても答えやすくなります。
Q. 部下の仕事の価値観を、会社として集めてもいいですか?
集めること自体は可能ですが、評価や査定に使わないという前提を明確にしてから始めることをおすすめします。評価に使われると分かった時点で、本音ではなく評価に有利な言葉を選ぶようになりやすいためです。
記録は本人のためのものとして扱う設計が安全です。集めた価値観をもとに、離職を完全に防げると断定することはできません。
仕事の価値観を、今日ひとつ言葉にする(まとめ)
仕事の価値観は、一覧を眺めるだけでは決まりません。
満たされた瞬間を思い出し、嫌だった場面を裏返し、一覧から言葉を選び、自分の言葉で説明をつける。この一連の作業を1つでも進めると、今日の判断が少し変わります。
一覧を読んでも、まだ自分の軸がはっきりしないという場合は、二択12問の価値観軸チェックで、いまの断面だけを2分ほど見てみてください。無料・登録不要で、答えた内容はどこにも送信されません。
部下やメンバーの価値観をチームで扱いたい場合は、人材育成・組織活性化研修をご覧ください。参加者ひとりずつの価値観軸レポートをお渡ししているので、面談や1on1の材料としてそのまま使えます。
この記事を書いたのは、鶴田 洋(つるた ひろし)/ギャラップ認定クリフトンストレングスコーチです。



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コメント一覧 (3件)
[…] 職場の人間関係でも、同じ翻訳が使えます。同僚や上司との「なんとなく合わない」も、性格の良し悪しではなく軸の傾きの違いであることが多いです。くわしくは仕事の価値観が合わないと感じたときの考え方にまとめています。 […]
[…] 仕事の整理を広げたい方は、仕事の価値観と見つけ方も参照できます。 […]
[…] ことばをもっと見たい方は、価値観の例208項目を用意しています。仕事の場面での例は仕事の価値観の一覧、恋愛の場面での例は恋愛の価値観の例と一覧で扱っています。 […]